(一)復旧計画
◆ 復旧計画
魔王城、戦略会議室。
長卓の上には、三つの倒れた札が置かれていた。
深海拠点、陥落。
深森拠点、陥落。
火山拠点、陥落。
その横には、転移ゲート復旧表が広げられている。
中央中継門、仮復旧準備中。
東部中継門、術式再構成中。
北方補給門、部材搬入待ち。
西部中継門、座標石交換待ち。
沿岸監視門、軽微損傷。
旧街道監視門、接続不安定。
国境補助門、座標調整待ち。
魔王大陸の本土門は残っていた。
魔王城。
深森。
火山。
南方軍港。
それらの門は生きている。
だが、人間側大陸に張り出していた線は切られ、前線への命令と報告は遅れていた。
死霊宰相が、骨の指で表を押さえる。
「三拠点の完全奪還には時間がかかります。ただし、人間側が保持を続ける余力も限られています」
竜将が言う。
「ならば、こちらから奪還に出るべきです」
「焦れば、こちらの兵站も崩れます」
死霊宰相は淡々と答えた。
「深海方面は船団の残骸と潮流で乱れています。深森方面は森が荒れ、魔物の配置も崩れています。火山方面は洪水後の地形が不安定です。拠点を戻すにしても、連絡線が整わなければ再保持が難しい」
転移門管理官が、青ざめた顔で続ける。
「中央中継門の仮復旧を最優先に進めています。東部中継門はその次です。西部は、申し訳ありませんが後回しになります」
吸血侯が細い目で地図を見る。
「西の報告はさらに遅れますね」
「代替通信で補う」
現魔王が言った。
「鳥、密偵、商人道、伝令。使えるものは使え」
竜将が身を乗り出す。
「しかし陛下。拠点を三つ失っております。このまま待てば、人間どもに足場を固められる」
「深海を落とした船団は動けない。深森を抜いた軍も止まっている。火山を落とした軍も進めない」
現魔王は、倒れた三つの札を見た。
「拠点は戻せる。だが、魔王城を空にしてまで戻すものではない」
竜将は、反論しかけて黙った。
死霊宰相が記録する。
三拠点奪還準備、継続。
転移ゲート復旧、継続。
魔王城防衛、優先維持。
その時、火鏡塔の信号係が入ってきた。
「天空要塞より、定時報告です」
会議室にいた者たちの視線が、一斉に地図の北へ向いた。
雲の上の要塞。
魔王城へ至る最後の道を見下ろす、空の目である。
※第12話「空は異常なし」は全五回です。
続きます。
作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。
※ネタバレ範囲にご注意ください。
https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/




