表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/77

逃走準備

おまたせしました。こっそりと投稿です。

 キエリが目を開いたときには、そこは城ではなくどこかの町の人目のない裏路地であった。


 「ここは?」

 「城下町よ。移動魔法ですっ飛んできたの。長距離を移動するのは疲れるから、とりあえずはここね」

 「これからどうやったら呪いの元を探し出せるの‥‥?」


キエリは、ゼノに頼るばかりで申し訳ないと思いながらもそれ以外にすがるものがなく、これからのことをたずねてみる。


 「まぁまぁ、そんな焦らないの。まずは準備よ」


ゼノは、キエリにここに留まるように言って一人で町の表通りの方に行ってしまった。


しばらくするとゼノはフードを被って帰ってきて、もう一着手に持っていたフードをキエリに手渡した。


 「アタクシみたいな美人とアナタみたいな可愛い子が並んでたら目立つから、その可愛いお顔は一旦隠しときなさい。これから追手がかかるかもだし‥‥いや、絶対来るわね」

 「‥‥ありがとう」


キエリはフードを羽織って深く被った。


フェリクスがこれからキエリたちに追手をかけるということは容易に想像がつく。


そう思うと心が重くなったが、今は目的のためにキエリは顔をあげた。


 「んじゃ、他に役立ちそうなもの買いに行くわよ」

 「うん」



 ゼノとキエリが初めにおとずれたのは武器屋だった。


剣やら盾やら攻撃用のものから防具まで様々なものが壁に掛けられて展示されている。


 (武器‥‥を買うんだよね? 危険な旅になるんだろうな‥‥)


ゼノは、店主の男性にいくつか女性でも扱える短剣を出してもらった。


 「護身用よ。正直これから何が起こるかわからないからね。備えあれば患いなし! さ、選んで」

 「うん‥‥」


キエリは、出してもらった短剣を持ち上げてみて、軽くて使いやすそうなものを選んだ。


ドレスのまま出てきてしまったのでどう持ったものかと思ったが、足に短剣を括りつけられるベルトを店主からおまけしてもらった。


 「こんなかわいいお嬢ちゃんたちなんて珍しいからね。おまけだよ、おまけ」

 「ありがとうございます」


キエリがにこりと笑ってお礼をいうと、少し店主は照れたように笑った。


 「ささ、次よ次。ムッシュー、おまけありがとうね」


 キエリとゼノは武器屋をあとにして、他にも何件かまわった後、道にでると何頭かの馬の蹄がけたたましく地面を叩く音が聞こえた。


 「隠れてっ」


建物と建物の間に二人は急いで隠れて、様子をうかがう。


馬に乗っていたのは王国の騎士たちであった。


騎士たちが馬から降りて、住人に聞き込みを始めていく。


 「しょがないわね、行くわよ。きっと王宮魔法使いたちも出てくるだろうからね、移動しないと」

 「王宮魔法使いの人たちがなんでわたしたちを追うのにでてくるの?」

 「魔法というのは、使えば残り香のように跡が残るの。それをたどればアタクシたちにたどり着いちゃうってワケ」

 「魔法使いや魔女は訓練すれば目で魔力を見たり、感じたりすることができるのよ」


キエリはそういうものなのかと感心してへぇーという声がもれた。


 「じゃあ、移動魔法ばっかりで移動してもすぐ追い付かれちゃうの?」

 「ま、やり方次第ね。あんまりバレないようにしてみたけど、こればかりは完全には隠せないわ。アタクシにかなう魔法使いはいないでしょうからそうそう捕まることはないでしょうケド」

