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私、究極生命体⁉︎  作者: 石動昼間
第3章 ダイアナ
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アルトは黒を薄くする

 次の日、私の下へ1人の女の子がやってきた。紅い瞳を持つその子は牢を開け、私を外へ出してくれた。


 その女の子は監視役として私についてきてくれるそうだ。


 数日ぶりに家に戻ると、家の中は荒らされ壁にもたくさんの悪口が書かれていた。


 訳もわからずその光景を眺めていると、監視役の人が私の両親がしたことはすでに王都中に広まり、この食堂も犯罪者の家として知られていると教えてくれた。


 とはいえ、これから暮らしていくにはお金が必要なため、仕方なく店内を掃除し、入口の扉に開店の札をかける。


 それから数時間経ってようやく店の扉が開かれた。


 その顔には見覚えがあった。いつもここへご飯を食べに来てくれていた人だ。


 私は、まだ見捨てられていなかったと心の中で歓喜し、接客のため近づく。


 するとその人は私を突き飛ばし、床は押さえつけた。


 その人は、『お前達のせいだ、お前達のせいで俺まで疑われた。俺の家族だって周りから嫌がらせを受けてもう散々だ』そう言って私の首に手をかけようとする。


 しかしその手が私の首へとどく前に、監視役の人がその人を私から引き剥がした。


 その人は監視役の人に追い出され、戻ってはこなかった。


 監視役の人が戻ってくると、私に大丈夫かと聞いた。


 私は大丈夫と答えた。


 しかし私は理解してしまった。もうこの世界に居場所なんて無くなってしまったことを。




 ―――




 それからも私は店を開き続けた。


 来るのは私の家のせいで迷惑かけてしまった人達や、野次馬ばかりだった。


 それでも何とか1日一個のパンを買えるくらいは稼げていたが、私の心と体はどんどん疲弊していった。



 ある日、皿を洗っていると、突然目眩が襲ってきて私は意識を失ってしまった。


 目を覚ますと、今までは見ているばかりだった監視役の人が、私の代わりに皿を洗っている姿が目に入った。


 監視役の人は私の目が覚めたことに気づくと、今日は伝えなければいけないことがある、と言った。


 監視役の人によると、私は異生命体、石の生命体だという。


 異生命体のことは前にお客さんから聞いたことはあった。だけどまさか自分がそうだとは思ってもみなかった。


 さらにこの王都には異生命体が力を制御するための教育機関があり、私は力の制御ができるまでそこへ在籍することになったという。


 監視役の人曰く、衣食住の心配はしなくていいそうだ。


 ここ数日、いつまで続くかもわからないこの日々のために心身を削って働いていた私にとって、それは救いだった。


 私は思わず脱力し、嗚咽をもらした。


 これからはもう、暴言を吐かれ続け、時には暴力も振るわれるあの仕事を続けなくていいんだ。

 そう思うと、涙が溢れ出してきて止まらなかった。


 次の日、この家に白く輝く髪を持った美しい女性がやってきた。


 監視役の人はその人をカナデさんと呼んでいた。


 カナデさんは私を学校に入るための手続きだと言って、私を外へ連れ出した。


 私が外に出ると、街を歩く人々からは侮蔑や哀れみ、怒りの視線にさらされる。


 いつも買い出しに行っていた時もそうだった。時には何かを投げつけられたりもした。


 だが今日はあまり視線を感じない。なぜかと思い周りを見渡すと、人々は皆私ではなく、カナデさんを見ているということがわかった。


 そんな私とは違う視線をあびるカナデさんを、私はひどく羨ましく思った。



 無事学校につき、手続きを済ませると、外でデスティが待っているから先に帰っていてくれと言われた。


 デスティとは誰かと聞くと、どうやらあの監視役の人の名前らしい。


 ともかく外へ出ると、監視役の人、もといデスティさんが待っていた。


 再び王都の中央部、デスティさんが私の手を引いて連れて行く。と、その中で気になる人を見かけた。


 その人はデスティさんにとてもよく似た容姿をしていた。一瞬分身でもしてるのではないかと疑ったほどだ。


 一瞬こちらを向き、その人の金色の瞳が私の目に焼き付く。


 その姿は引き込まれるように魅力的で、私はその人から目が離せなくなってしまった。


 すると彼女は何かを落とすのが見えた。財布だろうか、彼女は気付いていない様子で歩き続けている。


 私はそれを拾う。だがその一瞬の間にその人は何処かへ行ってしまった。


