『10年』 4
「……ダイアナにはここにいてもらっては困るのだが」
「…!」
私はディーケイを睨みつける。
ダイアナは私のためにここまできてくれたのだ。
それを引き離すようなことは絶対にさせない。
「……来てしまったものは仕様がないか」
「但し、ここで過ごす10年感、ダイアナには一切の魔法の使用を禁じる。これもアルトのためだ」
「わかったわ」
ダイアナは即答した。
ダイアナって、私のためって言えばなんでもしてくれるのではないだろうか。
嬉しいが、騙されたりしないか不安だ。
「さてアルト、ようやくだが本題に入らせてもらう。これから10年間、君にやってもらうこと……目指してもらう到達点の話だ」
随分と落ち着いている。
カッとなってしまっただけとはいえ、私は先ほど彼女を殺そうとした。
なぜこんなに冷静に話せるのだろうか。
……いや、わかっている。
おそらく今の私では、彼女に手も足も出ないだろう。
殺そうとしたところで返り討ちにされるだけ。
彼女にとって先ほどの出来事は、ただ子供が駄々を捏ねているようなものだったのだ。
きっと、彼女から学べることは多いだろう。
「教えて、私が何をすればいいのか」
ダイアナを、守れるように。
「君には、"完全な"究極生命体になってもらう」
「"完全な"……?」
「ああ、そうすることで君は世界の理から外れた存在となることができる。ダイアナと同じような、な」
世界の理を……外れる?
何を言っているのか、ちっとも理解できない。
「そ、そもそも私って既に究極生命体だと思うんですけど…」
「いや、君はまだ究極生命体として"完全"とはいえない。そもそも──」
「世界の創生より今日に至るまで、『究極生命体』という存在が"完全"であったことは一度もないんだ」
ディーケイは私を指差す。
「君は……究極生命体は、本来存在などするはずがなかった。世界の不具合によって生み出された概念なんだ。だから"そう"なった瞬間に世界から力を奪われる」
「例えば君は、生まれた瞬間から力の根幹となる魔力が極めて少なかった。生きていくことすら難しいほどに。そしてデスティ・ルークシオンも、究極生命体となった時から運命が捻じ曲がり、結果体の感覚を全て失うこととなった」
ディーケイはそれに「どちらもオーネによってある程度ましにはなっているようだが」と付け加える。
「だがその縁がなかったものたちは早々に死んでいった」
確かに私は魔力が少ない。
近くにあるダイアナと比べているせいで比較的少なく感じているだけだと思う時もあった。
だけど今まで会ったどの人も、私より一回り多い魔力を持っていた。
私も、何もしようとしなかったわけではない。
魔力を増やすまでにデスティと特訓だってしていた。
だけど少しも魔力が増えることはなかった。
今思えば、そういうことだったのだろう。
世界が許していないのだ。私が強くなることを。
それでも、できるのだろうか。
「私は、君ならばできると思っている」
「どうして…?」
「必要な力は、もう揃っているからだ。君の中に」
ディーケイは私の肩を掴む。
「そして、君には強くなりたいという意思もある。絶対に折れない理由も」
そうだ。
ダイアナのため。私には強くなることを諦める選択肢なんてない。
「わかった」
「私を、強くしてください!ディーケイ……いや、師匠!」
「あ、ああ、もちろん。それが私と、私の親友の望みだからね」
ディーケイの親友。
たびたびディーケイとの会話に出てくるが詳細はよく知らない。
聞こうとしてもいつもはぐらかされてしまう。
だけど、とりあえずその親友さんには感謝だ。
おかげでダイアナと、一緒にいることができるのだから。
「これから10年間、頑張ります!」