 「ということで、一旦移動しまーす」


ゼノは再びキエリの手をとって移動魔法を使った。



 キエリたちが移動してきたのは城下町にある展望台であった。


王都が一望でき、海にぽつりぽつりと浮かぶ船も見える。


ゼノは展望台のベンチにどしりと座り、キエリもその隣にちょこんと座った。


 「ふぅー‥‥問題は追手よりも目的地ね」

 「呪いをかけた張本人、魔女‥‥がフェリクス様に呪いをかけたんだよね?」

 「そ、誕生日に告って、フラれて、呪いかけるって‥‥マジで馬鹿よねー‥‥んでその小娘はその後逃げだしてんの」


ゼノが足をぱたぱたとさせながら、空を仰いだ。


 「ゼノ、呪いって何なの? 魔法とは違うの?」


ぼーっと空を見上げていたゼノが急にキエリの方を見てにこっと笑う。


 「よしよし、じゃあキエリにちょっとした魔法やら呪いやらについて教えてあげましょう!」

 「まず、魔法の原動力となる魔力という力があることは知っているでしょう?」


キエリはこくりと頷いた。


魔力はかつてキエリも持っているとゼノから言われており、実際にその魔力をフェリクスに送っていたらしい。


自覚はなくともフェリクスは獣の姿から人間の姿に変化したので、キエリには魔力があるといって間違いはない。


 「そもそも、魔力というのは実はいろんなものに宿っているの。人間はもちろん、そこらの石や木にだってね」

 「全部に宿るの?」

 「存在するもの全てにあるであろうというのが定説ね。ただ、それは均等ではなく、大きく差があるの。同じ木でも、個体によってほんとに微量であったり、信じられないくらい多かったり。人間もそうよ、実はみんな魔力はもっているけれど多くの人間は魔力が微量なことが多いわ」

 「じゃあ、ゼノは魔力がすごく多い人なんだ」

 「そうよん! 膨大な魔力をもってして生まれて、さらには美しさと賢さ! あぁ、天は二物も三物も四物も与えてしまったのね‥‥」


ゼノは、自画自賛してうっとりとした様子でため息をついた。


 「ゼノは、本当にすごいんだね‥‥羨ましい、かも」

 「そうよん、もっと羨みなさい! んふふ、でもね、アナタだってちゃんとすごいものもっているのよ」

 「わたしが?」


キエリが首を傾げて、ゼノの顔を見つめる。


キエリは、ずっと人形として過ごしてきた自分にあるものはほんの少しで、大それたものはないと考えていた。


 「魔力というのは共通しているところももちろんあるけれど、微妙に一人ひとり違うの、その中でもひときわアナタの魔力は独特で素晴らしいわ。可能性に満ちている‥‥」

 「わたしの魔力が可能性に‥‥? でも、未だに魔力を使っている実感もないし‥‥呪いを解けるのは良かったけれど」

 「他にも使ったわよ。アナタの肉体を作るときとか‥‥正直、アタクシだけの力じゃ叶わなかったかも」

 「そ、そうなの?」

 「肉体を作るように導いたのはアタクシだけれど、魔力のほとんどを補ったのはアナタ自身よ。だからね、ほんとはアナタはもっとできることがあると思うの。というか本気で魔法を学べばアタクシを超えられるかも。それぐらいの可能性はあるわ」

 「‥‥‥そうなんだ」


キエリは、自分にまだそんな可能性が秘められているのかと思うとなんだか嬉しいような気がして、少し笑みがこぼれた。


 「さて、話の続きね。んで、その魔力ってのはみんながからだに宿しているんだけど、そのなかでも魔力を研究して魔法として行使できる人間のことを一般的に男を魔法使い、女を魔女といいます」


うんうんとキエリが頷いて相槌をする。


 「世の中にはいろんな魔法があるのだけれど、この魔法というのは研究を重ねることで出来上がるの」

 「その研究ってのは魔法を作り出すための魔力の使い方を探ることね、例えると、作りたい料理が魔法で、そのレシピを考えるのが研究ってことかな」

 「正しいレシピを使えば美味しい料理が作れるみたいに、正しい使い方を見つけ出すことで安全に、目的に沿って魔力を使うことができるの。そうやって、魔法という分野は発展してきたのよ」

