第一話「全ての終わりはハジマリ」
「この話はフィクションでございます。」
「維新」とは、「これあらた」と読み、変革の意味を持つとされている。
天保元年(1830年)に水戸藩藤田東湖が、藩政改革への決意表明にて
中国最古の詩篇とされる「詩経」大雅・文王篇の一節を引用したことが
日本最古と言われている。
藩政改革は、江戸時代の幕藩体制において、
各藩が行政の再建のために行った政治・経済の改革の事を指す。
特に江戸幕府の天保の改革などの幕政改革と同時期に盛んに行われていた
改革の成果により藩財政が改善されたとして有名なのが、薩摩藩や長州藩などがある。
江戸時代、経済力や政治力のある有力藩を「雄藩」と呼ばれており、
江戸末期になると薩摩藩、長州藩、土佐藩、備前藩、水戸藩などがある。
――そしてこの話には全く関係説明でもあったりするのだが。
【-幕末維新篇-】
ある盗みを働いた男達がいた。
その男達は皆、同じ村出身で普段は百姓として一生懸命に働いていたが、
自分たちの家に代々受け継がれて来た土地を耕し、家族が食べていけるだけの
作物を作っていた。
だがある日のこと、そこに役人と名乗る男達が現れた。
すると大そう大事そうに黒の漆塗りの箱から巻物を取り出し、
ゆっくりと広げ書かれているであろう文字を読み上げた。
役人の言うことなので小難しい言葉を並べ何を言っているか
百姓たちには分からなかった。意味を尋ねると役人は百姓達を鼻で笑い、
「1度言っても分からぬものに2度言う必要はない」そう言い放った。
その話をたまたま村に世話になっていた旅の男が聞き、百姓も人間、
身分の差はあれど上の立場の人間が取る態度ではないと怒りをあらわにしたそうだ。
旅の男は村の人たちにお礼を言うと西へ向かったそうだが定かではない。
後から分かったことなんだが、役人が来て述べたことは、
その村の土地は元々は幕府が無償で貸していた土地だから将軍様に対して
取れた作物を納めるようにとのこと。
逆らえば先祖代々の土地は失い、家族も養えない。強制的に納めるしか選択肢はない。
将軍が戦をして領土を広げる度に納める年貢の量は増すばかり、
次第に家族で食べる分も確保できなくなってきた。
すると以前来た役人が来て「無ければ盗んででも代わりの物を容易せよ」
村の男達は純粋過ぎた。土地を家族を守るために町に出て盗みを働いた
そして捕まった。
お白州の場で男達は全てを話した。だが盗みは即刻打ち首獄門となっており、
百姓の言うことなど誰一人聞く耳を持たなかったという。
そのことが切欠で村では一揆が起きた。
次第に同じような立場の村から村へと伝わり立ち上がる百姓達が増えていった。
各地で一揆が起こり幕府が本格的に鎮圧に乗り出した、多勢に無勢とはいえ、
戦い慣れをしていない百姓達が勝てるわけもなく、束の間の出来事であった。
それからしばらくして、これらの一揆の発端となった村は消え、今では道もないそうだ。
だが、その村の場所を覚えている男がいる。それは村で世話になった旅の男だった
男は大きな町で働いていた。あの出来事があってから心に大きな杭のようなものが
刺さっている感覚があった。村に対して何もしてやれなかった、助けてもやれなかったと。
ある日、没落した武家屋敷に夜な夜な幽霊が現れると噂がたった。
男は提灯を持ち、丑三つ時にその屋敷を訪ねてみた。
すると、微かではあるがぼんやりとした明かりが屋敷内に見えている。
静かに屋敷へと近づいて行くと、擦るように地面を歩きながら近づいて行く。
周りの闇は何かのようにまとわりついてくる錯覚に陥るほど深く黒く
そして気配をさせている。
虫の音すらも閉じ込めているように――
ふいに腐った屋根板を踏み音を僅かに立ててしまった。
周りの闇が何かをその中に覆い隠し、少しずつ近づいてくる。
提灯をたたみ、外側を燃やすと、闇に向けて投げ込む。
するとそこには数人の人が立っていた。
男は直ぐに刀を抜き、立ち構える。
だが相手も動く気配はないまましばらく時が経つ。
月明かりが少し強くなった頃には目も少し慣れ、相手の姿が見えるようになった。
そこには見覚えのある男達が立っていた。
そう、昔世話になった村の男達の見知った顔が並ぶ――
そして男達は何かを話す訳も無く消えていった。
だが男には確かに聞こえた、彼らの叫びが――
朝になり、人手を借り出した男は、昨晩の男達がいた辺りを掘らせたそうだ。
するとそこから人骨が大小様々な数が出てきた。
ある人骨が大事そうに手紙を袋に入れて抱いていた。そこには役人が村を周り、
盗みを促し周っていたこと。盗んで来た物を自分が着服していたことや、
見せしめと称して盗みを働いた者を捕まえて自分の手柄にしていた事などだった。
そして誰も最初から盗みなどしていなかったのだ。
家族の分の作物や家財道具などを売ってお金にしていた。
それでも工面出来なかったものは村を捨てるしかなかったと――
でも村の土地一つだけでも守ろうと村人全員で出したものを質屋に持って行く際に
仲間が捕まってしまったとあった。
奇しくもこの真実は知った時には一揆から10年以上の月日が経っていた。
その時の役人は幕府で役職を取り立てられていた。
多分、その事件の際に貯めた金で出生したのだろう、だが同じ役人の立場として
何もすることが出来なかった。とても腹立だしく、とても悲しく、
とても苦しかった――
それから更に数年が経った頃、その時の武家屋敷の出来事がどういうわけか、
変な伝わり方をして、どうしても晴らす事の出来ない恨み辛みを抱えたものが、
屋敷から生え伸びた木に紐を括りつけ、それが次第に侵食され切れると気持ちが晴れるとか。
だが、今ではその紐も3つ編み、4つ編みと恨みの深さに合わせて編みこまれ、
子々孫々、例え来世に生まれ変わろうともこの恨みは消えずに、
相手を呪い続けるという意味で括っているそうだ。
それが日に日に増えていて困ったもんだ――
酒屋主人
「凄い話ですねぇ、旦那!
・・・で、結局は何が言いたい話なんですか?」
門戸無用
「いつの時代も腐った奴は居るって話だ。
お代はここ置いとくぜ!」
酒屋主人
「へい、毎度あり!!」
門戸無用
「・・・夏が終わると思い出していけねぇ」
黒舟砲撃、開国、そして戦争――
幕府の将軍も老中も新しくなり、以前より平和で活気ある大江戸
だがそれは表の話、裏では以前にも増して黒く渦巻いてやがるぜ。
――もう遠山が死んで5年経つのか
第一話 「全ての終わりはハジマリ」
-次話へ-
遠山禁四郎
「真面目に聞いて損したぜ!あれ?死んでるだと!?」




