究極生命体、お喋り 2
「…こうなると思ったよ……」
私とダイアナがデスティの部屋の前まで来るとドア一枚隔てた向こう側から疲れた声が聞こえてきた。
「…カナデさんの命令じゃ仕方ないか……」
そう言うとデスティはドアを開け私達に入ってこいと言うように、手招きした。
「お、おじゃまします…」
昨日の夜のこともあり、少し気まずい空気が流れていたが、入らないわけにもいかないので私達は部屋の中へと歩みを進めた。
「…一応言っておくけど、私、教えるの苦手だから。」
デスティは念を押すように言う。
「…じゃあまず能力についてから―」
「ちょっと待って。」
デスティが説明しようとしたのを遮ったのはダイアナだった。
「何で急に私達の先生が変わったのか教えてほしいわ。それと、なぜあなたなのかも。」
私もそれは気になっていたためデスティの方を見る。
ダイアナのその言葉にデスティは一瞬考えたようだったが、すぐに元の様子に戻った。
「…それを知りたいなら、それなりの覚悟が必要。あなた達、真実を知る覚悟はできてる?」
デスティが発したその言葉には、確かな重みがあった。様子は先程までと変わりはないのに、先程よりもプレッシャーを感じる。
「か、覚悟って…そんな、大げさなんじゃ…」
「…できてないならいい。続きを始めるよ
。」
「わわ、まってまって!できてる!できてるよ!」
「私もできてるわ。早く話して。」
それを聞くとデスティは一度ため息をついてから話し始めた。
「…簡単に言うと、あなた達がカナデさんのお気に入りだから。」
少し意味がわからない。カナデさんのお気に入りだったらなぜ教師まで変える必要があるのか。
それを聞こうとする前に、デスティは説明をし始めた。
「…この学校から卒業した生徒はね、みんな必ず国の特殊部隊に入れられるの。そのための授業をここでは行う。」
「え⁉︎でもこの学校って異生命体の力を制御させるのが目的じゃないの?」
「…確かに表向きはそうだし、実際間違ってもいない。ただ、そんな強大な力を国がそのまま逃すと思う?」
確かに言われてみればそうだ。
いくら暴走による被害がなくなるとはいえ、異生命体の力は放しておくには強すぎる。
「じ、じゃあもしかして王様がこの学校へ支援を行っているのも…」
「…そう、全部異生命体の力を手に入れるため。」
「で、でもその力は何のために使うの?他の国と戦争が起こる気配もないし…」
「…してるよ、戦争なら。ここ数年間ずっとね。」
その言葉を私達はとても信じられなかった。
この国の周りは平和そのものだ。戦争中だなんてとても思えない。
「…といっても相手は国じゃない。別の世界。」
「べ、別の世界⁉︎別の世界っていけるものなの⁉︎」
「…世界を移動する方法ならずっと前からある。ただ、数年前までは手が出せなかった。別の世界の人々が強すぎたから。」
世界が複数あるのは皆が知っている常識だ。
しかし、別の世界にいけるというのはおそらくほとんどの人は知らないだろう。
別に私が田舎者だからというわけではなく、ダイアナもとても驚いているようだった。
「それで数年前から急に増えた異生命体を兵士として送り込んでいるのね」
「…そう。でも暴走すると大変だから、カナデさん達にこの学校を任せた。」
なるほど、いまいちこの学校が成り立つ理由に納得できなかったが、やっと納得することができた。
「…でもその時に、カナデさんがなかなか了承してくれなかったらしいの。それで王国はカナデさんに、お気に入りの生徒が見つかれば一年につき3人までならカナデさんの元においていいという条件を出した。」
「そ、それで、今年は私達がカナデさんのお気に入りの生徒ってこと?」
「…そう、だけど珍しい。最近カナデさん、色々あって、異生命体から距離を置いてたから。いきなり2人も気に入るなんて……」
そういえば王都に来た時に、カナデさんは王都に来るのが久しぶりだと言っていた。
王都にいない間は異生命体とはあっていなかったのだろう。
「…まあ、そういうわけ。それと、なぜ私が先生なのかだけど……」
そういえばダイアナがそんなことも聞いていた気がするが、先程までの内容が衝撃ですっかり忘れていた。
「…カナデさんはあなた達に学校とあまり関わりを持って欲しくないんだと思う。」
デスティは悲しげな表情をして話した。
デスティはカナデさんの何を知っているんだろう。
結局この日はそれを聞くことはなかった。




