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私、究極生命体⁉︎  作者: 石動昼間
第5章 デスティ・ルークシオン
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元究極生命体デスティ・ルークシオン 8

ティーに押されて飛び込んだ泉の中。

そこは、以前見たものとは似ても似つかない空間だった。


「…なに、これ」


以前行った時は泉に入るとすぐにファーストワールドへとたどり着いていた。

しかし私が今いる場所は、おそらく世界ですらない。


周りの景色はあやふやで、自慢のようなものも存在せず、私は川の流れに乗るように進み続けているようだった。


このまま進んで果たして大丈夫なのかとも思ったが、動いても進んでいる方向すら変えられないのでどうしようも無い。


「…ちゃんと着きますように」


少しの不安に駆られながら、私はただ願うことしかできなかった。




―――




どのくらい経っただろうか。

太陽が昇ったり、沈んだりするわけでもないこの空間では時間の感覚すらつかめない。

だがおそらく1日以上は経過しているだろうと言う確信はあった。

不思議とお腹が空いたりすることはなく、体調にも変化はなかった。

ティーは私の力は失われていくといっていたけど、もしかしたらその力の残りがこうしているのかもしれない。


だとしたら、あんまりこの状況が長引くのはまずいかも……と考えていた最中、少し先の方に泉と同じような光のゆらめきがあることに気づいた。


私はひとまず出られるであろうことに安堵すると、再び気を引き締めた。


「…絶対に、カトラを助ける」




―――




ゆらめきを抜けると、そこは薄暗い森の中だった。


しかし、以前繋がっていた場所とはまた違う森のようで、どちらへ進めばいいのかすらわからない。


「…怖いけど、見るしかないよね」


そう決意すると私は目に魔力を集中させた。

さっきまではただ無秩序に頭の中に流れてくる情報として気にしないようにしていた無数の映像の中から、必死に自分と、今いる場所の情報を探す。


「…う…これ、やっぱりきついかも」


日常的に流している分には少し慣れたが、やはりその情報たちに直接意識を向けるとなると、脳にかなりの負担がかかってしまう。


それでもここから抜け出して先に進むためと、必死に探した。


「…ここでもない……こっちでも……」


探し続けて、早くも私の体の方に限界が来てしまった。


視界が揺らぐ。


同時にバランスも保てなくなり、地面に倒れた。


流石に危険を感じて情報から意識を切り離すが、視界はどんどん揺らいでいき、さらには赤く染まっていった。


どこから血が出ているのかも分からず意識は遠のいていく。


もしかして、死ぬのかな。


命をかけて、恩人を救おうと決めていた。

そうすればきっと、今苦しんでいるその人が助かって。

私の命で幸せにできると思っていた。

だけど現実は、私の命なんてとてもちっぽけで、その人を救うなんてとても出来なかった。


「…まだ、死にたくないなあ」


そう呟いても、どうにかなるわけじゃない。

どんどん体から力は抜けていき、急な寒気にも襲われる。

オーネたちにもらったこの命、できればみんなのために使って終わりたかったけど、どうやらできそうにない。


諦めかけたその時、草と土を踏む音が僅かに残る意識の中に入ってきた。


その瞬間私の中に少しだけ力が戻った気がした。

まだ終われない。

そう思い必死で力を振り絞り声を出す。


「…助けて……!ここに……います……!」


それが最後の力だった。

私は意識を失った。




―――




暖かい。


パチパチと火の燃える音がする。


あまりの心地の良い感覚に、私はやっぱり死んでしまったんだとも思ったが、どうやら手足の感覚もしっかりある。


どうやら生きているらしい。

最後に振り絞ったあの声は届いたようだった。


私は小さな部屋の中でベッドに寝かされていた。


火の音は扉の先、隣の部屋からしているようだ。


火をつけたまま家を留守にするとも考えにくいし、おそらくそこにいるだろうと、私はお礼を言う為、助けてくれたであろうこの家の主人のところへ向かった。


扉を開けると案の定そこは暖炉のある部屋で、暖炉の前には椅子の腰掛ける人がいた。


その人物はすぐにこちらに気づき声を発した。


「やあ、起きたかい。体調はどうかな」


落ち着いた女性の声だった。


しかし、私はそれにすぐに反応することができなかった。


なぜならその人物の姿は私とは大きく違い、人の姿をしていなかった。


その顔や手足、おそらく見えていない部分も灰色の毛で覆われて、その口には鋭い牙が生えている。


まるで狼にしか見えないその人物は私が呆然としているのを見て、何かを察したのか頭をかいた。


「ああそうか、君はそっちの子だったんだね。ごめんね、驚かせてしまって」


そう言うとその人物は胸に手を当ていった。


「私は獣人のディーケイ。君はファーストワールドから来たんだろう。それなら獣人に怯えてしまうのも無理はない。あそこでは外の世界の情報は秘匿されているからね」


ディーケイのその言葉に私は思わず問いかけた。


「…外の世界、ってことはここはどこなんですか!私、ファーストワールドに行かなきゃならないんです!教えてください!」


ディーケイは私の勢いに動じることはなく答えた。


「ここは第二世界、ビーストピア。獣たちの……楽園さ」

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