 「そのレシピができてるから、皆が同じ魔法を使えているし、魔力は物にも宿るから、魔道具ができるんだ」

 「そのとーり!‥‥でもね、それは普通の魔力の使い方。魔力をただただぶつけるだけの手順をふまない不格好な料理、それが呪い」

 「ルールに則らずに欲望のために魔力をぶつける。それは純粋な力だけれど、歯止めがきかないのよ‥‥下手したらはねっ返りがくるわ」


キエリは、あることに気付いてハッとした。


 「‥‥ねぇ、わたしってその魔法のルールに則って魔力を使ったことないよ。わたしが使ってたのってもしかして呪いなの?」

 「そうね、言葉は悪いけれど魔法というよりかは呪いの方が近いわね。アナタの場合のはね返りは強い睡魔ってとこかしら」

 「やだ‥‥わたし、フェリクス様に呪いをかけてたの‥‥?」


キエリは大事な人を苦しめていたものと同じことをしていたのかと思うと、胸が苦しくなっていく。


一方ゼノは、そんなキエリの背中を励ますようにさする。


 「気にしなさんな! はね返りは自分にしか来ない分、呪いを解く魔法といっても一緒よイッショ。専門家から見れば違うってダケ」

 「アナタはちゃーんと大好きな人を助けてるわ。それは事実なのだから胸を張りなさーい」


ゼノは、にんまりと笑いながらキエリが気にしないように励ましてくれると、キエリは気持ちが軽くなった。


 「そ・れ・で、サイテーな料理を作ってオウジサマに食べさせておきながら、自分でもそれを食べてお腹を壊している魔女がいるわけなんだけど‥‥」


ゼノが町で買った地図を広げる。


王都とその周辺の町々と海と小さな島々が書かれた地図だ。


 「あの王子様を調べた時、その魔女の魔力の残り香は確保したから、そいつの居場所がなんとなくはわかったわ」


ゼノが地図でトントンと指で示した場所は海のど真ん中で、島も何も書いていないところであった。


しかも、王都からそれほど離れておらず、逃走犯がいるとは思えない場所であった。


 「でもゼノ、ここ何も書かれていないよ。それに王都から近い‥‥追われているのにここに留まるのかなぁ?」

 「そうね。だけど確かにここらへんなのよねぇ‥‥移動魔法でひとっとびしたいところだけど、それを阻止する魔法をかけていてもおかしくないわ。相手はあんな強めな呪いをかけられるところを考えるとまぁまぁ優秀な魔女だし、アタクシほどではないけどネ!」


 (他にもここまで行く方法はあるけど、危険な橋渡りなんてキエリにさせたくないし‥‥)


 「近いのは‥‥しんない。その魔女は王子様に執着してるんでしょ? 王子様が王都に戻ってきたらすぐわかるようにとか、あえて近くにいることで目を欺いている、とか‥‥考えられるけど、真実かはわからないわ」

 「そう、だね。でも、魔力を追えるなら、フェリクス様たちも魔女の居場所までは知っているかもね。魔女をそのままにするとは思えないから、何かあるのかも‥‥とにかく、ここまで船で行くしかないね‥‥港で船を借りよう。お金、多少はもってこればよかった。負担かけてごめん」

 「いーのいーの、アタクシお金はけっこう稼いでるのよ」


キエリは、本当に周りの人間に助けてもらってばかりだと思いながらも、今は自分のできることを考えようと決めた。


 「はいっ、じゃ、休憩アンド授業はおしまい! 次は港ね。バレないようにこっそりといかないと」


ゼノが立ち上がりからだをぐっと伸ばして、キエリも立ち上がって、お尻をはたいた。


ふと、キエリは重要なことに気が付いた。


 「ねぇゼノ、考えたのだけど‥‥」

 「なぁに?」

 「二年前にフェリクス様は魔女に逃げられて、きっととても悔しい思いをしたと思うの‥‥」

 「でしょうね」

 「だから、次もし同じ様なことが起きた時のために、魔女や魔法使いが逃走したときのための対策を練るんじゃないかなって」

 「アッハッハッハッハ‥‥‥ほんとね‥‥‥あっ」


ゼノが微力ながら近づいてきた魔力を感じとり顔が真っ青になり、キエリも察して顔が青ざめる。


 「キエリ、走るわよっ!」

 「うんっ!」


ゼノとキエリが走り出して数十秒後、ゼノとキエリが座っていたところには十人ほどの騎士と魔法使いらが移動魔法で現れていた。


 (っぶね! あとちょっと、気づくの遅かったら囲まれてたわ! 魔力もほとんど残してないのに、ずいぶん優秀ですこと!)


