究極生命体と外出許可
「うん、もう大丈夫そうですね」
「はい、おかげさまですっかり。長い間お世話になりました」
そう言って私は病室を後にする。
外に出るとダイアナとデスティが待っていた。
「あれ、2人ともどうしたの?部屋で待っててって言ってあったのに」
「…カナデさんが呼んでる。部屋に戻る前に、そっち」
―――
デスティに言われるがままついていくとそこは、本校舎の最上階にある一室だ。デスティがドアをノックし中に入る。
「…カナデさん、アルトとダイアナ、連れてきた」
「おお!ありがとデスティ。さて、まずアルトちゃん退院おめでとう!」
相変わらずキャラが掴めない人だ。会うたびに雰囲気が変わって、いつも別人と話している気さえしてくる。
「あ、ありがとうございます。それで、ここに呼ばれた理由って…」
「ああ、そうね。はい、これを渡したくて呼んだの」
カナデさんから一枚の紙切れが渡される。
その紙には、カナデさんの名前と、この学校の印鑑が押されていた。
「これは…?」
「それは、外出許可証よ。それを見せれば正門を通って街へ出られるわ」
カナデさんはかなり軽く言うが、これはこの学校に在籍する異生命体ならば誰もが喉から手が出るほど欲しい代物のはずだ。
今は設備が充実しているとはいえ、この学校に隔離されているのと同義なのだから。
「すごくありがたいですけど、どうして突然…」
「それはいつも、対抗戦で力を使いこなせていると判断された人に送られるのよ。今回はフューリー以外は全員もらってるわ。あの子は今回見せ場なかったから次に期待ね」
そういえば隔離されている理由は暴走する可能性があるからだったっけ。なるほど、今回の試合でその危険性が薄いと判断されたのか…ん?そういえば…
「ティムは、試合に出てないのにもらえたんですか?」
「ああ、あの子はもともと持ってたのよ。あの子はちょっと特別扱いでね」
「なるほど。あ、それと…」
もう一つ、重要なことがある。
「私、試合の時のこと覚えていないんです。だからもしかしたらあの時、私我を忘れて暴走していたのかも…」
もしそうならばこれを受け取ることはできない。まだ自分の力についてわからないことが多い今、危険な状態になってしまわないとも限らない。
「私達が見る限りではあまり変わった様子はなかったけど…どう、デスティ、ダイアナちゃん?」
「私はあの試合怪我で医務室だったので…」
ダイアナが申し訳なさそうに答える。
「…確かにあの時違和感はあった。けど暴走とは違う。そもそも…」
デスティが暴走について説明する。
なんでも暴走というのは力を制御できない異生命体が許容範囲を超えて能力を使うことで起きてしまうらしい。
前に私達が食堂で遭遇した剣を操る異生命体。あのように、一度暴走してしまうと周りが見えなくなり、自身の異生命体としての本能に従って行動してしまうようになるのだとか。
「…あの時、アルトはちゃんと話も通じた。多分記憶がないのは魔力がなくなった影響じゃないかな」
確かにそう考えるのが自然かもしれない。
でもだとしたら、最後に聞こえた『これで1人目』という言葉。何故か唯一覚えている、頭に響き渡ったこの言葉は一体なんなのだろうか。
でも今考えても仕方がない。そう思い、一旦それは記憶の片隅に追いやる。
「なるほど、じゃあ大丈夫なのかな」
「ええ、じゃあもう質問は無いかしら」
「はい、ありがとうございます」
それを聞くとカナデさんはにこりと微笑む。
「じゃあ、アルトちゃんへの要件はこれで終わり!デスティ、アルトちゃんに寮まで付き添ってあげて。」
デスティはそれに頷き、私の手を引っ張る。
「…行こうか」
「うん。あれ、でもダイアナは?」
するとその質問にはカナデさんが答える。
「ダイアナちゃんにはまだお話があるから、先に帰っててもらっていいかな」
「は、はいわかりました。じゃあ、ダイアナまた後で」
「うん。部屋で会いましょ」
気のせいだろうか。心なしかダイアナが遠くへ行ってしまう。そんな感覚がした。




