アルトとレワルド
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第二世界ビーストピア牙王国南部、近くには小さな集落が一つ。
なんてことはないありふれた田舎の片隅にある森の奥のさらに奥。
まるで木々が覆い隠そうとしているような濃い影の中に、その家はある。
そこでは、金色の髪に巻きツノを生やした小さく可愛らしいメイドと、執事服に身を包んだ金色の瞳を持つ垂れ耳の少女が出迎えてくれるのだ。
丁重に迎えられた先に待つのは永劫の時を生きる狼の賢者。
彼女に会うことが許されたものには、その膨大な知識の中からなんでも一つ、知ることが許されるという。
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「なんて触れ書きはどうだ、ディーケイ!きっとこの寂れた書庫も一気に人で溢れかえるぞ!」
赤茶色の鬣を貯えた、大男が部屋が軋むほどの大声で話す。
「却下だ。私は訪れたもの皆に知識を分け与えるほどお人好しではないし、そもそもここを広めること自体私は望んでいないのだが...」
ディーケイはそう淡々と返すと私に向かって指を曲げ合図を出した。
その合図を見た私は、準備されていたポットからカップへとお茶を注ぎ、2人のもとへと持っていく。
「どうぞ」
私は大男にただ一言告げて、下がろうとする。
だが、それを読んでいたのか大男は私の腕をがしりと掴んで引き止める。
「まだ何か、御用でしょうか。レワルド陛下」
「なんだよ、堅苦しいな。初対面の時に俺に向かって魔法ぶっ放したのは、ありゃ別人か?」
だめだ。
少しの我慢だと思ってすぐすませて出て行こうと思っていたけど、流石に我慢の限界だ。
いまだに私の腕を掴み続けている大きな手を無理やり引き剥がし、逆にその腕を握り締め返す。メキメキと変な音が鳴るくらいに。
「あのね!私はあなたのことが初めて会った時からずっと大っっっっ嫌いなの!だからディーケイに言われたことだけさっさと終わらせてダイアナのところに行こうとしてるのに!なんでわかんないかなあ、大体あの時だってあなたがダイアナに──」
「アルト、そこまでだ」
ディーケイは私の肩に手を置き、「手を離しなさい」といって大男──レワルドの方を指差す。
「もう観念している」
よく見るとレワルドは空いていた左腕を震えさせながら上に挙げ、「悪かった、降参だ」と頭を下げていた。
「アルト、なぜ君はレワルドのこととなるとこうも我を忘れてしまうんだ…」
「なぜって、ディーケイも知ってるでしょ!こいつはあの時──」
──そう、時は遡ることひと月前。
ディーケイの家で使用人兼弟子としての生活にも慣れ始めていた頃だ。
「明日、この家に来客が来る。わかっているとは思うがいつものように粗相の内容に」
ディーケイの家には度々来客が来る。
そしてそのどれもが国の重鎮ばかりで一応使用人ということになっている私はその度に気を抜かないよう釘を刺されていた。
言葉遣いや所作など注意されることは多いものの、大きなやらかしも少なく、今まではなんとか乗り切れていた。
今回の来客、レワルドもなんとかなるだろうと、そう思っていた。
だが、結果として私は全力の力でレワルドを吹き飛ばし、全治1ヶ月の大怪我を負わせることとなってしまった。
衝動的なものだった。
その光景を見た瞬間、頭の中が真っ黒に染まり、気づいた時には魔法を放っていた。
その時私はレワルドを迎えるためにダイアナと共にその到着を待っていた。
少し待つと、レワルドは護衛を1人もつけないまま歩いてやってきた。
そして私たちが歓迎の言葉を述べようとした時だ。
レワルドは、ダイアナの前へ立ちこう言った。
「俺の女にならねえか」と。
そう、レワルドはあろうことか私の目の前で、ダイアナを口説きやがったのだ。




