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【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
第一章

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作戦会議

 「キエリ、ここに居るの?」


温室で今日もキエリとグイスは練習をしていたところに、庭師のクイナがやって来た。


 「クイナ、こんにちは」


クイナは、キエリを見るとにこりと優しく微笑んで挨拶したがグイスのことは一向に見ようとしない。


 しばらく二人と会話してみて気づいたが、どうやらグイスとクイナは仲があまりよくないらしい。


 「おいっ、オレには挨拶なしかよ」

 「あぁ、グイスさんいたんですね‥‥」


クイナはグイスに対し、キエリが見たことのないほど冷たい笑顔をみせた。


 「なんだ、まだあの事怒ってるのかよ? 謝ったじゃないか?」

 「あれの前もその前も、あなたのせいでどれだけ植物が犠牲になったことか‥‥しかも、あの後も反省せずに飲んだくれてたじゃないですか?」

 「でもほら、今はもう飲んでないんだぜ?」

 「‥‥信じられないです」


さっそく言い合いを始めた二人にキエリはあたふたとしていたが、とりあえず喧嘩から別の話しにすり替えようと思った。


 「クイナ、それで何の用だった?」


クイナがキエリを見るとすぐに優しい表情に戻ったのでクイナって手先だけじゃなく、こういう部分も器用なんだなとキエリは思った。


 「キエリ、ずっとここでグイスさんと何してるの? 殿下に関係あることだとは思うけど」

 「グイスに歌を教えてもらってるのよ。王子様に音楽と踊りを楽しんでもらう音楽会を開こうと思って!」

 「歌に、踊り? キエリがやるの?」

 「うん、グイスも一緒にね」

 「グイスさんが‥‥?」


にこりとキエリは笑顔になったが、クイナはグイスのことを訝しむ目つきで睨む。


グイスはクイナに睨まれて身構えたが、クイナは何か言うことはなくキエリに視線を戻した。


 「僕もそのお手伝いを何かできないかな? 音楽はできないけど‥‥他のことなら何でも言って」

 「本当!? でも、いいの?」

 「うん、僕も殿下のために何かしたいから‥‥このあいだちゃんと、ではなかったけど、まだまともに殿下と会話できたんだ」


おそらく、キエリが水やりの手伝いを一緒にやったときに、じょうろを借りにクイナと話したのだろう。


王子に対して恐怖を抱いていたはずのクイナの表情は柔らかく、きっと良い会話ができていたのだとキエリは想像できた。


 「やっぱり、殿下に僕も幸せになってほしいって思うんだ‥‥一人じゃ無理かもしれないけど君とならできそうな気がするよ」

 「クイナ‥‥ありがとう」

 「お礼を言うのは僕の方だよ。君が来なかったら本当に殿下とあんな風に話すことなかったと思うし」


グイスがニヤッと笑いながら、ぽんっとクイナの肩をたたいた。


 「んじゃ、今日からクイナも共犯だな。よろしく!」

 「嫌な言い方しないでください」

 「相変わらずつめてーでやんの。キエリに見せた優しい顔はどうした!?」

 「グイスさんにする必要はありません」


キエリは、また喧嘩が始まりそうなのかと思ったが、同じ目的を持ったからか二人の距離が少しだけ縮まったように見えたので見守ることにした。


 「じゃあ、クイナは飾り付けを手伝ってくれないかな? お花で飾り付けたらとっても素敵だと思うの」

 「飾り付けか‥‥それならできると思う。やってみるよ」


キエリの「王子様を元気づけるぞ作戦」に頼もしい仲間が増えた。




 「そうか‥‥じゃあ、派手すぎないように白を基調とした花でそこから淡い色でまとめてみようかな」

 「クイナはすごいね。どんどんいい案がわいてくるなんて!」


クイナは、キエリと音楽会の飾りつけについて作戦会議をしていた。


グイスは、専門外だと言ってごろんと横になりながらそれを傍観していた。


 「そんなことないよ‥‥ただ、こういうのは好きみたいで‥‥あ」

