元究極生命体デスティ・ルークシオン 13
私はダイアナに監視役としてついて行った。
彼女の親が何をしたのかは、姉から大体聞いた。
そして、今彼女の家がどう言う扱いを受けているのかも、騎士団の人たちの話を聞くうちにある程度理解していた。
彼女の家である食堂に着くと、案の定家は荒らされ酷い有様だった。
それでもダイアナは明るく振る舞い、暮らしていくためと、家の掃除を始めた。
過度な干渉は避けろと言われているため、あまり手伝うことはよくないのだろうが、流石に放っておけず、瓦礫の山を破壊の力を使って消し去っておいた。
数時間の作業ののち、ダイアナは店の扉にOPENの看板を掲げた。
当然のことだが、客は全くやってこない。
それでも彼女は笑顔をたやさず、いつ客が来てもいいようにと絶えず、店を整えていた。
開店して、数時間が経った頃、遂に店の扉が開けられた。
ダイアナは満面の笑みを浮かべそのお客さんを見た。そしてそれが以前からの常連であったことを私に教えると注文を取るためその人のもとへ小走りで向かった。
しかし、様子を見ているうちに、その客がダイアナにつかみかかり、怒号を浴びせた。
これはまずいと思い、私は必死にその客を引き剥がす。
その客はそれでも抵抗しようとしたため、少し魔力を練りその客の真横に放った。
すると怯えた客は逃げ帰って行った。
振り返ると、ダイアナは倒れてしまった椅子と机を直していた。
「…大丈夫?」
そう聞くと、ダイアナは震えながらも笑顔を続けて「大丈夫よ」と言った。
しかしその目からは、先ほどまであった微かな光すらも失われてしまっていた。
―――
それから1ヶ月ほどが過ぎたある日、ダイアナがベッドに入り寝静まった頃、店の扉が叩かれた。
いつもの嫌がらせかとも思ったが、それにしては音が小さく、寝ているダイアナへ配慮しているように感じられた。
扉を開けると、そこには私が来ることをずっと待ち望んでいた人物、カナデがいた。
「……!カナデ…さん、どうしてここに」
するとカナデは何も言わずに中に入ると椅子に座った。
そして私にも座るように促した。
「私のことは、もう聞いたんでしょう?ならもういいかな」
カナデはそう言うと、胸に手を当てた。
すると、カナデの魔力の質が一気に変わり、私のよく見知ったものへと変化した。
「久しぶりね、デスティ。元気だったかしら」
「……カトラ……なの……?」
私が問いかけると、カナデ──カトラは頷いた。
「心配かけてごめんなさい。デスティにこんな危険な目に編ませてしまって……」
「…そんな、謝らないで。カトラは私のせいで捕まっちゃって、今こんなことに…」
私がそう言うと、カトラは首を横に振った。
「いいえ、ちがうわ。あの時私たちはみんな問題はないと思って行動したんだもの。責任があるって言うのならみんな同じだけあるわ」
「…それでも」
そう食い下がろうとする私をカトラは抱きしめた。
「ごめんなさいね、こんなに無理をさせて。あなたの先生失格ね。もう大丈夫。私はこうしてちゃんとここにいるから」
カトラの優しさに、私の想いが溢れた。
カトラの胸の中で私はひたすらに泣いた。
カトラをこんな目に合わせてしまったことを、何度も何度も謝って、その度にカトラが大丈夫だといってくれて。
気づくともう日が昇り始めていた。
―――
「落ち着いた?じゃあ時間もないし用件を手短に話すわね」
カトラはそう言ってわたしから少し離れると、話を続けた。
「まず初めに、私の今の状況なんだけど、今私はカナデの二つ目の人格として存在しているの。だから普段はカナデの中でカナデが得た情報なんかを整理して暮らしてる。次に、元に戻る方法なんだけど、おそらく無いのよね」
「…え?無いって、でも国王は私が手伝えばできるような口ぶりだったけど…」
私がそう言うとカトラは少し呆れた顔になった。
「ハッタリに決まっているじゃない。あのエセ神国王、口だけは達者なのよ。あんな奴の言うことを信じる必要はないわ。それで、最後。これが一番大きな問題」
カトラは真剣な顔つきになる。
「オーネが動いたの。おそらく私の力が敵に渡ってしまったことを考えて、この世界ごと消してしまうつもりみたい」
「…オーネが⁉︎この世界ごとって⁉︎」
「そのままの意味よ。このファーストワールドごと、オーネは消してしまおうと考えている。前からその作戦は候補に上がっていたの。今回の私の件でついに実行を決めたみたい」
「…カトラはどうやってその情報を?」
「ただの推測よ。ただオーネが動いたのは確実ね。おそらくだけど、この世界にスライが来てる」
懐かしい名前。しかし懐かしむ余裕など今はなかった。
「…どうにかして防ぐ方法はないの」
私がそう聞くと、カトラは複雑な顔をする。
「私は……この世界が消えてもいいと思っているから」
「どうして」そう言いかけたが、思いとどまる。
考えてみれば当たり前だ。
カトラはこの世界に思い入れなど何もない。
自分を捕らえて長い間閉じ込めた敵の本拠地だ。
「だけど、私はこの世界に消えてほしくない人もいる。デスティや……このカナデもその1人。だから、デスティにはこのことを伝えておきたかった」
そう言うと、カトラの魔力に揺らぎが生じた。
「ごめんね、もう魔力が限界みたい。また魔力が戻れば少しだけ顔を出せると思うから。じゃあまたねデスティ。元気に生きてね」
そう言ってカトラの魔力は、元のカナデの魔力へと形を戻してしまった。
「話はできたかな?それじゃあ私の方からも話がある、というか確認なんだけど」
元に戻ったカナデはそう言うと勢いのまま続ける。
「ダイアナちゃんを私の学校に入学させるって話、してくれたかな?」
カナデが創ったと言っていた異生命体のための学校。
今のダイアナをこの環境から切り離せるのならちょうどいいかもしれない。
「…はい。先日伝えました。本人にも今のこの状況は辛いと思いますし、いい案だと思います」
私がそう答えると、カナデは笑いながら腕を振って帰って行った。




