究極生命体と神の子
──シェイン王子は本当に何をしてくるかわからない。能力もだけど、行動も全てが予測できない。気をつけて。
そう言ってデスティは送り出してくれた。多分まだ話し足りないことがあったのだろう、その時はかなり送り出すことを躊躇っているようだった。
だから私は彼女に告げた。
「大丈夫。私は勝つよ。勝たなきゃいけない、そう思う。デスティに任されたからとかそういうのじゃなくて、私がそう思ったの」
自分でも何故これほどまで感情が高まっているのかわからない。
ダイアナを傷つけられたからだろうか。多分違う。だってそれなら私はさっきすぐに飛び出してダイアナを助けに行ったはずだから。
とにかく戦えばわかるそんな気がしていた。
―――
階段を降り闘技場へと続く道を歩いて行く。
途中でダイアナを運ぶ救護班とすれ違った。すれ違いざまに見ただけだが、見た限りでは致命傷となり得るものは見当たらなかった。
闘技場内に入ると1人の人間が目に入る。光沢を放つ金色の髪、シェインだ。
私は彼に近づくと一つ問いかけた。
「ねえ、あなたなんで異生命体を恨むの?」
彼はそれを聞くと眉をひそめ、不快そうな顔をする。
「お前程度にはには聞いても理解できんよ」
彼はそう一言答えると、目を閉じてカナデさんからの合図を待つ。
私も同じように目を閉じる。昔誰かから聞いた方法だ。他人を理解するために大切なのはその相手そのものに成ることだと。
だから少しでも相手に近づくために真似をする。
「それでは、始め!」
カナデさんの合図が聞こえた。だけどまだ、シェインは動いていない。だからまだ動かない。
しばらくするとシェインが動き出す。それもゆっくりと。何もしてこない私を警戒しているようだ。だから私も目を開けて同じように動き出す。
それを見てシェインはかなり苛立ったようで、雷系統の能力の発動準備をする。
「あまりなめるなよ…《金剛杵》‼︎」
シェインの手に電撃を纏う金属器が現れる。
あの能力は私のステータスには書かれていなかった。おそらく固有能力のような何かなのだろう。
シェインがそれを振り下ろすと、雷撃が降り注ぐ。
だけど私には効かない。
完全耐性。その存在を知れてよかった。固有のものではないのなら、多分持っている。
私に攻撃が効いていないのを見て、シェインは一瞬攻撃をやめ、たじろぐ。
隙ができた。そこはすかさず攻撃を放つ。
「《三叉戟》‼︎」
最初の試合でフラムが放った神の炎。全力で放ったそれはフラムのものとは比べ物にならない速さでシェインを貫く。
炎の槍に貫かれたシェインは初めてここで膝をつく。見るからにこれは追撃のチャンスだ。できればここで決めたい。
だけど少し様子が変だ。当たれば激しく燃え盛っていたフラムの炎とは違い全く勢いを強める様子はない。
すると、シェインが立ち上がりひとこと呟いた。
「雷霆神」
直後轟音と共に無数の雷がシェインを撃ち、あたりが光によって覆い尽くされる。
私はその光と轟音にたまらずまた耳を塞ぐ。
再び目を開けると、そこにあったのは煌々と光り輝き、常に雷鳴を轟かせ雷を周りに放ち続ける人ならざるものの姿だった。
「我のこの姿を見たのは父上以外ではお前が初めてだよ。電撃の完全耐性か。なるほど厄介である」
シェインはそこまで言うと一度首を傾げる。
「いや、お前は炎を使ったな。異生命体は一属性しか使えぬはず。お前は何だ?」
「私は…ただの究極生命体だよ。それより、大体わかったよあなたがどういう人なのか」
それを聞いたシェインは眉をひそめる。
「我を理解しただと?笑わせるな。少し人間より神に近づいたからといってあまり調子に乗るなよ」
「わかるよ。だってあなた、私が会ってきた誰よりも単純だもん」
刹那、シェインは雷撃を飛ばす。
それは私の頬をかすめる。痛い…!完全耐性を完全に無視してる…
「痛いであろう。これからもっと痛めつけてそして、逝かせてやろう」
するとシェインは無数の雷撃を放つ。
最初の数発はどうにかして避けていたが遂に一発当たると、次いで二発、三発と、ほぼ全ての攻撃をくらってしまった。
これはかなり不利な状況だ。打開策はあるにはあるけど、《三叉戟》でかなり魔力がなくなったため魔力がギリギリ足りるかどうかというところだ。
シェインがこちらに向かってくる。そうして私の前に立つと雷でできた糸のようなもので拘束する。
「殺す前に一つ機会をやろう。私に何か懺悔することはないか?」
「本当に…単純だね。少し不愉快になっただけで考えも無しにただ全力で叩きのめす。そんなんじゃ王様、お父さんに期待されないのも当然だよ」
「…何?」
「あなたは異生命体に何か恨みがあるわけでもない。ただ自分よりもお父さんに期待される人たちに嫉妬してるだけだよ。ダイアナに致命傷が無かったのはあなたの機嫌が良かったから。ダイアナが転生者、お父さんに最も特別扱いされる存在の1人を倒してくれてスッキリしたんでしょ」
「…もう戯言は済んだか。じゃあ…消えろ」
シェインが金属器を振り下ろす。それと同時に私は能力を発動させた。
「《カウンター》!」
能力無条件反射能力、なんとか発動できるだけの魔力は残っていたようだ。
反射された自身の攻撃を受けたシェインは衝撃により吹き飛ぶ…ことはなく少し怯みはしたが、すぐに体制を立て直し、再び攻撃の態勢に入った。
「うそ…」
思わず声に出てしまう。完全に無防備だった相手に相手の最大火力を返したはずだったのに。
もう魔力も残っていないため有効打はない。
ごめんデスティ、カナデさん、負けちゃった。
そう思った瞬間、頭の中に文字が浮かび上がる。
追い詰められた体は勝手にその文字を読み上げていた。
「《究極》」
その瞬間、世界が急に遅く見えた。
しかし自分は遅くなることはない。
かわりに頭の中を黒いもやのようなものがどんどん浸食してくる。
早く勝負を終わらせるため目の前まで迫っていたシェインの攻撃を避ける。
そして一撃シェインに拳で攻撃をする。
すると今度は頭の中で声がした。
『これで1人目』
同時に私の意識は真っ暗な闇の中へと落ちていった。




