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勇者の条件  作者: KEI
第28話 次の土地へ行け

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(五)門の外

◆ 門の外


翌朝未明。


灰の一団は、王都の西門へ向かった。


空はまだ暗い。


石畳は冷たく、門の上には兵士の松明が揺れている。


彼らは逃げる格好ではなかった。


王国の任務書を持っている。


通行手形もある。


灰色の外套も、堂々と羽織っている。


表向きは、辺境巡回任務。


実際は、各国へ密書を運ぶ仕事。


完全な脱走ではない。


完全な合法でもない。


その半端さが、ロアンの背中を少し冷たくした。


門番が手形を確認する。


「アークガルム王国第八傭兵団第三遊撃部隊、灰の一団。辺境巡回任務」


ロアンは緊張していた。


ミルカは平然としているように見えるが、手元では密書袋の紐を何度も確認している。


エナは深く頭を下げる。


ガルドは馬車の荷を見ている。


門番が紙を返した。


「通ってよし」


門が開く。


重い音がした。


王都の外の空気が、ゆっくり流れ込む。


ロアンは小さく息を吐いた。


「出られた」


ミルカが言う。


「まだ王国領内」


ガルドが空を見る。


「でも、外だ」


エナも空を見上げた。


「風が違う気がします」


ロアンは振り返った。


王都の高い城壁が見える。


その向こうに、食事も寝床も補給もあった。


でも、自分たちは門の外にいる。


道の上に戻った。


それだけで、足が少し軽くなる。


ミルカは地図を広げる。


「主要街道は避ける」


ロアンは頷く。


「追ってくる可能性がある?」


「セリアンさんの独断が早く知られたら」


ガルドが言う。


「山道なら足跡を消しやすい」


「馬車は使えないけどね」


エナがふと遠くの橋を見る。


「あの橋は、今日は渡らない方がいい気がします」


ミルカはすぐ地図を見る。


「迂回できる?」


ロアンが指で道を追う。


「できる。少し遠いけど」


「遠くても迂回」


ガルドは橋を見る。


「何かいるのか」


エナは首をかしげる。


「分かりません。でも、渡らない方がいい気がします」


「じゃあ渡らない」


ロアンは即答した。


数刻後、彼らが迂回した橋には、王国兵の検問が入った。


それを知ったのは、後の宿場でのことだった。


エナは少し困った顔をした。


「やっぱり、渡らなくてよかったんですね」


ミルカは頷く。


「豆より当たる」


ロアンが言う。


「橋でも当たる」


エナは真面目に考える。


「橋と森は、豆より当たるかもしれません」


ガルドが首をかしげた。


「豆は何なんだ」


ロアンは少し笑った。


「長い話です」


道に出て、追われるかもしれない危険があって、それでも四人の会話は戻ってきた。


灰の一団は、北へ向かった。



※第28話「次の土地へ行け」は全十回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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