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私、究極生命体⁉︎  作者: 石動昼間
第3章 ダイアナ
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究極生命体と大犯罪者

「やっぱりすごい人ね…」


 ティアがその人の多さに呆気にとられている。


「え?ティアは学校に入る前も王都に住んでたから、てっきり慣れてるって思ってたよ」


「このくらいの時間はいつもブレイズ家の屋敷の中だったわ。そもそも買い出しとかは別の人だったし、外に出ることも珍しかったから」


「ボクもあまり外には出たことはなかったので……う…酔いそう…」


 ティムは人の多いところが苦手なようだ。もうすでに若干顔色が悪い。


「頑張ってティム。ここを抜けないと学校に帰れないんだから」


 そんなティムをティアは励ましながら進む。


 そのまま人混みの中を進んでいくと、何やら気になる人物が見えた。


 真っ直ぐな長い黒髪、それに紅く輝く真紅の瞳、間違いないデスティだ。


 学校へ戻ったと思っていたが、何をしているのだろう。


 もしかして私たちを迎えに戻ってきたのだろうか。


 いや、デスティが向かっている方向は私たちがさっきまで居た王立魔法学校がある方向ではない。


 少し気になったので私はティアとティムに先に帰ってと伝えて、デスティの後を追うことにした。


 デスティは何やら細い路地を抜けて大通りから少し外れた方向へ向かっているようだ。


 だけどなんだろう、この道は一度通ったことがあるような気がする。


 その疑問はデスティが辿り着いた場所を見てすぐに解消された。


 デスティはある建物の前で止まり、鍵を開けその建物の中に入っていく。


 それはダイアナの店、ストーン食堂だった。


 もしかして怪しい場所にでも行こうとしていたのではないかと疑ってしまった自分が恥ずかしい。


 私も中に入ってデスティを驚かせようとドアに手を伸ばしたその時、突然私の手が何者かに掴まれた。


 驚きその手の主を見ると、そこには鎧を纏った騎士が居た。


 どうやら噂の誘拐犯というわけではなさそうだ。


「あ、あの何ですか?ちょっと痛いのでこのて、離してください」


「ふん、惚けるな。貴様一体何者だ?まさかこの大犯罪者の家に入ろうとしておいて、自分はただの一般市民とでも言うつもりじゃないだろうな」


 どうしよう、全然離してくれそうにない。


 それに大犯罪者?一体何のことだろう。ここはダイアナの店だ。もし本当ならダイアナが犯罪者ということになってしまう。


 それはともかく、ひとまず誤解を解かなければ。


「あの、私は本当にそんな犯罪とか何も知らないんですって!ここに入ろうとしたのも、知り合いが入っていくのをみたからで!」


「知り合いだと?今ここにはこの国の要人が1人居るが、そんなお方とお前のような女が知り合いな訳がないだろう。それにその見た目、あの方を暗殺して入れ替わろうと企んでいるんじゃないか?」


 そういえば、デスティの家は代々騎士団長を務めてるって言ってたっけ。


「ですから本当に知り合いなんですって!デスティさんとは学校で仲良くしてもらってて、なんなら今から確認してもらっても…」


 そこまで言ったところで、騒ぎが中まで聞こえたのか、店の扉が開かれ、デスティが出てきた。


「…アルト、こんなところで何してるの?」




 ―――




「…あの騎士が迷惑かけでごめん。私に限らず私の家の人が外に出る時は、気づかれないように騎士団が護衛してるの」


「まあ、私もこっそり跡をつけてたわけだから、怪しさ満点だったと思うし」


 結局あの騎士はデスティ本人が説明したことで私を解放した。


 そして今は食堂の中に入り、置いてあった椅子に座って話しているところだ。


 さっきの騎士の話を聞いて、デスティに聞きたいことが少しある。


「デスティは何でこんなところに?またカナデさんに何か頼まれたの?それと、大犯罪者って何のこと、ここってダイアナの店だよね?」


「…落ち着いて、答えられることは答えるから」


「てことは答えられないこともあるの?」


 デスティは無言で頷く。


「…私はここにある荷物を確認しに来たの。近々全て押収されるからそのリストアップ」


「押収って何?何でそんなことされなくちゃいけないの?」


「…それを説明するには少し長くなるけど、いい?」


 私が頷くとデスティは重々しい雰囲気で話し始めた。


「…半年ほど前、国王の食事に毒が盛られるという事件があった。それで国王は一時危篤にまで陥った。神ということもあって今は回復に向かっているけれど。その事件の犯人は、すぐわかった。というより自首してきた。犯人は当時王城で料理人をやっていたクリス・ストーン、ダイアナの父親だった」


