(八)壊れた道
◆ 壊れた道
数日後。
街道の宿場に、早馬が来た。
最初の知らせは北方小国からだった。
「北の旧砦下、転移ゲート破壊。安定石破砕。保守記録焼却済み」
続いて、山岳都市。
「廃砦裏のゲート沈黙。副石処理完了。逃げ道一部崩落、負傷者あり。全員搬出済み」
神殿都市。
「地下水路近くのゲート停止。逆流小。神官防護班が対応」
東方商業国。
「旧街道ゲート焼却完了。符号石を回収。商人ギルドが通行止め解除を準備中」
そして、アークガルム王国。
「国内確認済みゲート、同時刻に破壊。二箇所成功。一箇所は推定外れ。小型ゲート一つは保守部隊逃走」
すべてではなかった。
推定地点の中には外れもあった。
壊し損ねた小型ゲートも一つある。
負傷者も出た。
失敗もあった。
けれど、主要な転移ゲート網は断たれた。
魔王軍の広域移動能力は、大きく削がれた。
宿場の人々は、その意味を完全には理解していなかった。
けれど、早馬が次々に来る異様さだけは分かった。
ロアンたちは、宿の片隅でその知らせを聞いていた。
ロアンは小さく息を吐く。
「成功したんだ」
ミルカが言う。
「私たちは壊してないけどね」
ガルドが答える。
「でも、届けた」
エナも頷く。
「届けなければ、壊せませんでした」
ロアンは静かに言った。
「なら、それでいい」
少しだけ、部屋の空気が軽くなった。
派手な勝利ではない。
自分たちが剣を振るったわけでもない。
ミルカが魔法で焼いたわけでもない。
エナが誰かを癒やして勝たせたわけでもない。
ガルドが敵将を斬ったわけでもない。
けれど、届いた。
動いた。
壊れた。
それは、確かな結果だった。
魔王軍から見れば、奇妙な出来事だっただろう。
各地のゲートが、同じ時刻に狙い撃ちされた。
誰かが裏で各国を結んだ。
だが、その誰かが誰なのかは見えない。
王なのか。
将軍なのか。
諜報組織なのか。
勇者なのか。
魔王軍には、まだ分からない。
ロアンたち自身も、自分たちがどう見られているのかを知らない。
彼らはただ、宿場で豆の煮込みを食べながら、早馬の知らせを聞いていた。
※第28話「次の土地へ行け」は全十回です。
続きます。
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