元究極生命体デスティ・ルークシオン 9
「…第二世界、ビーストピア……」
つまり、目的地のファーストワールドとは隣り合わせの世界ということだ。
数ヶ月かかってしまうことも覚悟していたが、それならばきっとそこまで時間はかからない。
まずはティーの言っていたゲートを探さなければ。
そう思い私はすぐにでも出発しようと、おそらくこの家の出口であろうドアに向かって歩く。
すると、私の手がディーケイによって掴まれた。
「どこへ行く気かな。君はさっきまで死にかけてたってことを忘れたわけじゃないだろう」
ディーケイはそういうと、私が元々いた部屋を指差す。
「あと5日、いや1週間は休みなさい。そうすれば私がファーストワールドへのゲートへ案内しよう」
「……!知ってるんですか!ゲートの場所を!教えてください、私は一刻も早くファーストワールドへ...」
ディーケイに詰め寄ろうとするが、突然力が抜け床に座り込んでしまった。
「言っただろう。君はついさっきまで生死の狭間をさまよっていた。見つけたのが私でなければ死んでいたような状態だったんだよ」
「…でも、私は……」
早くカトラを助けに行かなくてはならない。
そう伝えようとする私を遮り、ディーケイが言葉を発する。
「このまま向こうへ行っても、君はまた倒れて動けなくなってしまうだろう。私もこの世界を離れるわけにはいかなくてね。だからここにいる間に治していってほしいんだ」
私はその言葉に反論出来ずに頷いた。
ディーケイはそれを見て微笑むと、私に肩を貸してベッドまで連れて行ってくれた。
それからの1週間、ディーケイはいろいろなことを教えてくれた。
この世界では獣人が大多数を占めていて、人間はほとんど住んでいないこと。
ディーケイはこの森の中にある家、正確には書庫らしいこと場所に普段から住んでいること。
そして、数年前にファーストワールドの人間がこの世界に攻め込んできて、今ゲートの周りでは激しい戦いが起こっていること。
何故そんな危険を犯すのか、聞くとディーケイは決まって「私は強いからね」と言うのだった。
私はその雰囲気にオーネと似たようなものを感じ、少しの安心を覚えた。
そして1週間が経った日、私はすっかり元気…とはいかないが、突然力が抜けたりするようなことはなくなった。
だが、なぜか変わらずバランス感覚は安定せず、時々ふらついてしまうことがあった。
立ち上がると何か妙な違和感が襲ってくる。
1週間のうちに薄々気づいていたのだが、どうも私の体がかなり成長してしまっていてバランスが取れないのだ。
地面からの目線の距離にどうしても違和感を感じてしまう私にディーケイは慣れるしかないと言った。
ディーケイに連れられ私たちは家を出て、森を抜けた。
森は思ったより深くなく、2時間程度で抜けてしまった。その後は何故か近くに見えた街の周りを迂回しながら草原を抜け、丘を登り、大きな洞窟にたどり着いた。
「ゲートはこの奥だ。おそらく今は誰もいない。急ぐぞ」
ディーケイは何故かそうほぼ確信を持って私の手を引いた。
かなり奥の方まで進むと、何やら鼻にツンとくる匂いがしてきた。
その匂いは奥に進むにつれ濃くなっていき、さらに進むとその正体がわかった。
そこには無数の獣人や、人間の死体が転がっていた。
ディーケイが言っていたように戦いが起こったと言うのは本当だったらしい。
あまり見ないようにして私たちはさらに奥に進んだ。
そこからさらに数時間、ひたすら洞窟を進むとついにゲートに辿り着いた。
たしかにその様子は、あの泉のゆらめきとよく似ていて、洞窟を枠にした鏡のようだった。
ディーケイはゲートを見て、その後私を見て微笑み言った。
「さて、ここまでで私の役目は終わりだね。君は向こうでやることがあるんだろう。死なない程度に、頑張ってね」
ディーケイは私の背中を押して私をゲートへと近づけた。
これから私が命をかけに行くといったら、ディーケイはどう思って何を言ってくれるのだろうか。
ディーケイもまた、私の命の恩人だ。
その救われた命をこれから捨てに行くことに、若干の後ろめたさを感じつつも私はディーケイに手を振り、ゲートの向こう側へと歩みを進めた。
そういえばディーケイは結局私をどうやって助けたのかは教えてくれなかった。
別にどうしても知りたいというわけではないのだが、もしまた会うことができたなら、今度はしっかりその話をするのも悪くないかもしれない。
そう思いつつも、そんな時は来ないんだろうなとディーケイに見えないように流した涙を拭った。




