究極生命体と事件 1
あれから1ヶ月、私はデスティのところへは行かず、スライのいる図書館と、ティア達と共にインスティ先生の授業を受ける日々を送っていた。
使える能力も増え、順調に力を伸ばすことができている。
この分ならもう1ヶ月もすれば別世界へ兵として推薦される可能性も出てくるだろう。
私は図書館から持ち帰った本や資料を寮の自室で読んでいた。
すると部屋のドアがノックされた。
誰かと思い外を覗くと、そこにあったのはティアの姿だった。
「こんにちはアルト、今大丈夫かしら」
「うん、大丈夫だけど、急にどうしたの?」
そう問いかけると、ティアはため息をついて答える。
「アルト、最近無理しすぎなんじゃないの?今だって目に隈ができてるわよ」
「そうかな?でも、これくらいしないと私なんてまだまだだし」
「まあほどほどにね。さ、とりあえず中に入れてもらえるかしら。茶葉を持ってきたの、お茶煎れるわ」
そう言われ、断る理由もないのでティアを部屋の中と入れることにした。
「そういえばティムは一緒じゃないんだね。いつも一緒にいるのに」
「ティムはフューリーのところよ。最近あの2人仲良いのよね。あの試合からフューリー、人が変わったみたい」
確かに最近のフューリーは以前会うたびに馬鹿にしてきたあの時とは別人のようだった。
あそこまでこっ酷く負けると、人は変わるものなんだろうか。
「まあ、仲がいいならそれでいいんじゃない? ティム、ティアにべったりだったからこれを機に姉離れできるかも」
「そうね、少し寂しいけれど、ティムが幸せそうならそれでいいわ。仲がいいといえば、アルト、あなた逆に最近デスティとずっと会ってないみたいじゃない」
「ああ、ちょっと喧嘩しちゃってて……そのうちちゃんと仲直りするから心配しないで」
私がそういうとティアは「そう」とだけ言って煎れたお茶を持ってきてくれた。
とても落ち着く香りが部屋の中に広がり、連日の疲れもあって眠ってしまいそうだ。
そうしてウトウトして眠ろうかというところで、突然頭に響いた声により、その眠気はどこかへ吹き飛んでしまう。
「寮の外にいる生徒は直ちに寮へ戻ってください。また、寮内にいる生徒も部屋から出ないようにしてください」
そうだけ言ってその声は聞こえなくなった。
声の主はおそらくカナデさんだったと思うのだが、何やらかなり慌てているようだった。
「びっくりしたわね。なんだったのかしら」
ティアも驚きと困惑が混ざった表情をしている。
今の情報だけでは何が起こっているのか全くわからないため混乱するのも当然だ。
「ずいぶん慌ててたけど、何かあったのかな。力になりたいけど、部屋から出るなって言われてるし……ッ!」
突然鈍い音と共に寮が揺れる。この音は爆発音だろうか。
何事かと急いで窓の外を見ると、医療棟に挟まれてしっかりとは見えないが、本校舎から黒煙が上がっているようだった。
「嘘……!本校舎が……」
ティアがそう言いながら呆然とする。
私も何が起こっているのか理解できず、ただその様子を見ることしかできない。
と、ここで一つの考えがよぎる。
カナデさんが、私といない時デスティはいつも本校舎の訓練場にいると言っていた。
それにカナデさんやスライも、いつも本校舎で何かしている。
早く行って助けないと──
そう考えたその時、部屋のドアが再びノックされた。
ドアを開けるとそこに居たのはカナデさんだった。
煤や砂埃で汚れており、やはりあの場にいたのだろう。
「カナデさん!良かった無事で……ねえ、何があったの?デスティやスライは無事なの?」
「アルトちゃん落ち着いて!そのスライって子のことはわからない。デスティは怪我をして医療等に運ばれたけど命に別状はないと思うわ」
やっぱりデスティもあの場にいたようだ。
怪我はしたものの無事だと聞いて、少し安心するが、まだスライが心配だ。
「スライはいつも図書館にいる人で…私よく彼女に能力を教えてもらってたんです」
すると、カナデさんの表情が険しいものへと変わる。
「それは……まずいかもしれないわね。爆発が起こったのはまさに図書館なのよ。とりあえず外見の特徴とか教えてもらえるかしら、救助した人の中にいないか確認するわ」
「スライは……いつもフードとマントをつけていて、フードをとると栗色の髪が肩にかかるくらいまでのびてて……あとは……」
「落ち着いて!もう大体分かったから! うん、ちゃんと覚えたわ。それじゃあ私は戻るから、絶対に部屋から出ないでね!」
カナデさんは絶対にの部分をかなり強調してそう言った。
「あの日も、ダイアナに会いに無茶したでしょ。わかってるのよ。もう絶対無茶しちゃダメ」
そうさらに念を押すと、カナデさんは大急ぎで戻っていった。
というかあの日のことバレてたのか……
絶対にバレないようにするとデスティに豪語したから今度会ったら謝らないと。
もちろん喧嘩中だし、そのことについて譲りたくはないけれど、約束を守れなかったことについてはしっかり謝らないといけないというものだ。
でもできることなら早く仲直りがしたいな、そう思いながら部屋へ戻り扉を閉め、結局カナデさんの言いつけを守ってその日は外に出ることはなかった。




