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勇者の条件  作者: KEI
第28話 次の土地へ行け

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(九)セリアンからの連絡

◆ セリアンからの連絡


転移ゲート同時破壊の知らせから、さらに二日後。


灰の一団のもとへ、アークガルム王国からの連絡が届いた。


届けたのは、王国の早馬ではなかった。


街道宿を渡り歩く商人に預けられた、小さな封書だった。


封蝋はない。


だが、封の内側にだけ、セリアン参事官の細い印が押されていた。


ミルカが封を開く。


ロアン、エナ、ガルドも自然に集まった。


手紙は短かった。


まず、灰の一団が王都を出たことは、すぐに露見したらしい。


ロアンは思わず顔を上げた。


「すぐに?」


ミルカは続きを読む。


「一瞬でばれたみたい」


ガルドが首をかしげる。


「一瞬なら、隠れてないのと同じでは?」


「そうとも言う」


ロアンは頭を抱えた。


「セリアンさん、大丈夫なのか」


ミルカはさらに読み進める。


セリアンが通行手形を用意したことも、密書の一部を持ち出したことも、すぐに分かった。


ただし、それは完全な失敗ではなかった。


実は、高官の一人が事前に気づいていた。


気づいたうえで、止めなかった。


ロアンは目を瞬かせた。


「見逃したってこと?」


ミルカは頷く。


「そう書いてある」


その高官は、表立って灰の一団を出すことはできなかった。


王国として他国へ情報を渡す決定も、灰の一団を自由に動かす命令も、会議では通せなかった。


だが、何もしなければ転移ゲート網は残る。


だから、見逃した。


見逃すだけではなく、ある程度の根回しもしていた。


国境の検問が、完全な追捕命令を受け取らないように。


辺境巡回任務の書類が、すぐには無効にならないように。


王国軍の一部が、灰の一団を敵として扱わないように。


後から合流できる余地が残るように。


エナがほっと息を吐いた。


「では、セリアンさんは……」


ミルカは手紙の最後を見る。


「一週間の謹慎」


ロアンは固まった。


「一週間?」


「一週間」


ガルドが言う。


「首は飛ばなかったんだな」


「飛ばなかった」


エナは胸に手を当てた。


「よかったです」


ロアンも大きく息を吐いた。


「本当によかった」


ミルカは手紙を畳んだ。


「ただし、表向きは叱責。独断で書類を動かしたことには変わりないから」


「でも、一週間で済んだ」


「高官が見逃していたから。あと、結果が出たから」


ロアンは黙った。


結果が出なければ、違っていたかもしれない。


密書が届かず、ゲート破壊が失敗していれば、セリアンはもっと重い処分を受けたかもしれない。


灰の一団も、正式に追われていたかもしれない。


ミルカは続けた。


「それと、私たちは王国軍に合流可能。少なくとも、敵扱いはされない」


ガルドがうなずく。


「なら戻れるのか」


「戻れる。ただし、戻ったら事情聴取はされると思う」


ロアンは苦笑した。


「戻る場所があるけど、戻ったら怒られる」


ミルカが言う。


「それくらいで済むなら安い」


エナは小さく言った。


「見逃してくれた人がいたんですね」


ロアンは手紙を見た。


王国は、灰の一団を閉じ込めようとした。


けれど、王国の中にも、道を開けようとした人がいた。


セリアンだけではない。


名も知らない高官も。


手形を見て通した門番も。


止める命令を受け取らなかった国境の兵も。


全員が味方だったわけではない。


けれど、全員が壁だったわけでもない。


ロアンは言った。


「じゃあ、ちゃんと戻れるようにしよう」


ミルカが頷く。


「そのためにも、次の仕事を雑にしない」


ガルドが言う。


「次の仕事は、もう決まっているのか」


ミルカは手紙をもう一度見る。


「まだ。少なくとも、この手紙には書かれていない」


エナが少し安心したように息を吐いた。


「では、今は進むだけですね」


ロアンはもう一度、セリアンの手紙を見た。


次の土地へ行け。


そう言った人がいた。


そして、そのために道を残してくれた人もいた。


なら、進むしかない。



※第28話「次の土地へ行け」は全十回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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