表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の条件  作者: KEI
第18話 塞がれた洞窟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/224

(二)知らせる道が、この洞窟なんだ

◆ 塞がれた道


村の集会所では、疲れた顔の大人たちが地図を囲んでいた。


村長。


自警団長。


荷運び商人。


薬師。


鍛冶屋。


宿屋の女将。


そこへ旅人であるロアンとミルカも呼ばれた。


最初は、ただ事情を聞くためだった。


村長は二人を見て、言った。


「旅人か」


ロアンはうなずく。


「はい。洞窟を通って隣国側へ行く予定でした」


「今は通れん」


村長は地図の山腹を指した。


「この洞窟は、昔から商人も薬師も荷運びも使ってきた道だ。塩が来る。鉄が来る。薬の材料が来る。こちらからは薬草や布や干し肉が向こうへ行く」


ミルカが地図を見る。


「数日前から塞がれているんですか」


自警団長が答えた。


「五日前だ。最初は小鬼が二、三匹入っただけだと思った」


「違ったんですね」


「違った」


自警団長は、机の上に折れた槍の穂先を置いた。


「奥に巣を作り始めてる。小鬼だけじゃない。低級魔獣が何匹かいる。湿った壁にはスライムが増えてる。足場が悪い」


ロアンは眉を寄せる。


「一匹一匹は、倒せる相手ですか」


自警団長はロアンを見た。


「一匹一匹はな」


その言い方で、ロアンは少し嫌な予感がした。


自警団長は続ける。


「洞窟の中で数がいると別だ。狭い道では前に出られる人数が限られる。後ろは荷物と負傷者で詰まる。音が反響して、敵の数も位置も分かりにくい。水たまりにスライムがいる。小鬼は石を投げる。暗がりから魔獣が飛び出す」


ロアンは、村外れで覚えたことを思い出した。


弱い魔物でも、場所で危険は変わる。


水場ではスライムが速い。


逃げ道がなければ、小さな相手でも厄介になる。


自警団長は地図の洞窟中央を指した。


「ここに広い空洞がある。片側から入ると、そこで集まった魔物に押し返される」


ミルカが静かに問う。


「反対側からは?」


村長が苦い顔をした。


「向こうの村も困っているはずだ。だが、連絡が取れない」


ロアンはすぐに言った。


「知らせればいいんじゃ」


村長は地図を指で叩いた。


「知らせる道が、この洞窟なんだ」


集会所に、重い沈黙が落ちた。


◆ 止まる荷


洞窟が塞がれると、困るのは旅人だけではなかった。


荷運び商人が、苛立った声で言った。


「塩が向こうに届かない。こっちには鉄が来ない。三日なら我慢できる。十日続けば値が跳ねる」


薬師が続ける。


「薬草はまだある。けれど、調合に必要な石粉が向こうから来る。これ以上止まると、熱冷ましが足りない」


鍛冶屋が腕を組む。


「農具の修理に使う鉄が来ない。春前にこれをやられると困る」


宿屋の女将がため息をついた。


「商人が泊まるのはありがたいけど、米は減るんだよ。馬も食べるしね」


ロアンは、荷馬車の列を思い出した。


止まっている荷。


濡れないように布をかけられた荷。


行きたいのに動けない人たち。


荷が届かなければ失敗。


それは一台の荷馬車だけの話ではなかった。


村全体の話だった。


洞窟が塞がると、生活が詰まる。


ロアンは地図を見た。


「洞窟の魔物を倒せば、また通れるんですよね」


自警団長がうなずく。


「倒せればな」


「入口近くのやつなら、何とかなるかも」


自警団長はすぐに答えた。


「入口近くならな」


ロアンは黙った。


自警団長は言う。


「問題は奥だ。逃げ場がない。押し込めば、後ろが詰まる。引けば、魔物がついてくる。負傷者を抱えた瞬間に終わる」


ミルカが地図から顔を上げた。


「魔法も使いにくいと思います」


村長が見る。


ミルカは指で洞窟の線をなぞる。


「火を大きくすると煙がこもる。風を使えば奥の埃を巻き上げる。水は足場を悪くする。明かりも必要だけど、明るくしすぎればこちらの位置も見える」


ロアンはミルカを見た。


「難しいな」


「洞窟だからね」


「洞窟じゃなければ」


「洞窟じゃなければ、国境洞窟じゃない」


「それはそう」


自警団長が少しだけ笑った。


しかし、すぐに表情を戻す。


「両側から入れれば勝てる。少なくとも、勝てる目はある」


ロアンは地図の反対側を見た。


「向こうの村と同時に?」


「そうだ。空洞に集まる魔物を二手に分けられる。逃げ道も塞げる。だが、時刻を合わせられない」


ミルカが低く言う。


「問題は、戦闘力じゃなくて連絡ですね」


村長はうなずいた。


「そういうことだ」



※第18話「塞がれた洞窟」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