余裕
また少し短いですが次は長いので許してください…。
キエリは、いつものように寝ざめが悪く起き上がってじんわりと昨日のことを思い出した。
(昨日‥‥えと‥‥フェリクス様とお話しして)
フェリクスの熱い視線と甘い言葉を思い出して一気に目が覚めた。
「ぁぁ‥‥これは、恋人ってやつなのかな‥‥えへへ」
嬉しさと気恥ずかしさがこみ上げて、変な笑い声が出てしまう。
辺りを確認してみると滞在していた部屋の寝台とは違うことに気付いた。
(わたし結局あのまま寝ちゃったんだ‥‥フェリクス様の寝台を占領してしまった。他のところで寝たのかな‥‥申し訳ないことしてしまった)
と思いつつ、もう一回寝台に寝転がる。
「ふふっ‥‥フェリクス様の匂い‥‥」
毛布にくるまるとフェリクスの匂いに包まれてまるで抱きしめられているようで心地よかった。
しばらくころころ転がりまわっていると上から何者かに押さえられて動きが止められた。
「キエリ、それは新しい遊び?」
フェリクスが笑いながらのしかかるようにキエリを毛布ごと抱きしめた。
キエリがもぞもぞと動いて顔を毛布からだして、ちょっと恥ずかしいところを見られてしまって頬を赤らめる。
「ぉはようございます、王子様」
「おはよう」
フェリクスが爽やかな笑顔でキエリの額におはようのキスをした。
フェリクスのキスはいつかフェリクスが呪いをかけられていた時にキエリが頬にしたキスとは明らかに違っていて、キエリは心臓がうるさいくらいなってしまうのを感じた。
恥ずかしさで、ずりずりと毛布の中にからだをうずめてしまった。
「キスも名前を呼ぶのもこれから慣れないとな」
「はぃ‥‥」
(どうしてこんなにも差があるんだろう? フェリクス様は余裕がある?)
キエリは、頭を再びひょっこり出してフェリクスをじっと見つめた。
視線が重なるとフェリクスは愛おしそうに見つめて優しく微笑む。
(だ、だめだ。心臓がもたない! 部屋に戻ろう)
「あの‥‥寝台を占領してしまって申し訳ありませんでした。もう、戻りますね」
「あぁ、その後は一緒に朝食を食べよう。やっと仕事も区切りがついてきたんだ。今日は一緒にいられるよ」
「本当ですか!?」
一緒にいられると聞いて、キエリの瞳がきらきらと輝く。
「うん、海に行こうか? それとも、他のところ‥‥」
「海! 海に行きたいです! ありがとうございます。すごく嬉しいです!」
キエリは、あまりにも嬉しくて嬉しくて、フェリクスをぎゅっと抱きしめて頬に小鳥がついばむようなキスをした後、すぐに身支度を整えに部屋から出た。
部屋に残ったフェリクスは、キエリの足音が消えてしばらくした後、寝台にばふんと倒れ込み顔を両手で押さえた。
「うう、ぅぅ‥‥はぁ、はぁ‥‥」
ごろごろと寝台で転がりまわって悶えて唸る。
「よかった、本当だった‥‥夢じゃなかったぁ‥‥」
「‥‥どうしてああも無防備でいられるんだ」
「あぁ‥‥かわいい‥‥好きだ」




