元究極生命体デスティ・ルークシオン 14
オーネがこの世界を消しにやってくる。
そのことをカトラが伝えてくれたのはおそらく、私だけでなく、私の大切な人も逃げることができるようにするためだろう。
私は姉と話をするために王城へと赴いた。
―――
姉は休憩を取っていたらしく、すぐに見つかった。
私の姿を見るなり、笑みを浮かべ私の方へと近づいてきた。
「どうしたんだデスティ。任務は順調なのか」
「…うん、順調だよ。それで…実は、お姉ちゃんに話したいことがあって……ここだと話しづらいから、一緒に外まで来て欲しい」
そう言って私は無理矢理姉を引っ張って城の外へと連れて行った。
「どうしたんだ急に、そんなに急がなくてもデスティのためなら時間くらいとるさ。だからゆっくり話してくれ」
姉は優しく微笑みかける。
「…あのねお姉ちゃん、実は…」
わかっていた。
「この世界、ファーストワールドがもうすぐ消えてしまうの」
姉にこの言葉は決して届かない。
「だから、お姉ちゃん。私と一緒に逃げよう」
なぜなら姉の周りはもうすでに真っ黒な魔力でいっぱいだから。
天使の魔力に侵された人間は、神の魔力に逆らえない。
「デスティ、それは無理だ。この世界の外には敵がいる。それを倒すことが私たちの使命なんだ、それに──」
姉の魔力はどんどん黒く染まっていく。
「デスティ、何故お前が外の世界のことを知っているんだ。まさかデスティが行方不明になっていだ間、もしかして外の世界にいたのか?それならば話は別だこのことは国王様に報告しなくては。さあ、行こうデスティ、一緒に国王様の元へ。大丈夫だ、全て正直に話せば国王様なら許してくださる。だからデスティ」
黒く渦巻くその魔力は私の元へと絡み付いてくる。
「こっちへおいで」
だめだ。
その手を取ってしまいそうになる。
姉へと差し出す私の手が姉の手を掴もうと言うその時。
横から別の手が私の手と、姉の手を同時に掴んだ。
「横からごめんね。あなた騎士団長様のインスティちゃんでしょ。それとデスティ」
カナデは掴んだ手を振り上げて言った。
「2人を私の学校の先生としてスカウトしにきました!」
―――
その日の夕暮れ、カナデと私は学校の、寮の中で話をしていた。
「…昼間はありがとう、カナデ…さん。お姉…インスティから助けてくれて」
「いえいえ、こっちこそ、教師の仕事受けてくれてありがとうね。って言ってもデスティには2人だけを教えてもらおうとしてるんだけど」
「…私、人に何かを教えたことありませんよ」
私がそう言うと、カナデは笑って答える。
「大丈夫、そこにある私が作った教師のいろは第1巻から第10巻まで読めば、バッチリよ」
そう言ってカナデは一冊一冊がやけに分厚い本の山を指さした。
「…ずいぶん大変そうですね」
「デスティなら楽勝よ。カトラに鍛えてもらってたんでしょ」
確かにあの特訓の日々を思えば、分厚い本10冊なんて大したことはないかもしれない。
「ねえ、デスティお願いがあるんだけど。いいかしら」
どこか遠くを見つめながら言った。
「あなたのところにやってくる2人の生徒、その2人のこと、私の代わりに守ってあげて欲しいの。私は多分、国王の命令で十分に守ってあげられないから」
「…わかった。ちなみにその2人のこと、聞いてもいい?」
「いいわよ。まず1人目は、とっても強い子。ううん、強く見せている子ね。自分の弱い部分を見せないよう必死で頑張ってる子。あなたもよく知ってる子よ」
私は1人の女の子を思い浮かべた。
その金色の髪の子は、確かに強く見えて、もろく、壊れてしまいそうだった。
「…だけど、ダイアナはもう凄く強い子だと思うよ」
「そうね。だけどあの子が助けを求めた時は、助けてあげてね。それともう1人は…なんていったらいいかな、一言で言うと、あなたそっくりね」
私にそっくり。
それはまた、なんとも面倒くさそうな子だ。
「あの子に関しては、私じゃなくてカトラから伝えたほうがいいわね」
そう言うと、カナデの魔力の質が変化した。
「1日ぶり、デスティ。まだちゃんと回復してないから長くは話せないけど、たしかにあの子のことは話しておかなくちゃいけなかったわね」
カトラはそう言うと、私の目を指さした。
「デスティの目、オーネにあげちゃったでしょ」
私は頷く。
「オーネはそれを元にして、究極生命体の力を持ったもう1人のデスティを創っちゃったの。第二の究極生命体なんて名付けて」
私の目がそんなことになっていたとは知らなかった。
カナデが言っていた私に似ているとは、中身のことではなく、見た目のことだということか。
「ねえ、デスティ。私からもお願いがあるわ。もし、オーネに会えたら私からの伝言を伝えて欲しいの」
「…いいけど、どんな?」
「それはね────」
カトラはそう言い残すと、カナデの中へと戻って行った。
―――
そして今、目の前にはその言葉を伝えるべき相手、オーネがいる。
カナデに守ると約束した1人がいる。
2人との約束を守るため、私はオーネへと踏み出した。




