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陰府これに隨ふ  作者: 雀ヶ森 惠
1.Cast a cold eye On life, on death.Horseman, pass by!
20/60

不安定なfantasy(2)

 まるこめXの発言に咄嗟に一行は身を固くした。


「気を付けてこの地下空間、何がいてもおかしくないから」


 そうあやのは軽々しく笑うが、連れてこられた私とまるこめXは戦々恐々だ。一体何がいておかしくないというのだ?

 その先史時代の遺構とやらに巣食うのは未知の異形か、はたまたそれよりも恐ろしいあの虎追いなのか。


 不意に、何か、がjane_doeの足首を掴んだ。


「うわっ、何だ!?」


 其処にいたのは人間の成れの果て、と言ってい良かった。痩せこけた裸同然に襤褸一枚を纏い、伸びきった髪の間から落ちくぼんだ片眼だけがぎらぎらと光を放っている。おまけにひどい悪臭だ。


「そいつは都を放逐された罪人よ! 見てみなさい足首から先が切られているから」


 あやのが言うか早いか、まるこめXは目を覆った。

 私に縋り付いてきたその罪人の末路と思しきモノは足首から腐臭を上げ、暗がりでもわかるほど蛆が集っていた。


「マダム……どうか、どうかお慈悲を――」


 皺枯れて力のないその声を聴いてその罪人が女性と判った時、jane_doeは初めてこの世界に、『薔薇の復讐』に恐怖した。どうやらD.D.T onlinは予想していたような生ぬるい世界ではなく、人間性を捧げかねないような場であるということに相違なかった。


「マダム、どうか……水を、水を下さい」


 その罪人の女はいよいよ強くjane_doeにしがみつき、のしかかってきた。


「………………っ」


 どうしたら良いのだ? jane_doeは……銀鶏は焦っていた。

 だが多少はこのゲームに慣れたあやのはそこを切り拓くように割って入った。


「あやの!」


 あやのは必要な呪文を詠唱すると瞬く間にこの襤褸のような女は燐となって燃え尽きる。

 地下通路にはまるこめXの悲鳴が響いた。


 jane_doeはあまりのことに呆気にとられていたが、色々整理するのに三人には時間が必要だった。

 20分ほど誰も喋りもしなかった。

 その分あやのを責める声もなかった。そうして淡々と彼女は、あやのは話し出した――


 可哀想だけど引導を渡したわ。

 生かしておいても彼女はもう長くない、ここで死ぬ運命だったのよ……

 証拠にわたしのアライメントも殆ど動かないでしょう。

 しかし勘が正しければ彼女をこんな目に遇わせて、都から捨てたのはただ一人、

 この『がらくたの都』を裏から牛耳る残酷な一派が戯れにしたとしか――

 そいつは権力を持て余しすぎた幼稚な異常者だから……


――幼稚な異常者。そんな輩が権力を握っているというのか。jane_doeはますますこの小説世界を嫌悪した。


「でもその権力者ってやつをいつかは我々で成敗できるってことなのかな?」


「いい事言うねまるこめX、そうだよオンゲなんだからそういうことも最終的にはできなくっちゃね」


 そう言うとあやのはまるこめXの肩に手を置いた。


「大丈夫、その前にサ終なんて絶対にさせない。まだβテストだから課金できないけど正式実装されたら課金しよう」


「それは私もだ、あやの」


 jane_doeは力強く頷いた。

 どうやらこの小説世界にも無関心でいることは赦されないようであった。ラノベは馴染まなかったがこの本は読まねば――


「さて、ちょっと移動して雑魚狩りましょうか」



 地下通路は瓦礫に交じって現代風の商店の廃墟や雑居ビルの半壊したようなものが目立った。

 存外、失われた時代とは、あやのが言わずとも今の時代、現代なのかもしれない。


 暫く進むと聖堂騎士団の地下で見た異形が繰り返し現れた。


「ひょっとしてここは都の地下と繋がっている?」


 jane_doeは尋ねた。


「ご明察! 但しこんな小さい異形でないと通過できない孔によってね!」


 あやのは上機嫌で応える。


「それにしても今晩中に終わるかな……?」


「大丈夫よまるちゃん」


「まるちゃんて……」


 まるこめXは照れて頭をぼりぼり搔いた。


「もうすぐ目的に到着するから」


「目的地? そこにまるこめXの使役する獣が?」


「わたしが昼間単独で来て罠張っておいたから、ある程度の大きさのものしか掛かってないよ、ここ猟場になってるし」


「嘘!? この先? 楽しみだから見にって来る!」


 そう言ってまるこめXは一目散に駆け出した。


「もー、仕方ないまるちゃんはー」


「一人で行かせて大丈夫なのだろうか?」


 だが直ぐに、まるこめXは全速力で戻ってきた。


「どうした? 息を切らして」


「あはははは……何が掛かってた?」


 だが彼女の様子がおかしい。


「と、とrり」


「鳥が掛かってた? ハゲタカか何かかな?」


「待て、あやの。まるこめXの様子がおかしい。このまま我々が見に行っていいものか?」


 だがあやのは平気の平左で答えた。


「VRの世界なんだし所詮は虚構、ゲームの中で何が起ころうとそれは仮想現実、何? jane_doeびびってんの?」


「しかし彼女の様子があまりにおかしいくないか?」


「だm、いかnいほうがいいい」


 いつにも増してのミスタイプ。まるこめXは何かに怯えている……?


「ま、いいや罠仕掛けたのわたしだし気になるならjane_doeはしばらく待っててよ、見てくるから」


 jane_doeはあれきり口を利かなくなって放心しているまるこめXと二人で、あやのの帰りを待つことにした。すると――

 猛ダッシュであやのは戻ってきた。


「なんだあれはー!!!!!!」


「dkらみにくなっていったんdよ!!」


 この冬は終わらない。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読了。 シームルグでもかかっていたのかしら。 待て次回!(ぉぃ
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