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私、究極生命体⁉︎  作者: 石動昼間
第9章 獣の世界
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半人の少女たち 1

名もなき森の奥深く。


日が落ち暗闇に覆われたそこで、息を切らして走る2人の少女がいた。


「やっぱりやめておけばよかったんだよ!こんな時間にこんな森の奥まで入るなんて!」


「だってこうでもしなきゃ、アタシら半人は永遠にバカにされっぱなしだ!あの獣人どもを少しでも見返さなきゃ……ってきゃぁぁ!」


闇の中から伸びた腕が、少女を押し倒す。


「ラピちゃん!?どうしたの!?」


もう一人の少女は闇に目が慣れておらず、何に襲われているかもわかっていない。


ラピと呼ばれる少女も自分を押さえつける腕を振り払おうと必死だ。


彼女にはわかっていた。自分をおさえているのが一体何なのかを。


鼻を貫くような腐敗臭。体温をまるで感じない腕。


"屍獣人(ゾンビ)"だ。


「この……!離れろ……!うあぁ…!」


腕を抑える力が強くなる。


彼女は悟った。屍獣人は彼女を拘束するために押さえつけているのではない。


彼女の体を壊すために腕から潰そうとしているのだと。


メキメキと骨が軋む音がする。


体が壊れていく感覚に、声にすらならない悲鳴をあげる。


もう一人の少女はラピに何が起きているかもわからないまま恐怖で一歩も動けないでいる。


やがてボキッという鈍い音と共に屍獣人は腕を彼女の腕から離した。


しかし、それでは終わらない。


今度はその腕を彼女の首元へと向ける。


その腕が首へと触れた瞬間、彼女も自分がどうなるのかを理解した。


「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくないぃぃぃぃ!!!」


そんな言葉が屍獣人に届くはずもない。


その腕は無慈悲にも彼女の首を絞める。


もはや声すら上げられない。もがく腕もない。


彼女の人生はここで終わりだ。そう、確信していた。




だが気がつくと、首を絞めるその腕に力は入っていなかった。


脱力した屍獣人の体がどさりと彼女の体に被さる。


何が起きたのかわからないまま困惑している彼女の耳に声が入る。


「あなた、大丈夫……じゃなさそうだね」


助けが来たのだと。そう気づいた彼女は、そのまま意識を失うのだった。




―――




どうしよう。


森の中で変なのに襲われてたからとりあえず助けたけど、気を失ってしまった。


もしかして、私の魔法が当たってしまったのだろうか。


いや、そんなはずはない。だって10年も修行したんだ。


今更力加減を間違えて、周りを巻き込むなんてことは絶対にしない……というかしたらディーケイに大説教されてしまう。


というかよく見たら怪我をしているみたいだ。


腕から血をたくさん流している。


どうやら気を失った原因はあれらしい。


とりあえず治してあげるか。


私は上に乗っている変な死体をどかして彼女に手をかざす。


「すぐに治るからね」


治癒は得意だ。これくらいなら完全に元通りにできるだろう。


思った通り1秒もしないうちに、折れていた骨も、破れていた皮膚も元通りになった。


「さて」


とりあえずここにいても仕方ないし、もう一人も連れてディーケイの家に帰ろう。


「立てる?」


座り込んで震えていた少女に手を伸ばす。


彼女は震えながらも私の手を取り、自分の足で立ち上がった。


「じゃあ行こっか」


気を失ってる彼女を背負うと、私は前に手をかざす。


『世界よ、歪め』


そう念じると目の前の何もない空間が裂ける。


世界の理を歪ませて、この場所とディーケイの家を繋いだのだ。


正直歩いて行けない距離ではないのだが、彼女たちにはこれでひとっ飛びしてもらった方が安全だろう。


急に現れた歪みに彼女は警戒しているようだが。


「ささ、早く早く。さっきみたいなのがまたきちゃうよ」


そう言って警戒している彼女の背中を押し、半ば無理やり歪みの中へと押し込んだ。

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