表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の条件  作者: KEI
第8話 血筋の檻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/190

(五)従来の流れは、だ

## 従来の流れは


魔王城、戦略室。


対勇者戦略の進捗確認が行われていた。


記録官が読み上げる。


「東辺境封鎖、継続。中央神殿の勇者認定機能、停止。導きの石、破壊。人魚、水の精霊王、実在未確認。天空要塞、監視網強化。勇者血族、移動制限および支援者監視、進行中」


長卓には、それぞれの項目を示す札が並んでいる。


出身地。


一族。


神託。


聖痕。


聖剣。


仲間。


その周囲に、さらに多くの小札が増えていた。


東辺境封鎖。


中央神殿沈黙。


聖剣封印。


導きの石破壊。


特殊助力現存せず。


天空要塞強化。


血族移動制限。


竜将が満足げに言う。


「これだけ封じれば、勇者など出ようがありません」


死霊宰相も慎重に言った。


「文献上の勇者発生条件は、ほぼ押さえています」


吸血侯が補足する。


「少なくとも、東の血族から中央神殿へ至り、聖剣を受け、仲間と合流する従来の流れは断たれました」


現魔王は静かに聞いていた。


完全勝利とは言わない。


油断もない。


ただ、並べられた札と記録を見ている。


「従来の流れは、だ」


竜将が問う。


「まだ懸念が?」


「未知の流れは、未知である限り見えぬ」


死霊宰相がうなずく。


「監視を続けます」


「続けろ」


現魔王は言った。


「東は封じた。神殿は沈黙させた。聖剣は封じた。血筋は檻に入れた。だが、戦略は終わりではない」


吸血侯が言う。


「次の報告は」


現魔王は、地図の西を見る。


「西の報告も見たい」


竜将が少し眉を上げた。


「西ですか」


「監視は維持している」


「低優先度では」


「低優先度と、不要は違う」


死霊宰相が記録官へ合図する。


別の報告書が開かれた。


## 西の小さな報告


報告官が読み上げる。


「西の国境地帯。洞窟封鎖は維持。低級魔物の増殖は、人間側の間引きにより安定傾向。周辺村の困窮は継続」


死霊宰相が問う。


「強個体は」


「確認されていません」


「神殿、勇者血族、聖剣、聖痕に関する報告は」


「ありません」


「王国軍の動きは」


「国境周辺に小規模な偵察はありますが、大規模進軍の兆候はありません」


「では低優先度で監視継続」


報告官は、そこで一瞬迷った。


死霊宰相が顔を上げる。


「何かあるのか」


「ただ、村々で若い者が魔物退治に慣れ始めている、との報告があります」


竜将が言う。


「低級魔物の間引きだろう」


「はい」


報告官はうなずく。


「被害はあります。死者も出ています。ただ、低級魔物の間引きが以前より早い。村の自警団、猟師、若い冒険者らしき者が連携する例も出ています」


死霊宰相は帳簿を見る。


「困窮下の自衛行動だろう」


吸血侯が少し考える。


「名前の出ている者は」


「今のところ、特定名はありません。村ごとに違います。猟師の息子、鍛冶屋の弟子、薬師見習い、巡回神官の護衛など」


「組織化は」


「確認されていません」


死霊宰相は記録官を見る。


「記録に残せ。優先度は現状維持」


記録官が書く。


西国境地帯。


低級魔物間引き、安定傾向。


村落自衛行動、増加。


強個体なし。


勇者条件該当なし。


低優先度監視継続。


現魔王は、その報告を聞いていた。


「死亡率は」


報告官が答える。


「村によって差があります。低級魔物のみなら持ちこたえています。ただし、交易停止による困窮が続けば、別の被害が増える可能性があります」


「監視を続けろ」


「は」


竜将が軽く息を吐く。


「西は相変わらず、国境分断の範囲ですな」


現魔王は地図の西を見ていた。


「今は、そうだ」


その言葉だけが、記録には残らなかった。


## 檻


血筋は檻に入れられた。


勇者の一族は生きている。


家もある。


畑もある。


祈る場所もある。


古い剣も、古い歌も、古い誇りも、まだ完全には失われていない。


けれど、外へ出る道はない。


隣町へ向かう道は見張られた。


聖都への手紙は奪われた。


子どもを逃がす夜道には、魔物がいた。


勇者候補は、勇者候補のまま村に戻された。


殺されなかった。


だから、記録上の被害は軽微だった。


だが、外へ出られない血筋は、血筋でしかない。


現魔王の対策は、また一つ正しく機能した。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