 「また、いい案が浮かんだ?」

 「衣装のことなんだけど、たしか屋敷に衣裳部屋があったはず。そこから借りられないかな? せっかくの特別な日だもの」

 「そんなお部屋があったんだね」

 「うん、あ‥‥でも、そこの鍵を管理しているのはコンゴウさんだ。さすがに貸してくれないかな‥‥」


グイスが手をひらひらとさせて「そりゃ無理無理。ま、街におりて衣装でも借りてこればいいだろ」と諦めていた。


キエリは、うーんと考えた後覚悟したようにうんと頷いた。


 「わたし、コンゴウさんに頼んでみるよ。きっと貸してくれると思う。わたし、聞いてくるね!」

 「おい、本気かよ」


グイスとクイナが心配そうに顔を曇らせていたがキエリは思い立ったが吉日とばかりに、さっさと温室から出て行ってしまった。




 「コンゴウさん!」

 「キエリか今度はなんだ?」


屋敷の廊下で運よくコンゴウを見つけることができた。


今日もコンゴウの手元には王子宛の手紙があった。


 「あ、今日もお手紙が届いていたんですね」

 「あぁ、だが相変わらず殿下は手紙を読んではいない‥‥」


コンゴウは、始め合った時よりもずっとキエリに対する態度が軟化した。


叱られることもあるが、会えば王子の話しはできる。


 「そうですか‥‥でも、王子様も少しずつ変わっていますから。お手紙を読んでくれますよ」

 「そうだな‥‥」


コンゴウは、苦笑して手紙を見つめる。


手紙を読む可能性を否定しないあたり、コンゴウも王子の変化への希望が持てているのだろう。


そう考えるとキエリは嬉しくなって表情が優しくなった。


 「それで、聞きたいことはそれだけか?」

 「あ! そうでした、衣裳部屋の鍵を借りたいのですが‥‥可能でしょうか?」


キエリは、おずおずとコンゴウに尋ねてみたがコンゴウはふぅーっと息を吐いて、ポケットから鍵束を取り出してキエリの首にかけた籠にいれた。


 「なくすんじゃないぞ」

 「理由とかは聞かないのですか?」

 「お前が何かするとしたら殿下のためだろう? ほれ、さっさと行かんか」

 「ありがとうございます!」


キエリは、満面の笑みでお礼を言ってぺこりと頭を下げた。


クイナに報告して一緒に衣裳部屋に行こうと、早速駆け足で温室に戻っていった。


走り去るキエリの姿をコンゴウは少し困ったように微笑みながら見ていた。



 無事に鍵を借りられ、温室に戻るとクイナとグイスにはどんな手を使ったのか、とすごく驚かれた。


 クイナと共に衣裳部屋に行き、扉を開けてもらった。


衣裳部屋は奥にずらっと衣装がかけられており、魔道具のおかげできれいに保たれているらしく、衣装に汚れは見られない。


きらびやかなドレスおちついたドレス、燕尾服にタキシード、異国情緒あふれる独特な衣装と様々である。


 「すごいたくさん服があるね」

 「うん、何に使ってたのかな?」


クイナとキエリは手分けしてよさそうな衣装を探した。


 「クイナ、これどうかな?」


キエリが選んだのは、白色の生地に淡い青色の透き通る生地が重ねられたふんわりとしたズボンの衣装で、所々に星のように光る石が散りばめられている。


腰の部分にはリボンがついていて、踊るときに映えそうだった。


 「踊りやすそうだし、それにとってもきれい」


キエリは、きれいな衣装に見とれてうっとりしている。


クイナは、キエリと衣装を交互に見てみて、うんと頷いた。


 「うん、とってもいいんじゃないかな? この色も君の瞳とあっているし、とっても似合うと思うよ」

 「試しに着てみる?」

 「じゃあ、お部屋に戻って着てみようかな。それに、何度か練習しないと一人で着れるようにならないとだからね」


衣装を持って、誰かいないかときょろきょろしながら廊下に出た。


ここで王子に見つかっては、せっかくの楽しみが減ってしまうな、なんて考えていたら敢え無くエレドナとはちあわせになった。


エレドナに根掘り葉掘りキエリたちの計画についてきかれ、結局エレドナはお化粧担当に任命となった。

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