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勇者の条件  作者: KEI
第28話 次の土地へ行け

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(七)届ける役

◆ 届ける役


北の賢者の照合印を得てから、灰の一団は各国へ密書を運んだ。


すべてを細かく語れば、いくら時間があっても足りない。


雪の残る北方小国では、魔術師団が最初、王国の密書を疑った。


だが、北の賢者の照合印と魔力符号を見て、顔色を変えた。


「これは本物だ」


彼らはすぐに、自国領内の候補地を調べ始めた。


山岳都市では、道そのものが敵だった。


崖道。


崩れた石段。


風の強い尾根。


ガルドは平然と先に立ち、現地の兵士たちが息を切らしてついてくる。


推定ゲートは廃砦の裏にあった。


ガルドは地形を見て言った。


「ここなら、逃げ道は二つ必要だ」


現地の隊長はすぐに頷いた。


「一つでは足りんか」


「崩れたら戻れない」


「分かった。掘らせる」


神殿都市では、エナが紹介状を使った。


医療施設を通じて、神官戦力と防護班へ情報が渡る。


エナは破壊方法の説明より先に、負傷者の搬送路を聞いた。


「壊す人だけでは足りません。壊した後に運ぶ人も必要です」


神官たちは顔を見合わせ、それから動いた。


東方商業国では、商人ギルドが相手だった。


彼らは疑り深かった。


王国の情報をそのまま信じる気はない。


だが、ミルカが街道とゲート候補地の関係を説明し、ロアンが荷馬車の通る道を指し、商人の一人が苦い顔で言った。


「この旧街道が使えなくなれば、商売にならない」


その一言で、場が変わった。


商人たちは正義では動かない。


だが、道が壊れるなら動く。


それでよかった。


国によって理由は違った。


軍事。


商売。


医療。


街道。


自国防衛。


神殿の義務。


どれも同じではない。


けれど、それぞれの理由が重なって、同じ時刻へ向かって動き始めた。


灰の一団は、どのゲートも壊さなかった。


ただ、届けた。


疑われた。


待たされた。


遠回りした。


説明した。


時には、追われる前に道を変えた。


時には、宿場で一晩足止めされた。


時には、エナの「なんとなく」で橋を避けた。


時には、ガルドが山道で荷を持った。


時には、ミルカが封書の写しをその場で燃やした。


時には、ロアンが「ここで渡す相手ではない」と判断して、半日待った。


そうして、密書は届いていった。


ある宿場で、ロアンは地図を見ながら言った。


「俺たち、どこか一つのゲートに行った方がいいのかな」


作戦時刻が近づいていた。


各国はそれぞれ準備を進めている。


でも、灰の一団はどの破壊部隊にも属していない。


ミルカは首を振った。


「私たちが一箇所に行っても、全部は変わらない。各国がそれぞれやるしかない」


ガルドが言う。


「壊すのは任せるのか」


「任せるしかない。私たちが全部はできない」


エナは静かに言った。


「届けるのが、今回の役目だったんですね」


ロアンは頷いた。


火も水も風も土も、一人では世界を作れない。


誰かが情報を集める。


誰かが届ける。


誰かが壊す。


誰かが運ぶ。


誰かが治す。


足りないなら、補えばいい。


「うん」


ロアンは言った。


「あとは、できる人たちがやる番だ」



※第28話「次の土地へ行け」は全十回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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