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【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
三章

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偽物

遅くなっちゃった。

次が長いので許してくださいな…

 フェリクスは懐中時計をじっと見て、時間を計っていた。


 (10分‥‥十分に待った。むしろ待ちすぎたか‥‥)


 ブラッタとマラは、どかりと座り込んで必要以上に話さなくなったフェリクスをなんとかなだめようと話しかけていたがあまりにも反応が薄く、二人とも焦りで脂汗をかいている。


 フェリクスが椅子から立ち上がると、ブラッタとマラが慌てふためいた。


 「あっ、で、殿下どこに行かれるのですか?」

 「俺の妻を迎えに行く。なにか?」

 「おぉ、お話しが盛り上がっているかもしれませんし、それをお邪魔されては‥‥」


ただでさえキエリが不安がっていたのに一人にしてしまっているのが気がかりで落ち着かないのに、邪魔をされてフェリクスは苛ついた目つきでブラッタを睨んだ。


フェリクスの視線に怯えたブラッタとマラは怯えて固まっていたが、ガーンスがフェリクスの前に出た。


 「殿下、私が呼んでまいりますよ。それに、殿下といえど未婚の女性の部屋に行くのは、少し‥‥」


フェリクスはガーンスの言葉を聞くと、まるでその視線で人を殺してしまいそうなほど鋭い目つきで睨んだ。


 「少し、なんだ? 俺が愛する妻がいるのにもかかわらず何かするなどと思っているのか? まさかそんな侮辱的なことを考えているのではあるまいな?」


ガーンスはフェリクスの迫力に背筋が凍った。


 (な、なんだよ。王子といったら、誰にでもにこにこするようなひよった奴かと思ってたのに、なんなんだよこの圧は!?)


ガーンスも硬直してしまってフェリクスを止める者がおらず、キエリを探しに行こうと扉に向かったが、扉はフェリクスが開く前に開かれた。


 「フェリクス!」

 「キエリ! 戻って来たのか‥‥‥?」


キエリが笑顔で戻ってきて、フェリクスの前に立つ。


フェリクスは、微かな違和感に気付き首をひねり、すんと空気の匂いを嗅いだ。


 「キエリ、香水つけた?」

 「え?」

 「いつものキエリと匂いが違う‥‥」


フェリクスが訝し気にキエリを見る。


 (え? 待って、フェリクス様って、犬か何かなの? 香水も控えめにつけたのに!)


 「こ、香水‥‥あぁ! イラにつけてもらったの。それじゃないかしら?」

 「イラ‥‥呼び捨てにできるほど仲良くなったのか?」

 「う、うん。とっても良くしてもらったよ。ほら、他にも素敵な手袋だってもらったし」


キエリはこの家に来た時にはしていなかったきれいなレースと刺繍がついた手袋をしていた。


 (指輪がないことは手袋で隠してる‥‥言われる前に言った方が怪しまれないわよね?)

 (でも、こんなことするくらいなら、指輪を抜き取ってつけさせてくれればいいのに‥‥ううん、あの方の言うことには逆らえない)


フェリクスは、にこりと笑顔を振りまくキエリをじっと見つめた。


 「‥‥‥なにか、変わったか?」

 「え? そ、そんなわけないじゃない」


 (何なのよこの鋭さ! こうなったら)


キエリは、頭を押さえながら少し弱弱しく微笑んだ。


 「ごめんなさい、実はちょっと疲れちゃって、今すぐに城に戻ってもいい?」

 「そうか、緊張もしていたしそれは疲れるだろう。早く帰ろう。それでは、ブラッタ伯爵世話になったな」


一応フェリクスはブラッタに礼を言うと、ブラッタは何故か気味が悪いほど満足げに笑っていた。


 フェリクスはキエリを支えるようにして、部屋をあとにした。


 (違和感が‥‥ある。なにかいつものキエリと違うような‥‥だが、キエリの顔、キエリの声‥‥それは間違いないはず)

 (やはりなにか、あの屋敷であったのか? あの女に何かされたりだなんて‥‥していないよな?)


キエリは、眠っていればぼろを出さずに済むので、疲れたと言って馬車の中では眠ることに徹していた。


フェリクスは違和感がありながらも、それがはっきりとしないために行動にでることができていなかった。

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