究極生命体と事件 2
一晩経っても私達が部屋から解放されることはなかった。
私は借りてきた本を何度も読み返して暇をつぶしていた。
ティアにも勧めたが、字を読むのは嫌いだと断られてしまった。
色々と心配事が重なり眠れず、一晩中読んでいた本なのでもう内容にもなんの面白味も感じない。
再び本を読み終わり、ぱたりと閉じたところでティアが叫んだ。
「あーもう、そろそろ限界よ!ティムだって大丈夫か心配だし……ああ、あの時私もカナデさんに聞いておけばよかったわ……」
「そうは言っても外に出たら怪我する危険があるわけだし……私だって早くデスティのお見舞いに行きたいよ」
たった一晩。いつも通りの日常だったならば、何も問題なく部屋に閉じこもっていられるだろうが、本校舎は爆破され、知人のけが人もいると分かっている今の状況では、どうにももどかしい。
「決めた!あと10数えて何も連絡がなかったらフューリーの部屋へティムの様子を見に行くわ!寮から出なければきっとバレないわよね!」
「落ち着いて、ティア!寮内にも危険があるから部屋から出たらダメって言われてるんだよ!それにカナデさんもそのうちまたくるだろうし……」
そんな私の言葉は聞こえていないかの如く、ティアはカウントを始めた。
ちょうどそのカウントが0になり、ティアが部屋を飛び出しそうになった時、カナデさんの声が部屋に響いた。
「ストップ。ティアちゃん、見えてるわよ。はあ……アルトちゃんだけじゃなくティアちゃんにも念を押しておくべきだったかしら。それはそうと、二人に朗報よ。あなたたち2人くらいなら、私の管理の下で部屋の外に出てもいいことになったわ」
「本当、カナデさん?じゃあデスティにも会えるかな?」
「ごめんなさい、あなたたちのことは見えてるけど、話していることまでは分からないから。とにかく、数分したらそっちに行くからそれまではじっとしててね」
そこで言葉が切れた。
先ほどの言葉を聞いて、さすがのティアも大人しくなり、私の横へと戻ってきた。
するとティアは、戻ってくるなり膝を曲げ丸くなり顔を隠してうずくまってしまう。
「ど、どうしたのティア?」
私が問いかけるとティアは顔を羞恥で赤く染め、答えた。
「見られてた……カナデさんに、私のあんな姿……恥ずかしい……死にたい……」
今まで見たことがないくらいにネガティブなティアだ。
「そ、そこまでかな…?別にそこまで恥ずかしがることじゃないと思うんだけど……」
「だってあの、世界を救った英雄のカナデさんに見られてる中で、あんなに取り乱して命令にまで背こうとしたのよ⁉︎ ……ああ、恥ずかしい」
そういえば、カナデさんは王都じゃかなり有名な人なんだっけ。
普段のあの人を見ていると時々忘れてしまう。
それからしばらくティアを慰めていると、ドアがノックされた。カナデさんが来たようだ。
ドアへ向かい、開けるとやはりそこにはカナデさんの姿があった。
「おはようアルトちゃん、ティアちゃんも。さ、2人ともどこかへ行きたいんでしょう?私も暇じゃないから早く行きましょ」
そう言ってカナデさんは手招きをして私たちに外に出るよう促す。
私達がまず向かうのはティムとフューリーのところだ。
医療棟へ向かうより近いし、何よりティアが限界だ。
さっきからずっとぶつぶつと心ここにあらずといった感じで独り言を呟いている。
……これはティムの姉離れというよりティアの弟離れができるのか心配だ。
まあ、男子の部屋へはたった2階上に上がるだけなので特に何事もなくたどり着くことができるだろう。
そう思っていたのだが、何やら様子がおかしい。
というのも男子生徒が部屋の外に出ているのだ。
しかも、とある一点に集まっている。
それを見てカナデさんは叱ろうとしたのか、男子生徒達の下は少し早足で近づく。
だが、何かに気づいたのかその足は速度を速め、男子生徒たちの間を分け入って進んでいった。
私達もカナデさんの後を追って進んでいく。
そうして男子生徒達の視線の先にあったものを確認すると、ティアの口から今にも消えてしまいそうな声が漏れた。
「ティ……ム……?」
視線の先にあったのは、その顔が紅い血に染まり、廊下で横たわるティムの姿と、それを必死に手当てするピーター先生の姿だった。
そしてティムの顔からつたうその血痕は、一つの部屋の中へと続いていた。




