元究極生命体デスティ・ルークシオン 5
オーネとティーがいなくなった部屋に残る静寂を破ったのはスライの言葉だった。
「オーネとティーなら、きっと大丈夫。きっとカトラを助けてくれる」
私はそれを私への慰めの言葉だと解釈しようとした。
しかし、スライが言葉を重ねるうちにそれが私ではないどこかに向けた言葉であることに気づいた。
「また…まただ。また私は何もできない。あの時から何も変わっていない、何も守れないミコから何一つ変わってない…もう誰も、死んでほしくないのに……」
そこまで口にして、ようやくスライは私は言葉を向けた。
「あ……ごめんねデスティ、気にしないで。今のは、私自身の問題だから…」
スライは居心地が悪そうにそう言うと、スッと立ち上がり部屋から出て行ってしまった。
再び部屋には静寂が訪れる。
スライの口から漏れ出た無力感はそのまま私の胸へと染み込んできた。
私はその無力感を感じながら立ち上がり、部屋を出た。
今の私は、みんなに助けてもらうことしかできない。自分を無力と責めるスライに守られるほどに。
力をつけよう。
幸い私は才能には事欠かないらしい、究極生命体だ。
オーネか、ティーに教えを乞うのがいいだろうか。
スライは……今の彼女の状態では受けてくれるか怪しいので一旦保留としておこう。
私は魔力の痕跡をたどり、オーネとティーがいるであろう部屋へと向かった。
──────
魔力の痕跡は、途中で二手に分かれていた。
どうやらオーネとティーはここで別れたらしい。
どちらへ向かうかと迷っていたところで、急に耳元に声が囁かれた。
「お前、デスティ…だったか。少し話したいことがある、来い。悪いが拒否権は無いと思ってくれ」
その口調は前と同じで荒々しいものだったが、とても小さく耳元で囁かれている私にしか絶対に聞こえないであろうものだった。
よほどこれから話すことは聞かれたくないのだろうか。
当然断れるはずもなく、そもそも私自身彼女に用があったのでそのままついていった。
ティーに連れられてついた場所は、よく知った場所。カトラのいた書庫室だった。
「あの、ティー…さん。一体何が」
そこまで言ったところで、ティーは勢いよく扉を閉め、言葉が遮られた。
「お前に今の状況ととるべき行動を伝えに来た」
「今の、状況…?さっきオーネから伝えられたのとはまた違うんですか」
ティーは私の言葉に被せるように食い気味に話す。
「あんなものあいつが、大事なとこ全部端折って伝えたに決まってんだろ。お前とスライが必要以上に傷つかないようにな」
ティーの声はどんどん荒くなっていく。
「たしかに未熟なお前らに伝えるのは酷なことかもしれねえ。だが俺は、スライはともかくお前にそこまで気を使う必要はねえと考えてる」
ティーが言うことはもっともだ、おそらくかなり長い間一緒にいた彼女たちにとって、私は異物でしかない。
「何を、すればいいんですか」
ただ、そう問いかけた。
「……オーネは今、苦しんでる。あいつには全部見えてるんだ。今のカトラの状況や、あの世界がどう変わっていっているのかも。全部見えるから、何もできない自分に苦しみ続けてるんだ。だが、あいつが何もできないのは身内が死ぬのを恐れているからだ。捨て身の作戦を取れば、カトラを助け出すことだって可能だ」
「……つまり私にその役目をやれってことですか」
ティーは誤魔化すことなく伝えてきた。
「ああ。だが、今のお前では無理だな。それに今お前をファーストワールドに向かわせても、すぐにオーネにバレちまう。あいつは今ファーストワールドを監視し続けているからな」
そしてティーは、告げた。
「だから、まずお前には、オーネの目を奪い取ってもらう」
「……え?」
一瞬何を言われたのか理解ができなかった。
さまざまな疑問が頭に浮かぶ。何故オーネの力を奪ってしまうような真似をするのか。どうやってオーネにそれを実行するのか。そもそも目を私に受け継ぐことなど可能なのか。
「今のあいつは精神的に弱り切ってる。そこにお前の強みをぶつけろ。俺の言う通りにすれば、今のオーネなら崩せるはずだ」
「私の、強み……」
何も納得ができない。不可能としか思えない。そんな私の意見など聞き入れられるはずもなく、ティーは私をオーネのいる部屋の元へ強制的に連れて行った。
また少し空いてしまいすみません!
今日の夜9時ごろに次話も投稿するので、ぜひよろしくお願いします!




