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【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
二章

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秘密のおでかけ

 あれから数日、キエリは同じ屋根の下にいるはずのフェリクスと会わないままでいた。


フェリクス宛の手紙を書いて使用人に渡せばフェリクスに持って行ってくれて、そのやり取りだけしている。


手紙は今日はこういう事を習っただとか、からだには気をつけてとか、フェリクスはどんなことが好きなのかという質問でうめた。


フェリクスの部屋に行けば会えるには会えるはずなのだがキエリはそれをできないでいた。




 城の庭園は屋敷よりもずっと広くて、様々な種類の草花が植えられていて、いつの日かフェリクスと一緒に水やりをした日を思い出させる。


 キエリがとぼとぼと城の庭園を歩いていると、友人たちの声が聞こえてきた。


 「グイスさん! 寝るなら他をあたってください!」

 「やだね。昔っからちょいと寝るならここって決めてんの」


キエリが声のする方に歩いて行くと、言い合いをしているクイナとグイスの姿があった。


 「あっ、キエリ。こんにちは‥‥どうかした?」

 「よっ、なんかあったん?」


キエリは、あまりにも顔に出ていたのかと反省してぶんぶんと首を横に振って、にこりと笑った。


 「ううん、クイナはお仕事? で、グイスはまた遅いお昼寝?」


クイナとグイスは少し心配そうにちらりと視線を合わせたが普通に接しようと心配を二人は顔から消した。


 「そそ、いやーほら、もうすぐ貴族たちをよんで殿下の呪い解けましたよパーティするだろ? そこの演奏を練習が終わったもんだから休憩しようとな」

 「でも、計画変更! 町に行くぞ!」

 「へ?」


グイスがキエリの手を取って、ずんずんと歩き出した。


 「ちょっと! グイスさん、キエリを連れてどこに行くんですか!?」

 「クイナも行くか?」

 「まず、行先を言ってください」


グイスはうーんと考えた後、にやりと笑った。


 「オトナなところ♡」

 「行きません!! というか、キエリをそんなところに連れて行かないでください! というか、その手も離してください!」

 「クイナはいかないってさ。じゃ、キエリと二人で楽しむか!」


クイナが顔を真っ赤にして怒るので、キエリはよほどのところなのかと思ったが同時に興味がこみ上げてきた。


 「クイナ、グイスは危ないところにはいかないと思うし、大丈夫だよ」

 「い‥‥いや、だって、オトナなお店なんて」


クイナが恥ずかしさで耐えきれず歯を食いしばって頭を抱える。


 「あらやだっ! クイナくんったらえっち」


グイスがふざけたようににやりと笑ってクイナを茶化した。


クイナの中で何かが切れてしまい、真っ赤になっていた顔がみるみる冷たくなっていく。


 「やべっ、からかいすぎた。クイナは怒ると技かけてくるんだよ。キエリ、逃げるぞ!」

 「え? わたしも」


グイスはキエリの手を引いて庭園の中を急いでかき分けて行った。


キエリがちらっとクイナを振り返ると随分怒っているようで、ちょっと怖いくらいだったがなんだか追いかけっこをしているようで、悪いと思いつつも楽しくなってきてしまった。



 しばらく追いかけっこをしていたが、いつの間にかグイスとキエリはクイナをまいていた。


 「へへ、この庭園を熟知しているオレに勝てるわけないぜ」

 「はぁ、はぁ、ふふ、クイナには悪いけどちょっと面白かったな」


キエリが無邪気に笑うと、グイスはにやっと悪い笑みを浮かべる。


 「だろだろ? 他人というのはおちょくるにかぎる」

 「いやでも、もう怒らせるのはクイナに悪いかな。それにしても、すごいね。この庭のことよく知ってるんだ。あっという間にクイナをまいちゃったよ」

 「ちびの時から殿下と遊んでるからな」

 「王子様と?」


キエリは幼いグイスとフェリクスが庭園で走り回って遊んでいる姿を想像した。


 「あんときは毎日のように遊んでたな。あいつが勉強だのやんなきゃいけないことが終わった後、部屋まで行って遊びに誘いに行ってさ」

 「オレはさ、実はあいつのことこっそり弟だって思ってんの。これ、秘密ね」


グイスが今までで一番優しく微笑みながら、しーっと人差し指を口に当てた。


キエリは、どうしてあそこまでグイスがフェリクスのことを大事に想っていたのかと思ったことがあったが、今となってはすっかり納得できる。


キエリも優しく微笑んでこくりと頷いた。


 「ほんで、実はここまで逃げてきたのはある目的があったからでもある」

グイスが塀にかかっている蔦をかきわけるとそこには人一人分の穴が開いていた。

 「こっから、外に出る。ちょっとわくわくすんだろ?」

 「うん、ちょっぴりわくわくする」


キエリは自身が体験したことがないはずの子供になったような気持ちがして好奇心といたずら心に胸がくすぐられた。


こうして二人は塀の穴から城の外に出て、城下町まで下りて行った。




 二人が城下町に下りてしばらくしたころ、フェリクスは書類仕事に追われていた。


キエリとの仲をどうにか挽回しなければと考えつつも、仕事が終わらなければ時間を作れないという板挟み状態であった。


 (キエリは大丈夫だろうか‥‥? 急に多くのことを詰め込ませて負担になってしまっている‥‥よな)

 (キエリに気持ちを伝える前からこんなことをしてしまうのは気がひけるが知識はキエリを守る武器になる。俺の事情に巻き込んでしまう以上、できることはしないと‥‥)


フェリクスが時計を見ると、キエリの授業はとっくに終わっている時間だった。


 「はぁ‥‥駄目だ。これ以上耐えられない。頭痛までしてきた‥‥キエリに会いに行こう」 


フェリクスは、仕事に区切りをつけ、執務室から外に出た。



 キエリが勉強部屋に使っている部屋に行って覗いてみたが誰もおらず、使用人たちにキエリを見なかったかと尋ねて庭園に向かったことまではわかった。


 (キエリ‥‥どこに行ったのだ? 庭園だとクイナに会いに行ったのか? グイスもいるだろうな)


すると、殺気を漂わせながら庭園を歩いているクイナが視界に入ってきた。


 「ク、クイナ、どうした?」


クイナはフェリクスをみとめるとすっと殺気が飛んで消えて、いつものクイナに戻った。


 「で、殿下、どうしてこちらに?」

 「キエリを探しているのだが、見なかったか」

 「キエリは、先ほどまでグイスさんと一緒にいました。グイスさんに用があって、僕も探していたのですが二人を見失ってしまって」


あんな殺気だったクイナがグイスに用があるということは、グイスが何かをしでかしたのだと容易に想像できた。


 「グイスさんは、キエリを町につれていくとは言ってました」

 「グイスと町に‥‥そうか、ありがとう」


フェリクスは、キエリの行先を聞くとすぐにその場から立ち去った。


 (オトナなお店だなんて言ったら、殿下がものすごく怒るだろうから、言わないほうがいいよね)

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