究極生命体、外へ 1
「ふぅー、久しぶりの部屋ってやっぱりいいね」
寮へ戻り、部屋へ入ると真っ先に自分のベッドに飛び込む。
「あ、ちゃんと綺麗になってる。そっか…一ヶ月も掃除ダイアナに任せちゃったのよね、よし!これから私一ヶ月分ダイアナを労らないと!」
「…一応私も手伝っていたから、労るのは半分ほどで大丈夫」
「そうなんだ、じゃあデスティとダイアナ、半分ずつお返しするね!」
毎日お見舞いにも来てくれたし、そのお礼も含めたらちゃんと返しきれるか不安なくらいだ。
「…アルト、いつもよりすごく楽しそう」
「え、そうかな?んー、やっぱりまたダイアナやデスティと過ごせるのが楽しみなんだと思う」
医療棟は設備もしっかりしていたし、快適ではあったけど、やはり少し…いや、かなり寂しかった。
病室で見る夢はほとんど、3人で訓練する夢だったくらいだ。
「…そう。私もまた2人に色々教えたいって思ってる」
「ダイアナが戻ってきたらすぐにでも訓練場に行きたいなあ…そういえばダイアナ、なんの用事で呼ばれたんだろう、私追い出されちゃったけど?」
「…わからないけど、相手はカナデさんだしきっと大丈夫」
それもそうか。そうして私たち2人はダイアナが帰ってくるのを些細な言葉を交わしながら待った。
―――
「待たせてごめんなさいアルト、デスティ。話が長引いちゃって」
「ううん、それよりさっきデスティとちょっと話してて、デスティも外出許可証持ってるらしいから、この後ティアたちも誘って外へ出てみないかって」
私がそう提案すると、ダイアナの表情が曇る。
「ごめんなさい私、今日は行けないわ……色々とカナデさんに頼まれちゃって…」
何やら、大変な頼みをされてしまったみたいだ。これはお返しのチャンスだ。そう思った。
「そっか、なら私も手伝うよ!どうせならみんなで行きたいし、ダイアナには色々助けてもらったから!」
「ごめんなさい、あまり人に頼めるようなものでもないのよ。外には4人で行ってきて」
あっさり断られてしまった。けれどしつこくしても迷惑なので、ここは一旦退くことにした。
「わかった。でも次は一緒に行こうね、絶対に!」
するとダイアナは笑みを作り、ただ一言、「ええ」とだけ答えた。
―――
場所は移り、私は図書館にいた。
部屋を出て、そのままティアたちのところまで行ったのだが、どうやら訓練中だったようで、部屋をノックしても返事はなかった。
それで訓練が終わるのを待つ間、図書館で能力を覚えようというわけだ。ちなみにデスティは本は苦手だと言って自室へ戻っていった。
そして図書館にて、久々に会うスライと共に本片手にミニパーティーを行っていた。
「祝!アルトたちの勝利!」
「あはは、ありがとうスライ。一ヶ月も会いに来れなくてごめんね」
「ううん、そのことは知ってたから気にしないで。それよりも、私があんなに教えてあげたのに、結局引き分けただけなんだって?」
スライは小悪魔的な笑みを浮かべそう言う。
「う…それを言われると…」
「あはは、冗談だよ。無事で何より。それより、早く覚えないとお友達の訓練終わっちゃうぞ」
と、さっきからずっと私に幻影の能力を見せているスライが言った。
「そうは言っても、スライの幻影ってば現実と区別がつかなくて、どこまでが能力なのかイメージしにくいんだよぉ…」
「ふふ、これは私の一番得意な能力だからね。あ、でもそういう異生命体ってわけでもないよ」
そういえば、スライは何の異生命体なのか、未だにわからない。
いろいろな能力も使えるし、もしかしたら異生命体ではないのかもしれないけど、だとしたらどうしてここにいるんだろう。
それを深く考えている余裕もなく、ティアたちの訓練が終わるギリギリまで、スライの意地悪な指導は続いた。
―――
「はあ…」と私は大きなため息を吐く。結局幻術魔法も覚えられず、スライに散々からかわれたからだ。
でも、本来なら自分で資料を読み、自分だけでイメージできるようにしなければいけないところをスライがわざわざ実演してくれているのだから文句は言えない。
「…どうしたの、図書館で何かあった?」
私を心配したデスティが言う。
「ううん、なんでもない。それより、早くティアたちのところへ行こうよ!」
「…私が先に行ってティアたちに声をかけてきたから大丈夫。正門で集合」
「そ、そうなんだ、ありがとうデスティ」
そうして私達は久々の外の世界の入り口へと歩みを進めていった。
正門に着くとそこにはティアとティムの姿があった。
「なんだか久しぶりねアルト、それとデスティも」
ティアがそう言うと、その後ろからティムも「ひ、久しぶり…」と少し小さめな声で言った。
「うん、ひさしぶりティア、ティム…ってデスティもって学校内で会ったりしなかったの?」
「ええ、そもそも今までも行動の時間が違ったから会ったことはなかったし…それに見た目も見た目だから目に入ったらすぐに気付くと思うわ。あなた達、本当にそっくりね」
そう言われて私とデスティは顔を見合わす。確かに初めて見た時目を奪われたが、今見ても鏡を見ているかの様な感覚に陥る。
「ひょっとしたら2人は生き別れた実の姉妹…だったりして!」
「…それはない」
ティアの言葉をデスティは真っ直ぐ否定する。
気のせいか少し気が立っているように見える。
「ご、ごめんねデスティ…そういえばインスティ先生ってあなたのお姉さんだものね、軽はずみにそんなこと…」
「…気にしないで、怒ってはいない…さあ、早く行こう」
デスティはそう言って、自身の許可証を門番に見せ、先に外へ出て行く。
少し微妙な空気になってしまったが、気分を入れ替え私達はデスティの後を追い、王都へとくりだした。




