究極生命体、攫われる
いつもとは違う重力感で目を覚ました。
手足を縛られ、壁に磔にされていた。
周りは暗く、何があるかもわからない。
ただ自分の呼吸する音が聞こえるほど、他に音はしなかった。
だから扉の開く音、閉まる音、そして誰かが歩いてくる音にはすぐ気がついた。
その音は私のすぐ近くまで来ると止まった。
突然周りが明るくなる。ボッボッと音を立てて、灯りが灯った。
すると目の前にいる男の姿もはっきりと見えた。フューリーだ。
「フューリー、あなたなの? あなたがみんなを、ティムを襲った犯人なの?」
フューリーは答えない。金属製の器具をカチャカチャと音を立てながらいじって何かの準備をしているようだ。
私は何度も声をかけるが、フューリーは耳をかさない。
やがて準備が完了したのか、こっちを向いた。
フューリーがなにかの装置を作動させると、ガコンという音と共に私の体が下に降り始めた。やがて床に着くと、そこで止まった。
するとフューリーは近づいてきて、私の顔を覗き込んできた。
「やはり良い目をしている。もう片方はこれで決まりだな」
そう言うと、何かの器具を片手に持った。何か能力が使われているようで、怪しく紫に光っている。
私は必死に抵抗するがフューリーを振り払うことはできない。それに、なぜか能力を使うことも出来なかった。この錠のせいだろうか。
フューリーが器具を私の顔に近づける。まさか私の目を取る気だろうか。ティムにしたのと同じように。
怖い。力を振り絞って暴れまわろうとしても、それ以上の力で抑えられてしまう。
走行している間に器具はどんどん私に近づいてきて、それに比例して私の頭の中も真っ白になっていった。
そうして器具が私の右目に届こうかと言うその時、大きな音が部屋に響いた。その音にフューリーも振り返る。
私もそちらを見ると、この部屋に出入りするための扉を壊し、怒りをあらわに立つ3人の人物の姿があった。
デスティは私の方を見ると、少し安心したような表情になった。
そして一瞬で私とフューリーの前までくると、フューリーを蹴り飛ばし私から離す。
そしてそのままフューリーは、インスティ先生とピーター先生に拘束された。
「…大丈夫だった、アルト?」
息が荒い。かなり急いで来たようだ。というかそもそもここはどこなのだろうか。
それを訊こうとしたが、その前にデスティによって告げられた。
私が消えたことを知ったデスティが私が探していた方の瓦礫を掘ると、地下へと続く扉があったらしい。
デスティは私にかけられていた錠を壊してくれた。
「ありがとう、デスティ。もう少しで、私……」
「…無事で良かった。ところで、他に人は? カナデさんは見なかった?」
そう言われて私も気づいた。この部屋には私1人しか捕われていなかった。
他に部屋があるのかと思ったが、デスティの様子を見る限りそういうわけではないだろう。
デスティは私が何も知らないことが分かるとすぐにインスティ先生とピーター先生に向かってそのことを告げる。
すると、向こうは首を横に振った。
どういう意味かと2人の奥を覗き込むと、フューリーが意識を失って倒れていた。
おそらくデスティが思い切り蹴り飛ばした時だろう。デスティは、しまった、と言って頭を抱えた。
ピーター先生は能力を使い起こそうとしているが、それでもフューリーはピクリとも動かない。
仕方なく、先生達はフューリーを医療棟へと運ぶことにしたらしい。私も行った方がいいかと尋ねたが、まだ危険だということでデスティと共にティアの待つ部屋で待機と言われた。




