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勇者の条件  作者: KEI
第38話 賢者、聖女、剣聖

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(四)地方神殿の見習い

◆ 地方神殿の見習い


エナは、自分の呼び名よりも、地方神殿のことが気になっていた。


中央神殿の神官たちは、エナを中央へ取り込もうとしている。


「正式に聖女位を授けることもできます」


エナは首を横に振った。


「私は、元の神殿のことも記録してほしいです」


「地方神殿の名を?」


「はい。寂れていましたけど、そこにいました。そこで学びました。そこでロアンたちに会いました」


神官は少し困る。


「中央神殿の正式な認定がないと、後世で混乱が」


ミルカが言う。


「混乱してるのはそっちでしょ」


ロアンが止める。


「ミルカ」


ミルカは肩をすくめる。


「事実でしょ」


エナは静かに言った。


「私は聖女ではありません。でも、もしそう呼ぶなら、地方の見習いだったことも一緒に書いてください」


記録官はうなずく。


「記録します」


エナは安心しきれない。


それでも、言わないよりはよい。


ガルドが言う。


「見習い聖女か」


エナが困った顔をする。


「それも違います」


ミルカが即座に言う。


「混ぜないで」


ロアンが少し笑う。


「でも、言葉としては少し分かりやすい」


エナがロアンを見る。


「ロアンさん」


「ごめん」


ミルカがため息をつく。


「記録官の前で新しい呼び名を作らないで」


記録官はすでに書こうとしていた。


ミルカが机を軽く叩く。


「書かない」


「はい」


エナは小さく息を吐いた。


自分が聖女かどうかよりも。


あの小さな神殿が、最初から中央に見つけられていたわけではないこと。


そこにいた父のこと。


埃を払った床。


古い本。


それらが消されないこと。


エナにとっては、その方がずっと大事だった。



※第38話「賢者、聖女、剣聖」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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