 私は必死でその人を探した。デスティさんが私を引っ張ったが思い切り振り切り、その人が向かった方向へ走った。


 少し移動すると、その人の姿がまた目に入る。何やら一つの食堂の前で下を向いてキョロキョロしている。財布を落としたことに気づいたようだ。


 私は、その人へ財布を渡しに行ったところでようやく気づく、私を見たらこの人からも嫌な目で見られる。そう思ったが、もう声をかけてしまったので手遅れだった。


 しかしその人は、私が何者かなど気にもしていない様子で私にひたすら感謝を伝えてきた。


 なんだかとても不思議な人だ。


 お金は夕食を食べるためのものだったらしく、目の前の食堂に入るところだったらしい。


 私は、この人にもっと近づくチャンスだと思い、私の食堂へ来てくれないかと言った。


 その人は何も気にすることなくそれを了承してくれた。


 私はその人にとびきり美味しい料理をご馳走しようと意気込んでいたが、昨日で閉店してしまったので食材を買い足してないことに、食堂へ帰り着いてから気づいた。


 だけども何とかありあわせの食材、数種類の野菜でスープを作り、私の今日の夕食だったパンを添えて出した。


 その人はその料理をとても美味しそうに食べてくれた。


 私の料理をまた食べたいとまで言ってくれた。


 なんだかこの人と話しているととても胸が熱くなる。

 反面、私の事をできるだけ隠そうとするたびにズキズキと痛みもする。


 この人は、私の事を知った上でこんなふうに振る舞ってくれるのだろうか。それとも、私やこの店のことなんて知らなかったからこんな風なのだろうか。


 そう考えながら話していると、ドアがノックされた。


 話を中断し、ドアを開けるとそこにはカナデさんがいた。よく見ると後ろの物陰にデスティさんがいることもわかった。


 どうやらカナデさんは学校に入るために必要なものを届けに来てくれたようだ。


 私はカナデさんにお礼を告げようとするが、その時カナデさんの視線が私の後ろへと移った。


 何とカナデさんとその人は知り合いだったのだ。しかも私と同じ異生命体で、私と同じ学校に入学するそうだ。


 今まで生きてきてこんなに嬉しい偶然は無かった。運命にすら感じてしまう。


 そんなことを思っていると、カナデさんは気を利かせてくれたのか、寮の部屋や学ぶ場を一緒にしてくれると言った。


 そして、カナデさんは会話の中で度々その人のことをアルトちゃんと呼ぶ。おそらくそれが彼女の名前だ。


 私はきっとこの名前を生涯忘れないだろう。




 ―――




 私がこれほどまでにアルトに惹かれる理由、最初はわからなかったが、少し一緒に過ごすとだんだんとわかってきた。


 アルトは無色なんだ。まだ何にも染まっていない。


 だから私はアルトを見つけた時、直感的に思ったんだ。


 この人は、綺麗だと。


 私の周りの人は皆すでに、どす黒く上から塗りつぶされてしまっている。きっと私自身も。

 この王都と同じ色に。


 無色のものは簡単に他の色に染まってしまう。だからとても貴重だ。


 でももしアルトは、染まってはいなかった。だから思ったんだ。


 この人なら、私の色を塗り替えてくれるんじゃないかって。


 それから、アルトと過ごす日々は、私の染められてしまった色を少しずつ薄めていった。


 カナデさんが手を回してくれて、出来る限り私の他の人と関わる機会が少なくなるようにしてくれた。


 しかし、そんな日々は長く続かなかった。どうやら私には能力を制御し使用する才能があったらしい。


 一ヶ月の訓練で能力の制御は完璧にできるようになった。


 しかもその訓練の目的であった試合はあろうことか王城の敷地内で行われ、私のその力は王城内に伝わってしまった。


 私も私で、少しアルトに頼られたくらいで調子に乗って、手を抜き自分はまだ不十分だと周りに見せることもしなかった。


 結果、学校を離れ、別世界で兵として戦うように命じられた。


 私はカナデさんにこのことをアルトに伝えるべきかと聞くと、絶対に伝えてはいけないと返された。

 私と親しい者に邪魔されるわけにはいかないと。


 結局私はまた黒く染まってしまった。


 別れも告げないまま私は学校を、王都を出た。


 もうアルトに会うこともないだろう。


 アルトは心配するだろうか。追いかけてきてくれるだろうか。


 アルトならきっとする。だけどして欲しくはない。


 だって今私のところに来たら、アルトまで黒く染まってしまうかもしれない。


 だからもう私は、アルトには会いたくない。










 アルトに、会いたい。

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