「え…」


「…それだけじゃない、調べた結果彼がもともと営んでいたこの食堂から、事件の計画書が見つかった。筆跡を調べたら、書いたのはダイアナの母親、エメラルダ・ストーンということがわかった」


「てことは、もしかしてダイアナも…?」


 そう聞くと、デスティは首を横に振り、否定する。


「…ううん、ダイアナはこの事件に全く関わってない。だけど、両親が揃って国王暗殺を企てていた事実は、ダイアナも同じ思想を持っていると判断されるのには十分だった」


「そんな、でもダイアナは普通に出歩くことが出来てるよ、犯罪者ならそんなこと許されないでしょ?」


「…少し前までは本当に牢獄の中だったよ。首を切られるのも時間の問題だった。でもある城の人間が言った。15歳になるダイアナの能力を鑑定し、使える能力であれば利用すれば良いのではないか、と。そして鑑定の結果、彼女が異生命体であることが判明した」


「てことは、ダイアナは殺されたりはしないってこと?」


 私がそう聞くと、少し迷った表情でデスティは話しだす。


「…当然それは想定外だった。だから、しばらく世間から離れていたカナデさんを呼び戻したの。異生命体に暴走でもされたら困るけど、急いで刑を執行しようとしても、暴走の可能性が高まるだけだから。カナデさんはダイアナに監視役をつけさせることで異生命体学校への入学を許可させた」


 そしてそこから先は私も知っている様に訓練を重ね、力をコントロールできるようになった。そういうことだろう。


 だとしたら、ダイアナはもう学校にとどまる必要はないのではないだろうか。


 あの時感じた、ダイアナが離れてしまうような感覚。もしかしたら本当にダイアナが学校を出るから、あんなふうな印象を受けたのではないか。


 だとしたらはやく帰らないと──


「…ごめんアルト」


 デスティの言葉とともに、出口の扉の前には能力で作り出されたであろう壁が現れた。


「デスティ、どういうこと?ダイアナはどうなっちゃうの?何処かへ行くんだったら、お別れくらい言わせてよ!」


「…ダイアナは今から別の世界へ兵として送り出される。アルトが今会ったら彼女を放ってはおかないでしょ?」


「そんな……っならこんな壁力尽くで!」


 私は壁を、能力を発動して壊そうとする。しかし、壁には傷ひとつつかない。


 全ての攻撃が壁に当たった瞬間に消えてしまう。


「…触ったりはしないほうがいい。怪我しちゃうから。心配しなくても、全て終わって連絡が来たら解放するよ」


 全てが終わってからでは意味がない。怪我なんて知ったことか。


 無理やりにでも壁を壊して…!


「痛ッッ!」


 私が触った瞬間、触った私の手が焼けたように熱く、痛くなる。見ると、その箇所の皮膚が丸ごと剥がれてしまっている。


「…わかったでしょ、怪我するだけだよ」


 でも、それでも壁を壊して、会いにいかなくちゃ。


 これで終わりなんて嫌だ。まだ会って2ヶ月と少しだけど、ダイアナにあった事だってついさっきまで知りもしなかったけど、これからもっと思い出を作ってお互いを知っていけると思ったのに。


 だけどいくら能力を使っても、叩いたり、蹴ったり押したりしても、その壁は私に傷をつけるだけで、決してヒビは入らない。


 次第に痛みは感じなくなっていき、痺れるような感覚へと変わっていく。やがて意識も遠のいていき、目の前が真っ暗な闇に包まれた。

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