(一)切れた線の後始末
◆ 切れた線の後始末
魔王城、戦略会議室。
長卓の上には、転移ゲートの復旧表が広げられていた。
東部中継門。
西部中継門。
北方補給門。
中央中継門。
沿岸監視門。
旧街道監視門。
国境補助門。
前話で同時に切られた、人間側大陸の線である。
魔王大陸の本土門は残っている。
魔王城も、深森も、火山も、南方軍港も、門そのものは生きている。
だが、人間側大陸に張り出していた前線の線は傷ついた。
その遅れは、すでに数字になっていた。
転移門管理官が、青ざめた顔で報告する。
「中央中継門、仮復旧まで三日。東部中継門、仮復旧まで五日。北方補給門、復旧見込み七日。西部中継門は、座標石交換が必要です。旧街道監視門は、接続不安定。国境補助門は座標調整待ちです」
死霊宰相が地図上の光を確認した。
「連絡経路は代替できます。ただし、通常時の三倍から五倍の遅れが出ます」
竜将が舌打ちする。
「その遅れで拠点が落ちる」
転移門管理官が肩を震わせた。
「全力で復旧に当たっています」
「全力で間に合わねば意味がない」
竜将の声に、室内の魔族たちが身を固くした。
現魔王は手を上げた。
「竜将」
竜将が黙る。
「急がせろ。だが、急げば直るものではない」
「しかし」
「分かっている」
現魔王は、地図を見る。
東の封鎖。
西の遅れ。
北の補給。
中央の中継。
南の魔王大陸。
深海。
深森。
火山。
天空。
それぞれの線が、まだ完全には戻っていない。
「復旧班を増やせ。だが、東の封鎖から強戦力を抜くな。中央中継の仮復旧を最優先。東部中継を次に戻せ」
死霊宰相が記録する。
転移ゲート復旧、継続。
連絡遅延、通常時の三倍から五倍。
中央中継、最優先。
東部中継、第二優先。
西部中継、後回し。
その時だった。
会議室の外が騒がしくなる。
扉が開き、海魔将の副官が入ってきた。
鎧は裂け、肩には黒い海藻のようなものが絡みついている。
彼は膝をついた。
「深海拠点より、緊急報告」
会議室の視線が集まる。
副官は、声を絞り出した。
「深海拠点、陥落」
誰も、すぐには言葉を発しなかった。
※第11話「拠点は落ちる、勇者はいない」は全五回です。
続きます。
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