ゼノとキエリがスカートをたくし上げて走っていると、後ろから勢いよく何かがゼノに向かって飛んできた。


しかし、それはゼノに直撃することはなくゼノの肩を掠めて、横を過ぎていった。


一瞬しか見えなかったが枷のようなわっかだった。


 (うわ~、あれやばそ。アタクシにぶつけてくるってことは、魔力を封じる魔道具ってとこかしら)


 「キエリ! 手!」


キエリはゼノに手を伸ばし、ゼノが急いで手を握ってすぐに移動魔法を使った。


 (さっさと港に向かわないと!)


 「っつ!?」

 「きゃ!」


ゼノは港に移動するはずだったが町の中の来るはずのない道のど真ん中に落ちてしまった。


 「来たぞ! 構え!」


道の遠くに騎士たちと魔法使いたちが待ち構えていて先ほどの拘束具を特殊なクロスボウで飛ばしてきた。


 「っつ!」


ゼノはとっさに魔力を手に込めて、暴風を起こし、拘束具を地面に叩き落した。


キエリがゼノに手を貸して起き上がらせ、騎士たちとは反対方向に走って逃げた。


しかし、騎士たちは馬でこちらを追いかけてきていてすぐに追いつかれてしまいそうだった。


 (まさかっ移動魔法が使えないように阻害する魔法で町を囲い込んだの!? おかげで座標がうまく測れないっ、こんな短時間で‥‥マジかぁ)


 「ハァッ、ハァッ‥‥移動魔法がうまく使えなくさせられたわ。なんとか逃げ切らないと」

 「ゼノ、こっちに!」


キエリはゼノの手を取って、馬が入り込めない建物の間の細道に入り込んだ。


しかし、先回りをされていたのか細道の先にも騎士たちの姿が見えた。


 「んもう! しつこいんだからっ、キエリしっかりつかまって!」


ゼノがぎゅっとキエリを抱きしめると、ゼノとキエリは風をまとわせて建物より高く大きく空へと飛び上った。


 「ぉわ!」

 「舌噛まないように口は塞いで!」


ゼノが建物の屋根を足で蹴ってふわりと飛び上って空中を舞う。


キエリは、地に足つかない状態が恐ろしくて、必死にゼノにしがみついた。


建物の屋根をぴょんぴょんと飛び回るゼノに地面を走る騎士たちは翻弄される。


 (んふふ、やられっぱなしは趣味じゃなくてよ)


ゼノがくいっと手をまわすと、ゼノとキエリの姿が歪んだ。


その揺らぎが終わると、ゼノとキエリの何十もの分身が現れて四方八方に飛び跳ねていった。


 (え? あれってわたしたち!? 魔法でそんなこともできるの?)


分身を放った後、ゼノは急に道の端に下り立った。


 「ゼノっ、下りたら捕まっちゃうよ!」


ゼノは余裕の笑みを見せてにんまりと笑い、人差し指を口元にあてる。


馬で駆ける騎士たちが近づいてきて、キエリは不安でたまらなかったが、ゼノが余裕でいるということは何かあるのかと思って不安をこらえた。


騎士たちがどんどん近づいてくる。


キエリは不安でひどく心臓がなる。


しかし、騎士たちはまるでキエリたちの姿が見えていないかのようにすんなりと横を通り過ぎていった。


 「騎士の人たち、わたしたちの姿が見えていないみたい。これもゼノの魔法?」

 「そそ、光の屈折を利用して‥‥ま、細かいことはいいわ。周りの人間に姿を見えなくしたの。でも声は聞こえるし、触れればわかるから気を付けてね」


 (んふふ、魔力を押さえ込む魔道具や移動魔法を使えなくするのはしてやられたけど、天才のアタクシはそこらの魔女と同じゃないわよ)


ゼノは余裕の笑みを浮かべながら、キエリと手をつないで港に向かった。

明日はお仕事なのでまた月曜日あたりに投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