(二)条件照合
◆ 条件照合
現魔王は四人を観察した。
ロアンの腰の剣。
よく手入れされている。
刃は素直で、握りも馴染んでいる。
だが、中央聖剣ではない。
聖都の紋もない。
神殿の封印刻印もない。
伝承にある光もない。
ミルカの杖。
古い。
飾りは少ない。
魔力の流れは細く、鋭い。
宮廷魔術師の証印はない。
だが、魔力制御の密度は、ただの地方魔術師のものではない。
エナの装束。
神官のものではある。
しかし中央神殿の高位神官の礼装ではない。
祈りの道具も、旅用に削られている。
それでも、彼女の視線は、魔王の魔力が揺れる前に小さく動いた。
ガルドの剣。
名門流派の紋はない。
派手な構えもない。
だが、立ち方に隙がない。
膝も、肩も、剣先も、すべてが動く前の位置にある。
現魔王は言った。
「東の血筋ではない」
ロアンが答える。
「西の村の出です」
「中央神殿の神託は」
エナが首を横に振った。
「受けていません」
「聖剣は」
ロアンは腰の剣を見た。
「これですか? もらいものです」
「誰から」
「鍛冶屋さんから」
「聖都の鍛冶師か」
「いえ。田舎町の」
竜将が鼻を鳴らす。
だが現魔王は笑わなかった。
彼は次を問う。
「聖痕は」
四人は顔を見合わせた。
ミルカが答える。
「そういうのは、ありません」
「神殿の認定は」
「ありません」
「天空要塞は」
ガルドが短く言う。
「通ってない」
ミルカが補足した。
「遠回りしました」
「攻略していないのか」
「してません」
「なぜ」
ミルカは一瞬、答えに迷った。
それから、当然のように言った。
「行く理由がなかったので」
玉座の間が静まった。
過去の勇者は天空要塞を避けなかった。
避けられなかった。
魔王城へ向かうには、あそこを落とす必要があった。
そう記録されていた。
だが、目の前の四人は違う。
攻略していない。
避けた。
行く理由がなかったから。
現魔王は、言葉を選ぶように問う。
「貴様らは、何者だ」
ロアンは、さきほどと同じように答えた。
「アークガルム王国第八傭兵団第三遊撃部隊、灰の一団です」
魔王にとって、それはまだ答えにならなかった。
所属ではない。
職名ではない。
呼び名でもない。
自分が問うているのは、それより奥のものだった。
なぜ、ここにいる。
何によって、ここまで来た。
何の条件を満たして、玉座の前に立っている。
その答えが、まだ見えない。
※第14話「貴様は何者だ」は全四回です。
続きます。
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