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【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
二章

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54/77

受け止めると

ちょっと長かったので次のお話しと半分こですね

 キエリが目を覚ました時にはすっかり日が暮れていた。


周りにはゼノの姿もロゼの姿もなく、静まり返っていた。


 「ゼノ? ロゼ? どこ行っちゃったんだろう? ごはんでも食べに行ったのかな‥‥」


キエリは寝台からおりて、下着姿で寝てしまっていたので、身支度を整えた。


 「フェリクス様に会いたいな‥‥」


ふとそう思ってフェリクスに会いに行こうかと考えていたころ、丁度キエリの部屋の扉がノックされた。


 「ロゼかな?」


キエリが扉に駆け寄って開けると、そこにはロゼではなくフェリクスがいた。


 「フェリクス様!」

 「あ‥‥起きていたか。大丈夫か?」

 「はい、元気ですよ。あ、中にどうぞ」


キエリは笑顔で迎えたが、フェリクスはどうしてか態度がよそよそしく、中に入るのをためらったようにしたがキエリが手をひくと中に入ってくれた。


 キエリは会えたことへの嬉しさが溢れてしまって、扉を閉じた後すぐにフェリクスに抱きついた。


 「キ、キエリ‥‥」

 「すみません。でも、長い間離れていたように感じてしまって、しばらくこうしていたいです」

 「そ、うか‥‥」


フェリクスは抱きしめ返すでもなく固まっているばかりで、キエリはやはりフェリクスの態度に引っかかるものがあり、怪訝そうな表情でフェリクスを見上げた。


 「フェリクス様なんだかおかしいです。何かあったのですか?」

 「‥‥‥キエリは、なんともないのか?」

 「何がですか?」

 「俺の‥‥したことについて‥‥‥」


フェリクスは、まるで捨てられた子犬のようになんとも不安そうで、一方キエリはきょとんとしていた。


 「さっきは、キエリが戻ってきてくれたのが嬉しくて、何も考えずに行動してしまったのだが‥‥その、冷静になるとかなり酷いことをしたなと‥‥」

 「‥‥嫌われても仕方がないくらいのことを」

 「確かに、あの時は悲しかったし、驚きましたし、少し怖かったです」


フェリクスの肩がびくついて後ずさりしようとしたが、キエリがむっとしながらフェリクスの服をがっちりつかんでそれを阻止した。


 「最後まで聞いてください!」

 「あ、あぁ‥‥」

 「悲しかったのは、わたしは何があってもフェリクス様のもとにいるというのを信じてもらえなかったのかなって感じたからで、驚いたのはフェリクス様があんな鎖を用意していたとは思わなくて、怖かったのはフェリクス様が何を考えているのかわからなくなってしまって‥‥」

 「何より今までみたいに温かい時間を一緒に過ごせなくなるのかなって‥‥それが一番怖かったです」

 「でも、それもまだ呪いが解け切っていなかったせいだって理解はしています」

 「それも、原因なんだが‥‥違うんだ」


キエリは困ったように眉を寄せているがまっすぐフェリクスを見つめていて、フェリクスは罪悪感からかキエリと目を合わせられずに視線をそらしている。


 「違うって?」

 「それは‥‥」


歯切れが悪く、視線が合わないフェリクスにしびれを切らして、キエリはフェリクスの手を引っ張って二人掛けのソファに座らせた。


キエリは隣に座るのではなく、フェリクスの膝の上に馬乗りになって、視線を逸らせないように両手でフェリクスの頬を包んで前を向かせた。


キエリの強引な行動にフェリクスは目を丸くしていたがキエリはいたって真剣にフェリクスを見つめている。


 「フェリクス様、ちゃんとお話ししましょう。フェリクス様が辛そうにしているのはわたしは耐えられません。なので、ちゃんとお話ししてくれるまで、わたしはここをどきませんから!」


 フェリクスは、呪われた姿だったフェリクスのいる屋敷に無理やり居座るくらい、そういえばキエリはなかなかに強引なところもあったのだったと思い出した。


そして、今そんなことを考えている場合でないというのに、その強引なところは自分のことを思っての行動であったとも考えるとじんわりと嬉しさが心にこみ上げてきてしまう。


にやけてしまいそうになるのを必死に抑えて、静かに話し始める。


 「わかった。きちんと話そう‥‥ただ、その、できれば引かないでほしいのだが‥‥」

 「はい、どんとこいです」


キエリはきりっとして答えて、どっしり構えている。


そのしぐさ一つ一つがフェリクスは可愛いと思えてしまって、つい抱きしめたくなるのだがそこをぐっとこらえてキエリを両手で囲うだけにした。


 フェリクスは意を決して息をゆっくりと吐き、気持ちを落ち着かせてから話し始めた。


 「キエリと出会って初めて気が付いたのだが、俺はものすごく嫉妬深い。キエリが他の男と話しているところを考えてしまうと居ても立ってもいられない」

 「正直に言うと、俺は呪いが解かれてもキエリを他の男たちに見られないように閉じ込めてしまいたくなってしまう‥‥もう、実行にはうつさないが‥‥」

 「それぐらい嫉妬深い。それにお前がいなくなるだなんて考えたくもない。でも、無性に不安になってしまうんだ」

 「それぐらい、お前を失うのが恐ろしい‥‥」


キエリは、フェリクスの告白を瞳を瞬かせて静かにきいていた。


 「俺の今までの行動は、結局俺の心の中にもともとあったのだと思う。それがより大きくなって露になっただけなんだ」

 「キエリは‥‥そんな俺に失望したか‥‥」


フェリクスの瞳は不安で揺れていた。


しかし、キエリは優しく微笑んでいて、その微笑みはフェリクスに赦しを与えていた。


 「フェリクス様、嫉妬するのが‥‥大事な人を失うことを恐れることが一体なぜいけないのですか?」

 「その気持ちがキエリを怯えさせてしまったじゃないか‥‥」

 「あの時はフェリクス様の気持ちがわかりませんでしたから、でも今は違います」

 「もちろん、あなたを失うのは怖いです。それに‥‥わたしだって嫉妬します‥‥」

 「キエリが‥‥嫉妬?」


フェリクスは信じられないといったように目を見開いていたが、キエリは気恥ずかしそうに眉を寄せていて、フェリクスの頬から手を離した。


 「ゼノから、婚約者さんのことを聞きました」


フェリクスは眉間に皺を寄せて、ゼノに対し心の中で舌打ちをした。


 (ゼノ殿はどれだけ俺たちの仲をひっかきまわしたいんだ‥‥)


しかし、ゼノに対する苛立ちは一旦放っておくことにした。


 「あぁ、確かに俺には幼いころに親同士で決められた婚約者がいた」


キエリの表情が悲しそうにしぼんでいく、それを見るとフェリクスも心を針で刺されたようにちくりと痛む。


 「だが、その婚約者とは二年前に別れたきりだった。俺は呪われた時、彼女に‥‥ファシネに拒絶されてそれきり言葉も手紙も交わしていなかった」

 「だから、俺とファシネとの関係はとっくに‥‥いや、本当はもっと前から崩れていたと思う」


キエリは、相変わらずしゅんとしていているがどういうことなのかと聞きたげに首を傾げていた。


 「ファシネは幼いころから王妃としての教育を受けてきた。でも、それは彼女にとっては重圧になっていたんだと思う‥‥だから彼女にとって俺との婚約は喜ばしいことではなかったのだろう」

 「でも、その‥‥好きだったんですよね、ファシネさんのこと」


あの暗いところなどなさそうなキエリが不安げにそわそわしながらフェリクスの回答を待っている。


 「お互いに大事に想ってはきた、と思うが‥‥愛し合っていたとは違う」

 「好きだと‥‥愛していると思ったのはキエリが初めてだ」


キエリは、フェリクスに言われた言葉を飲み込むように口を結んで俯いた。


俯いてしまってフェリクスから見えずらいがキエリの頬はほんのりと赤くなっていた気がした。


 「わたし、今本当にやっとフェリクス様の気持ちがわかったかもしれません‥‥もしも、フェリクス様がファシネさんのこと好きだったらなんて考えたら心が落ち着きません」

 「うん‥‥本当に‥‥」


キエリは困ったように笑って、何か納得したように何度か頷いた。


 「なんだか一人で悩んじゃってましたけどお話し出来て良かったです。すっきりしました」

 「そうか‥‥あまり聞いても気分の良いものではないし、それにキエリと会っている時はキエリのことばかり考えてしまう。でも、人づてに聞くくらいなら初めから言っておけばよかったな」


フェリクスが申し訳なさそうに呟いたが、キエリは自分のことばかり考えてしまうという言葉に照れてしまって、また俯いてしまった。


 一旦気持ちを収めて、再び顔を上げる。


 「こっこれからは嫉妬しようとなんだろうと受け止めますから! だから、嫌なことがあったらお話ししましょう」

 「いい、のか?」

 「もちろんです。だって、フェリクス様の恋人ですもの」


キエリは少し気恥しそうに微笑んだが、はっきりと言葉にして表した。


 「よし! もうわたしは大丈夫です! フェリクス様は何か言いたいことききたいことありますか?」


キエリは晴れ晴れとした笑顔で笑った。


 「じゃあ、言わせてもらう」

 「はい!」

 「まず、俺のためにやってくれたとは言え、今回は無茶しすぎだ。船であの魔女のいるところまで行って、どれだけ危険なことをしたのかわかっているのか?」


今回ばかりは怒っているようで、フェリクスはキッとキエリを睨んだ。


 「うっ‥‥」


確かにキエリは今回、無計画に飛び出して、しかも死にかけていたので、言い返す言葉が見つからなかった。


 「ご、ごめんなさい‥‥」

 「お願いだから、あんな無茶はもうしないでくれ」

 「‥‥‥はい」


キエリは反省して小さな声でぽつりと約束してくれて、フェリクスはしょうがないというようにため息をついて苦笑した。


 「だがキエリ‥‥」


フェリクスはキエリの頬に手を添えて、しょんぼりしている顔を上げさせる。


 「キエリに助けられるのは何度目だろう‥‥ありがとう」


キエリは、水を得た花が咲き戻るように明るい笑顔になった。


 「にしてもどうやって島までたどり着いたんだ? あそこは茨で守られていたから近づけばただじゃ済まないだろう?」

 「えっと‥‥それは‥‥」


こんなに心配されてさらに内容を詳しく話せばより心配させてしまうのではと思い、キエリは話すことをためらった。


さらにロゼの呪いの解き方は緊急とは言え、少し気まずい。


しかし、フェリクスにすぐに察知され、フェリクスはキエリをじっと見つめる。


今度はキエリが視線が泳いでしまって、顔も背けていたが、フェリクスに腰をがっちりと腕で囲われ、もう片方の手で正面を向けさせられた。


先ほどとは立場が逆転してしまった。


 「キエリ‥‥何があったんだ?」

 「ちょっとだけ、大変だっただけです‥‥」

 「その、少しの大変を教えてもらおうか‥‥話し合うのだろう?」


キエリは、お互い話し合おうと決めたばかりであったが、この約束が早速自分の首をしめるとは思っていなかった。

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