『10年』 1
ディーケイに死ぬほどお叱りを受け、夕食抜きの罰を受けてから一晩が明け、明朝。
私はディーケイに連れられ、書庫の地下室へと来ていた。
「ねえディーケイ、まさか私に罰としてしばらくここで暮らせなんて言わないよね…?」
本の傷みを減らすためか、それなりに手入れはされているものの、陽の光が届かない地下室はかなり冷え込んでいて暗い。
それにダイアナもいない。
ここで過ごせと言われたら私は全力で抵抗するだろう。
「本来ならばそういった罰も与えてやりたいくらいなんだがな。君を閉じ込めてしまったらダイアナが暴れかねない」
「あはは…」
じゃあなんで私はこんなところに?
私がそう聞こうとするよりも早く、ディーケイが動いた。
ディーケイが床に手をかざし魔力を込める。
すると、床に紋様が浮かび上がり怪しげに光り始めた。
「我は原初なり。 この者に試練を。」
何…?ディーケイはなんて言ったの…?
私が困惑していると床の光がさらに強まっていき辺りを覆い尽くした。
私は思わず腕で目を覆う。
やがて光が消え、目を開けると、そこにはさらに地下へと続く階段が現れていた。
「こっちだ」とディーケイは手招きをして、階段の先へと進む。
逆らう意味もないため、私も後に続く。
明かりのない階段をそろりそろりと降りていく。
もう階段を降り始めて10分はたっただろうか。
「ねえディーケイ、これって一体どこへ続いてるの?」
「君にとって、必要な場所だ」
むう。なかなかに手強い。
いつもは聞いたことは大体答えてくれるのだが、今日はそうもいかないらしい。
「もうすぐつく。暗いのは我慢してくれ」
もうすぐ、とは言われても、進む先は前にいるはずのディーケイすら見えない真っ暗闇だ。
ちょっと進んだくらいで別の場所に着くとは思えないのだが……
そう思ってまもなく、変化が訪れた。
「あれ……」
進む先に段差を感じない。一番下についたのだろうか。
「ディーケイ、ひょっとしてついた?」
「ああ、今灯りをつける」
ディーケイがそう言うと、前方に青白いうっすらとした光が灯る。
おそらくディーケイの魔力だろう。
その光は球体の形を成したと思いきや、そこから一つの雫が床へとこぼれ落ちた。
するとこぼれ落ちた雫はみるみるうちに広がっていき、私たちの周りに光を灯していった。
言葉が出なかった。
魔力が光を灯すその光景に、ではない。
その光によって照らされた空間、そこはまるで──
「これは、世界そのものだ」
ディーケイが告げた。
「私が生み出した、小さな世界」
「生み出した……?ディーケイが、ここを……?」
目の前に広がる空間は、おおよそ1人の存在が創ったとは思えないほど広大だった。
「名を"試練の間"という。君にはここで──」
「10年ほど、修行をしてもらう」
…………え?




