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【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
二章

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あなたの傍に

 「‥‥それで海で溺れて死にかけたところをセイレーンに救われて」


キエリがこくりと頷く。


 「魔女の島まで送ってもらって魔女に会って」

 「はい‥‥」

 「あの魔女にキスをして呪いを解いた‥‥だって?」

 「そ、そのとおりです」


フェリクスのじとっとみる突き刺すような視線が刺さって痛い。


フェリクスが頬に手を添えているためキエリは顔を動かせず、視線だけが泳ぎまくっていた。


 「キエリ、ちゃんとこっちを見ろ」

 「は、はい‥‥」


キエリはおずおずと視線をフェリクスに向けた。


フェリクスはにっこりと微笑んでいるがこれは嬉しさからくるような笑みではないことをキエリは察知した。


 「きっ、緊急事態でしたから!」

 「‥‥そうだな、起きてしまったことはどうこうできない」


キエリは、怒ってはいなさそうでほっとはしたがフェリクスの笑みはまだ消えてはいなかった。


 「だが、言ったな、嫉妬もなんだろうと受け止めると」

 「も、もちろんです」

 「頬だろうと誰かとキスをしたというのは‥‥嫌だ。だから上書きさせてほしい」

 「上書き‥‥とは?」


キエリは何があるのかと身構えていたが真剣な眼差しでフェリクスを見つめている。


フェリクスはあまりにもキエリが真剣な顔をしているので、思わず横を向いて少し笑ってしまった。


 「な、どうして笑っているのですか!?」

 「ごめん、キエリが可愛らしかったから」


 (も、もう! これはずるい!)


フェリクスに、きれいな顔でにこりと微笑みながら言われるとキエリは何の反論もできなくなってしまった。


 キエリがぷんすかと怒るのを我慢して口を一文字に結んでいると、フェリクスの顔が近づいてキエリの頬に軽く口づけをした。


キエリはいきなりのことに驚いて、頬を赤らめながら手で口づけられたところを押さえる。


フェリクスは甘くキエリを見つめていて、キエリは心臓の鼓動が速くなってしまう。


 「キエリ、可愛い‥‥」


今度は唇を重ね合わせた。


何度も角度を変えて口づけを繰り返す。


離れるたびに「可愛い」と艶を帯びた声で囁かれると頭がじんと甘くしびれる。


 (そっか‥‥これが上書きかぁ‥‥)


なんてふわふわした頭で考えていると、重ねるだけだった唇が舐められて軽く食まれた。


キエリは肩がびくりとはねて、何が起こったのかと頭を動かそうとしたがその前にフェリクスの舌が口に侵入してきてキエリの思考が遮られた。


逃げていた舌が絡められ、舐めあげられ、一つ一つ確かめるようにゆくりと口の中を犯していく。


 「んん!‥‥ふ‥‥」


キエリは頭が甘い痺れが増して真っ白になっていくのを感じながら、必死に耐えようとフェリクスの服を握りしめた。


 「キエリ‥‥俺のキエリ‥‥」


フェリクスは夢中で貪っているようでうわごとのように言葉を呟く。


何かこみ上げてくる感情をこらえようと服にしがみついてたキエリだったが、力が次第に抜けていて、フェリクスにもたれた。


よりきつく抱きしめられて、どんどん逃げ場がなくなっていくように感じた。


 「ふぇ‥‥ん‥‥」


からだが震えて目じりに涙まで浮かんできた。


これ以上はどうにかなってしまいそうで、キエリはフェリクスの胸を軽く叩いて止まってくれるよう願った。


フェリクスは止まってくれたがその瞳にはまだ甘く熱を帯びている。


 「はぁ‥‥い、いきが‥‥それに、なんか‥‥へんなかんじが」


フェリクスがじっとキエリを見つめた後ぎゅっときつく抱きしめて、キエリに首に頭をうずめて何か耐えるようにゆっくり深呼吸していた。


フェリクスのさらりとした黒髪がキエリの首をくすぐりキエリは身を少しだけよじる。


キエリはフェリクスにすり寄るように背中に手をまわして抱きしめ返す。


 「はぁ‥‥‥これを我慢しなければいけないのか‥‥辛いな」

 「あ、の‥‥なにか我慢していることが?」

 「いや、何でもない。とりあえずは落ち着いた」

 「それは‥‥よかったです」 


 しばらくじっと抱き合っていたが、フェリクスは落ち着いたのか抱きしめる手が少し緩み、大事そうにキエリの背中を撫でる。


 「フェリクス様はいつも温かいですね。フェリクス様の温かさが大好きです」

 「撫でられると心地よくて‥‥それも好きです」

 「そうか‥‥俺はちゃんとキエリの安らげる場所になっているか?」

 「もちろんです‥‥」

 「キエリ」


フェリクスは、顔を上げてキエリの宝石のように輝く瞳を見つめる。


 「これからも俺の隣にいてくれるだろうか?」


キエリは、優しく微笑んでフェリクスの星のような琥珀色の瞳を見つめる。


 「もちろんです。フェリクス様もわたしを傍にいさせてくれますか?」

 「あぁ‥‥キエリでないと駄目なんだ」


フェリクスが幸せそうに微笑んだ。


それがたまらなく嬉しくて、キエリは自らフェリクスの唇にキスをした。


離れたときには、はにかみながら微笑んで頬を赤らめていた。


 「ふふっ、大好きですフェリクス様」


フェリクスは時が止まったように、固まっている。


 「あ、あの‥‥フェリクス様?」


キエリはあまりにもフェリクスが動かないので、心配になって手をひらひらとフェリクスの目の前で動かした。


 「‥‥‥」

 「これは‥‥耐え難い」

 「?」

 「さっき、我慢したばかりなのに‥‥」


フェリクスは、キエリを抱えたまま立ち上がった。


 「おわっ! どっどうしたんですか?」

 「もう少しだけ付き合ってくれ‥‥もう少し」

 「へ? は、はい」


キエリは、何に付き合うのかわからずに返事をするのはよくないとことを数分後に学ぶことになるキエリであった。

いちゃこらさせたりなかった…それだけです

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