究極生命体と授業 2
インスティ先生が無言で放ったその一撃は、私達生徒全員の戦意を喪失させるには十分だった。
ダイアナも驚きに目を見開いている。
「む、無詠唱であんな威力の魔法…す、すごい…」
「ていうか魔法って無詠唱で打てるんだ…私知らなかったよ…」
「アルトは知らなくても無理ないわ。無詠唱魔法なんて王都にも使える人はほとんどいないもの。」
そのダイアナの言葉を聞いていたのかインスティ先生は私達の方に向かって話した。
「人ごとではないぞ。皆にはこれから1ヶ月で無詠唱で魔法を発動できるようになってもらう。」
「い、1ヶ月⁉︎そ、そんなのできるわけ…」
ダイアナのその言葉に、インスティ先生は先程自分が吹き飛ばした生徒4人の回復を行いながら答える。
「問題はない。皆は魔法を使う才能だけはあるのだ。特に君達カナデのお気に入りはな。」
カナデさんのお気に入り。
そういえば食堂でデスティもそんなことを言っていた気がする。
「何でカナデさんのお気に入りだと才能があるってことになるんですか…?」
私がそう聞くと、インスティ先生は一瞬答えを迷ったようで反応が遅れた。
「………カナデは強いものに敏感だからな。カナデがそばに置く者はいつも決まって強者となる。」
本当はもう少し何か理由がある気がしたのだが、聞こうとする前にインスティ先生は再び話し始めてしまった。
「さて、他にやりたい者はいないのか?それとも、降参して素直に学ぶ気になったか?」
もうこの場にはインスティ先生に逆らおうとする者はいなかった。
「よし、ならば先程の4人が起きたら授業を再開する。もうすぐ目覚めるはずだ。」
その言葉通り、数分後に彼らは目覚めた。
「あ、あれ…俺達は…」
「災難だったねー。あなた達、最初丸焦げだったんだよ。」
近くにいた私は少し困惑していた彼らに、何が起こったのかを説明した。
「ま、まさか最上級の炎魔法でも負けるなんてな…」
「ま、まあ相手は先生なんだし…」
私が彼らを励まそうとしていると、ダイアナに袖を引っ張られた。
「アルト、先生が私とあなたを呼んでるわ。」
そう言われたので2人でいつのまにか離れたところにいたインスティ先生のところまで行くと、
「アルト、ダイアナ。悪いが1ヶ月の間君達だけ別の者に教わってもらいたい。」
「へ?まあいいですけど、何でですか?」
「カナデからの命令でな。1ヶ月後に向けて君達を最大限成長させたいらしい。」
先程から度々1ヶ月という期間が出てくる。
私は気になって聞こうと思ったのだが、ダイアナが先に聞いてくれた。
「さっきから1ヶ月後ばかり意識しているようだけど、1ヶ月後に何かあるの?」
それに対し、インスティ先生は忘れていたような反応で答えた。
「ああ、まだ言っていなかったな。1ヶ月後、この学校と王都にある王立魔法学校とで魔法での試合を行うのだ。」
それを聞いただけでも驚いたのだが、さらに驚きは続いた。
「それで、カナデは君達に最大限に力を発揮してもらうため、デスティ・ルークシオンと3人で修行せよとのことだ。」
「デ、デスティも⁉︎」
「…まあデスティなら大丈夫だろう。期待しているぞ。」
そう言ってインスティ先生は別の生徒達の元へ戻っていってしまった。
「…つまり私達の先生は……」
私の言いたいことがわかっているようでダイアナが先に続けた。
「デスティってことね。」
こうして私達は、授業初日の途中にしていきなり教師が変わることになった。




