元究極生命体デスティ・ルークシオン 6
扉の向こう側にオーネの魔力が見える。
いつも小さくしまい込んでいるその魔力は、ところどころに綻びが見え、小さく揺らめいていた。
私は扉を開けて、部屋に入った。
「オーネ、いる?」
返事はすぐに帰ってきた。
「ああデスティ、君か。なんの用かな」
私は事前にティーに言われた通りに言葉を並べる。
「私も、カトラを助けたい。オーネの力になれるかわからないけど、何か手伝わせてほしい」
オーネはその言葉にやれやれと言うと、立ち上がり私の方へ歩いてきた。
「ティーに何か言われたかい」
「……なんでそう思うの」
「さっき別れる前の彼女の様子が、何やら危うかったからね。そう言う行動をとるかもしれない、と思っただけさ」
私はその言葉を聞き、続けた。
「オーネが、苦しんでるって、そう聞いた。今こうしてみたら、私でもわかる。今のオーネの魔力はとても不安定で、今にも崩れてしまいそうだから」
「だから、ワタシを助けたい。と、そう言うことかな」
私はコクリと頷いた。
「……たしかにワタシは今無理をしているのかもしれないな。だが、この苦しみは今まで歩んできたワタシの歴史を見ても、実に些細なものだよ。だから、そこまで気にするものでもないさ」
そのオーネの言葉は先ほどまでのオーネの言葉とは違い、とても硬く感じた。
きっと今まで一緒にいた人たちにも同じ言葉を何度も何度も使ってきたのだろう。
「オーネ」
私はその名前を読んだ。
「なんだい」
その名前の主が答える。
「お願いがあるの」
「なにかな、今のワタシにできることは少ないが、言ってみてくれ」
私はおそらくティーと同じ思いでその言葉を発した。
「あなたの苦しみ、私にちょうだい」
それは、ティーに伝えられていた言葉。オーネを説得するためと伝えられていたその言葉。
こうしてオーネと話してみるとわかる。これはティーがずっとオーネに伝えたくて、伝えられなかった言葉だ。
彼女にはそれができないから
その言葉にオーネは動揺した。
「君は、その意味がわかっているのかい。いくら君が究極生命体という特異な存在であっても無事でいられる保証はないんだぞ」
「わかってるよ。オーネの目の力のことも、全部聞いたから」
「ティーに、かい。彼女にそういえと言われたからといってそうする必要はない。彼女が君を害すると言うのなら、ワタシがティーを説得する」
慌てて言葉を並べるオーネに私は続ける。
「違う、これは私の言葉だよ。ティーにも同じことを言え、とは言われたけど。今口にしたのは全て本心のだから」
今一言書いただけでも感じたのだ。
きっとティーも思っていたに違いない。
「私は、あなたを救ってあげたい」
たとえ私の命をかけてでも。
「どうしてそこまで」
「私の命はあなたに救われたんだよ。それだけじゃだめかな」
ティーも、多分スライやカトラだって、オーネに救われたからこそ彼女の隣にいるのだ。
だから彼女が苦しんでいるなら、助けてあげたい。
「この力は呪いだよ。おそらく一生消えることのない。それでも君は、受け入れてくれるのかい」
彼女の目に魔力が灯る。
その魔力はゆらりと動き出し、私へとやってきた。
「もちろん、それであなたの苦しみが和らぐなら、それが私たちの望みだから」
私がそう言うと、魔力はオーネを離れ、一気に私の中へ流れ込んできた。
「ッ!」
凄まじい量の魔力と、その目から入ってくる情報量に思わず意識が飛びかけた。
ふらついて倒れそうになった私をオーネが支えてくれた。
しかしなおも絶え間なく入ってくる魔力で徐々に私の意識は薄れていった。
──────
「君も意地が悪いな」
オーネは意識を失ったデスティを抱きかかえ、扉を開けた
「なんとでも言え、これが俺のやり方だよ」
扉の外にいたティーはオーネからデスティを受け取らながらそう答えた。
「何をする気だい」
「お前の想像するようなことにはならねえよ。ただ、こいつの頑張り次第だがな」
ティーは腕に抱えるデスティを揺らしながら言った。
「もう少し、デスティに優しくしてやってもいいんじゃないか」
ティーはその問いかけに答えることはせず、デスティを連れてどこかへ行ってしまった。
「辛い役目を済まないね、ティー、デスティ」
オーネはもといた場所へと、ゆっくりと足を進めた。
椅子へと腰掛け、先ほどまで自分とデスティがいた場所を想う
「願わくば、ワタシと彼女が二度と会うことのないよう。そうなって仕舞えばきっと、悲劇は免れないからね」
そう呟き、彼女はもう何も見えなくなった目を閉じた。
デスティ編、あと数話で完結予定です。そのあとも、まだお話は続いていきますので、お楽しみに




