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勇者の条件  作者: KEI
第13話 条件なき者たち

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(二)条件がない。だが、ここにいる

◆ 突破ではなく通過


戦略会議室。


報告が届いた瞬間、竜将が机を叩いた。


「少数に突破されたのか」


城内警備隊長の声は悔しげだった。


「突破されたというより、抜けられました。交戦を避け、結界の要だけを外し、最短路を選んでいます」


死霊宰相が地図を開く。


「最短路だと?」


吸血侯が言う。


「城内構造を知っているのか」


「不明です。ただ、迷いがありません」


現魔王は静かに問う。


「旗は」


「ありません」


「聖剣は」


「確認できません」


「聖痕は」


「不明。ただし、聖痕を掲げる様子はありません」


「神殿騎士か」


「装備が違います」


「各国軍の精鋭か」


「軍装ではありません」


「数は」


「四」


「四」


竜将が低く繰り返す。


「四人で、魔王城外縁を抜けたというのか」


警備隊長は答えない。


答えは、すでに報告に含まれていた。


死霊宰相が、侵入経路に赤い線を引く。


外縁第三門。


兵站通路。


結界管理路。


内郭へ至る補助階段。


そこは正面突破の道ではない。


しかし、魔王城の構造を知らなければ選びにくい道でもあった。


吸血侯が目を細める。


「正面突破ではありません。目的地へ向かう道だけを選んでいる」


竜将が言う。


「ならば、ただの侵入者だ。勇者なら正面から来る」


現魔王は竜将を見た。


「条件に合わぬから脅威ではない、とは言えぬ」


竜将は言葉を止めた。


現魔王は、地図上の赤い線を見ている。


転移ではない。


大軍ではない。


天空要塞も落ちていない。


正門も破られていない。


それでも、四人が中にいる。


◆ 条件照合


死霊宰相が記録棚へ指示を出した。


「勇者条件照合」


記録官たちが一斉に動く。


東の勇者血族。


中央神殿。


聖剣。


聖痕。


神託。


天空要塞。


西方灰色外套。


灰色の報告。


複数の札が、長卓の上に並べられる。


記録官が読み上げる。


「勇者血族」


吸血侯が答える。


「該当情報なし。東の血族は封鎖内。脱出報告なし」


「中央神殿の神託」


「なし。中央神殿の勇者認定機能は停止中」


「聖剣」


「確認なし。中央聖剣は封印中」


「聖痕」


「噂なし」


「神殿による認定」


「なし」


「天空要塞攻略」


死霊宰相が顔を上げる。


「なし。天空要塞は無傷。異常なし」


「各国軍指揮権」


「確認なし。軍旗なし。命令系統なし」


「勇者旗」


「なし」


竜将が言う。


「ならば勇者ではない。ただの侵入者だ」


吸血侯が静かに返す。


「ただの侵入者が、外縁第三門を抜け、内郭へ向かっています」


会議室に、重い沈黙が落ちた。


条件に合わない。


だが、進んでいる。


現魔王は、長卓の上の札を見た。


血筋なし。


神託なし。


聖剣なし。


聖痕なし。


認定なし。


天空攻略なし。


旗なし。


そして、侵入中。


「西方灰色外套」


吸血侯がつぶやく。


死霊宰相が資料を開く。


「西方灰色外套は、活動報告途絶。勇者候補、非該当。報酬制少数戦力の可能性。個人単位の人助け報告あり。東方接近なし。中央神殿接続なし」


竜将が顔をしかめる。


「死んだのではなかったのか」


吸血侯が答える。


「死亡確認はありませんでした。活動報告が途絶えただけです」


「傭兵まがいの連中が、魔王城まで来たというのか」


死霊宰相は、報告書を重ねた。


「侵入者の外套、灰色。人数四。戦闘役、魔術役、治癒役、指揮役らしき者を確認。西方灰色外套との関連可能性あり」


現魔王は低く言った。


「条件がない」


誰も答えない。


「だが、ここにいる」


その言葉は、会議室の温度を下げた。



※第13話「条件なき者たち」は全五回です。

続きます。


作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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