表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/77

約束

ちょっと長いです。

※流血注意です。

 キエリは移動魔法をするときはさすがに起こされて、なるべく口数を減らして、話すときも慎重に言葉を選んだ。


しかし、それはおしゃべりなイラにとってかなりの負担となっていた。


 (辛抱‥‥辛抱よ。しばらくすれば、フェリクス様にとってもこれが普通になるんだから、この機会を逃してはいけない)


 移動魔法を繰り返し、城の中にある移動先の建物に戻るとキエリのことを心配した友人たちが集まっていて出迎えてくれた。


そして、そこには魔女のゼノとその後ろにフェリクスが見たことはなかった男性がいた。


男性はワインレッドの髪とローズピンクの瞳という組み合わせで、フェリクスにロゼを思い出させたがさすがに性別が違うのでその考えはかき消した。


 「やっほー、オウジサマ! アタクシの可愛いキエリとうまくやってるかしら?」

 「ゼノ殿‥‥最近現れないと思ったら、その恰好はなんなんだ?」


ゼノは、星型のサングラスをつけ。口にはふきもどしをくわえてそれを吹いて遊んでいる。


 「療養旅行にでてたのよアタクシたち! 温泉に~エステに~美味しいもの食べて~堪能しちゃった」

 「あっ、ちなみにこの子はアタクシの新しいペット兼助手ね、ヨロシク」

 「はぁ‥‥」


助手の彼は、目が合うと軽く会釈して、不安そうに俯いて視線を外した。


 「何で旅行したかっていうとアタクシの魔法の調子が悪かったの。ま、単純に行きたかったていうのもあるけど! でも実際、キエリを時々観察できなくってさ~、だけど、結局アタクシのせいじゃなく思えてきたわ! だって、アタクシ絶好調だし」

 「もしかしたら、キエリの方に問題があるんじゃないかって思って来たわけよ。案の定観察魔法は消えてるみたいね」


ゼノのべらべらと話している内容を半分聞き流していたフェリクスは、あることが引っかかた。


 「観察魔法が解けている?」

 「そうそう、だからつけなおしにきたのー! じゃ、キエリカモーン」


ゼノが手でくいくいと招くがキエリはフェリクスの後ろに怯えたように隠れてしまった。


 「どうした、キエリ?」

 「わたし、あの魔女嫌です‥‥」


 (あの方は魔法使いや魔女には気を付けろって‥‥触れられたら危険だわ。それに、なに、観察魔法って!?)


 「ゼノ殿は確かに嫌だが‥‥」


ゼノが明らかにショックを受けていますと言わんばかりに目を見開いて息をのんでいた。


 「う、うそ‥‥アタクシのキエリがまさか反抗期!? ウソウソウソウソ!? 信じられない!」


 (な、なんなのよこの変人!? あの人形の周りにこんな変人が纏わりついてたなんて聞いてない!)


フェリクスの後ろから動こうとせずに固まっているキエリに、エレドナが寄り添った。


 「ごめんなさいね、ゼノさん。キエリはたった今帰って来たばかりで、しかも過去のトラウマと戦ってきたのよ。疲れてるのも無理ないわ」

 「さ、キエリ行きましょ。キエリの好きなもの作っておいてあげたから」


エレドナがキエリの背を撫でようと触れた時、イラは反射的にエレドナの手をはじいてしまった。


 「ちょっと! 触らないで!!」


 貴族としての暮らしにどっぷりと浸かっていたエレドナは、使用人に突然触れられるなど慣れているはずがなく、彼女にとって耐えられないことであった。


 「フェリクス! この者は使用人よね! どうして、こんなことを許しているの!?」


イラは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。


エレドナは驚いて、手をさすりながら下がり、フェリクスもまたキエリに扮したイラから離れた。


 「どっどうしたの、フェリクス‥‥」

 「くそっ、もっと早く気付いていれば‥‥」


フェリクスは頭を抱えて、自信の失態に後悔しうなだれる。


エレドナはイラをキッと睨みつけ、周りのグイスにクイナ、コンゴウもイラのことを訝し気に睨んでいる。


 「あ、あなた、キエリじゃないわ。あの子はとても優しい子だもの‥‥どこ? あの子をどこにやったのよ!」

 「何を言っているの? わたしは、わたしはキエリよ‥‥」

 「いいや違う。お前がキエリなら、昨日の俺との会話の内容を言ってみろ」

 「そ、れは‥‥」


もう限界を感じたイラは、たらたらと額から汗を流し、後ずさる。


逃亡を謀ろうと走ったが即座にクイナが動き、イラを取り押さえて地面に押さえつけて拘束した。


 「きゃーさっすがクイナくん容赦ない! びっくりするくらい強い!」

 「グイスさん茶化さないでください」


フェリクスがイラの前まで行ってしゃがむ、イラは憎々し気にフェリクスを見上げて、わめき散らしていた。


 「お前は誰だ? キエリをどこにやった?」

 「誰が言うもんですか! ちょっと、どきなさいよ平民のくせに!」

 「キエリの声でキエリの大事な友人を侮辱するのは許さん‥‥」

 「ひっ!」


フェリクスが暗い瞳でにらみつけるとイラは悲鳴をあげてわめくのを止めた。


 「ちょっとどいてくださる?」


ショックからすっかり立ち直ったゼノがフェリクスをどかしてイラの顔を覗き込む。


手に魔力を込めて、イラの頭を掴む。


先ほど、キエリの姿で拒絶されたというのに苛ついているようで、掴む手が少し乱暴だった。


 「ふむふむふーむ、なーるほど、魔法で姿を変えていると‥‥とても高度だわ、まるでアタクシみたい! 声色も何もかも変えちゃって‥‥てか、この魔力触ったことあるな。あの時の奴か」


ゼノは、手を離してにっこりとイラに笑いかける。


 「じゃあ、情報を取り出すために拷問、しちゃいまショ。庭師の坊や、アナタ拷問はやったことあって?」

 「いえ、まだないですが‥‥頑張ります」

 「ヤダこの子、素質あるわーん」


拷問という恐ろしい言葉を聞いたイラは血の気が引いて顔が青ざめ、ぼろぼろと泣き出した。


 「ひっ、いやぁ、話す! 話すから拷問はやめてぇ」

 「ええん、話しちゃうの? つまんないの」

 「そもそも、あたしはあの方に命令されてやっただけなの!」

 「あの方?」


フェリクスはなぜだかイラの言う人物の容貌が想像できてしまった。


 「あの方の名前はカ‥‥んん!? ごふっ」


話し出そうとしたイラが突然口から吐血しだした。


さすがに慌てたクイナはイラからどいて止血しようと試みたが、イラの舌は切られていて、間もなく事切れてしまいそうだった。


 「あらら、その命令した奴ってのは、どうやらそうとう冷たいお人のようね」


ゼノは大量の血を出すイラを前にしても冷静で、イラの頬を優しく撫でてにんまりと笑った。

魔女の笑みだった。


 「ねぇ、助けてあげるから、アタクシのペットになりなさいよ。どう? ペット二号」


イラは助かるのなら藁にも縋るというように、涙と血でぐしゃぐしゃの顔でこくこくと頷いた。


ゼノが両手に大量の魔力を集めると、イラは魔力の光で包まれた。


光はぐにゃりと形を変え、その光が消えてなくなると、そこに現れたのは人間ではなく、一匹の大型の犬だった。


 「うわん!?」

 「きゃ♡成功。犬、欲しかったのよねーヨロシクね、わんちゃん」


犬は呆然としながらくるくると自分のからだを見回っている。


 「ひゃー、魔女ってのはすんごいな。でも、できるなら早くやってほしかったぜ、偽物っつったって、見かけがキエリだから、だいぶ辛いわ」

 「見ろよ、エレドナなんて泡吹いてるぜ」


エレドナは血みどろの光景に耐えきれず、失神してしまい、それをコンゴウが支えて、横にしてやった。


 「だが、ゼノ殿。犬のこいつからいったいどうやって情報をとるのだ」

 「もう、このわんちゃんはアタクシの支配下。いくらでもやりようはあるわ」


ゼノが手招きして犬を呼ぶと、悲しそうにだがやってきた。


ゼノが犬の頭を目をつむりながら撫でる。


 「この子の記憶を辿って‥‥キエリを攫ったのは、骸骨マスクの男。魔法使いみたいね。しかも、とんでもなく規格外な」

 「骸骨マスクの男‥‥やはりそいつが」


フェリクスの顔が一層険しくなる。


 「おそらくそいつは‥‥人間やめちゃっているんじゃない? アタクシみたいに‥‥」

 「ブラッタ家にある日突然現れて、ブラッタ家の商売を手伝ってたみたいね」

 「商売?」

 「奴隷売買。海外向けに売ってたのね。強力な魔法使いがいれば、人間の移動も簡単だし」


フェリクスは今にも剣を引き抜きそうなほど怒りを露わにして犬となったイラを睨む。


イラは情けなく鳴きながらぷるぷると震えている。


 「ブラッタ家の処遇は後にする。それでキエリは?」

 「もう、ブラッタ家にはいないでしょうね。引き渡しは終わったみたい」

 「キエリ‥‥」


フェリクスが後悔と怒りでぐっと拳を握りしめる。


 「キエリ‥‥を追う方法はあるんでしょ?」


今まで言葉を発していなかったゼノのペットと言われた男性がゼノに話しかけた。


キエリのことを呼び捨てにしているし、声色も表情もキエリをかなり心配していた。


ゼノとつながりがあることから、キエリと知り合いの可能性は十分にあった。


だが、キエリが男性の知り合いをフェリクスに話していないというのが引っかかる。


 「あるわよーん、ちょっぴり危険だけど、それに‥‥ん?」


ゼノが何かに気付き空を見上げると、そこにはここらで見かけない真っ黒な蝶がいた。


ゼノが人差し指を蝶に向けると、蝶は大人しく指にとまり、突然黒い炎に焼かれて姿を変えた。


姿を変えた先は一通の手紙だった。


 「あんら、むこうさんからのお手紙みたい。なんか入ってる」

 「わんちゃん、アナタってかわいそうね、完全に捨て駒よ。こんなの送って来るってことは、バレるのは予想済みでアナタにこんなことさせたのね」


犬は明らかにショックを受け、ひんひんと鳴いていた。


 ゼノがちらりと封筒の裏を見るとフェリクスへと書かれていた。


 「あら、王子様宛だわ」

 「見せてくれ」


フェリクスは、ゼノから手紙を受け取ると、封筒を開いた。


そこには一枚の紙と指輪が入っていた。


キエリに渡した結婚指輪だった。


 フェリクス、急でごめんなさい。

 でも、もうあなたとは一緒にいられないの。

 さようなら。

 キエリ


 短い文章だった。


だが、確かにキエリの字で書かれているとフェリクスにはすぐにわかった。


 「キエリからの手紙だ‥‥」

 「なんて書いてあるんだ?」


グイスがフェリクスに尋ねると、フェリクスは素直に手紙を渡した。


 「な、なんだよこれ? こんなんあいつが書くわけないじゃん!」

 「いや、キエリの字だ。間違いない‥‥だが‥‥」


フェリクスは深く息を吸い、ゆっくりと吐く。


 「キエリの本心じゃない。それもわかる‥‥」


 (キエリ、俺はこんなことは認めない。必ずお前を連れ戻す)

 (俺はお前を決して放さない)


フェリクスはゼノに向き合った。


その瞳には決意が宿っていた。


 「ゼノ殿、頼む、協力してほしい。どうやったらキエリを救える?」


ゼノはいつものにやけ顔を消し、真剣な眼差しでフェリクスを見る。


 「その前にフェリクス。キエリを攫った奴の行動から人物像を考えると、冷酷で残忍、他人をなんとも思わない‥‥殺すことにも躊躇がないわ」

 「アナタ、下手したら命を落とすわよ。それでも行く?」

 「無論だ」

 「あら、相変わらず即答。無謀だけど」


ゼノにいつものにんまりとした笑みが戻り、ぐっと伸びをして、準備運動をし始めた。


 「あの男ヤバそうだし、アタクシも本気出さないと。舐めるのナシ!」

 「ゼノ、あたしも行くわ」


そう言ったのは、あの助手の男性だった。


彼も決心しているようで、ローズピンクの瞳に強い光が宿っている。


 「キエリを助けたいの‥‥お願い!」

 「いいわよ! 命を落とすかもしんないけど! 頑張って」


ゼノは、助手の決心とは温度差がありすぎるほど軽く同行を許した。


フェリクスが心配になってその助手に声をかけた。


 「そなた‥‥どうしてそこまでするんだ?」


助手は少しおろおろとしたが、ぐっと息を飲み込んでまっすぐにフェリクスを見た。


 「あたし、今まで人に酷いことばっかりしてきて、でもそんなあたしをキエリは支えて、助けてくれた」

 「だから、あたしもキエリを助けたい。それだけです‥‥」

 「キエリが‥‥」


 キエリはどれだけの人間の人生を救ってきたのだろう。


自分もその一人であり、今はキエリはかけがえのない人となっている。


そのキエリを必死に助けようとしてくれているこの青年を拒むことはできなかった。


 「わかった。だが、そなたの命も大事にしてくれ、傷つけばキエリが悲しむからな」

 「はいっ」

 「そなた、名は?」

 「っえっと‥‥アルスです」

 「わかった。よろしく、アルス」

グイスは焦っているのでタメ口でてます。

ガンバレ、みんな…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