カトラの言葉
オーネはあるはずのものがなくなった眼窩に魔力を灯らせ、その魔力を通して私を見下ろしている。
「ワタシがなぜアルトを作ったか、デスティにはわかるか」
以前会った時よりも、はるかに冷たい口調で話すオーネに思わず身震いをしてしまう。
私が何も言えず立ちすくんでいるのを見て、オーネはわからないと判断したのか、話を続けた。
「究極生命体、あの力はワタシが求めていた力そのものだった。その力を持つ君を見つけた時から、アルトを作り出すことは心に決めていた」
「つまり、究極生命体の力を自分が完璧に制御するために、あんな回りくどいことをしたってことですか。カトラもあんな目にあったのに」
「彼女に関してはワタシも悪いと思っているよ。だが必要な犠牲だった。お陰で君はワタシに罪の意識を抱き、みずから力を差し出してくれただろう」
オーネは笑いながらそう話した。
オーネはカトラのことも必要ならば使い捨てる駒としか考えていなかった。
私のことも、ただの能力としか見ていなかった。
カトラからの言葉を聞いていなければ、きっと私はオーネのことをそう理解し、彼女の本質を知ることもなかっただろう。
私は彼女の奥底にまで響くように、大きく息を吸って叫んだ。
「オーネのバーーーーーーーーーーカ‼︎‼︎‼︎」
思いがけない言葉にオーネは思わずたじろいだ。
困惑した表情を浮かべるオーネに私は続けて言葉をぶつける。
「オーネのバカ!私はオーネの苦しみを分けて欲しいって言ったのに!結局オーネは一番苦しいことは全部自分で抱え込んで!なんでそんな嘘を言うの?」
さっきの言葉がオーネの真意ではないことはわかっている。
彼女は私を、オーネを裏切った私を殺さなくて済むように、私を突き放そうとしたのだ。
私が彼女の言葉を信じていないことが伝わったのか、オーネは口調を変えて私に反論する。
「ならばなぜ、君はカナデに…神々についた!ワタシだって君を殺したくはない!だが、今の君にワタシの弱さを見せるわけにはいかないんだ!神々の側についた君はワタシの弱さを知っていた。ならば見せた弱さを嘘にしてしまうほかないじゃないか!」
オーネは言葉を、というより感情を吐き出した。
私に眼をくれたあの時すら、完全には漏らさなかった感情を、彼女は全て曝け出して私に向けた。
「デスティ、君を殺したくはない…ワタシのところへ来てくれ…!」
オーネは私に手を差し出した。
その震えながら差し出された手は、かつて私に差し伸べられた救いの手とは違い、ひどく頼りないものだった。
きっと今度は、私が彼女に救いを与える番だ。
「ありがとう」
私は告げる。カトラから託された言葉を。
「あの日書庫から私を見つけてくれて。恐れられて1人になった私に居場所をくれて」
「ま、まってくれ。君は、何を…」
「カトラからの、言葉だよ」
あの時カトラは言っていた。
「──それはね、私はオーネを、あの日書庫から見つけてくれたあなたを、みんなから恐れられて1人になってしまった私に居場所をくれたあなたを、ティーやスライ、デスティに出会わせてくれたあなたを──」
「──愛しています。そう、伝えて」
その目には涙を浮かべ、カトラはカナデの中へと戻っていった。




