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勇者の条件  作者: KEI
第28話 次の土地へ行け

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(四)北の賢者宛て

◆ 北の賢者宛て


密書の中に、一通だけ別の封書があった。


厚い紙。


古い形式の封蝋。


宛名は、北方の魔術顧問。


セリアンはそれをミルカに渡した。


「これは、できれば途中で届けてください」


ミルカは封書を受け取り、眉を寄せる。


「北方の魔術顧問?」


「今はそう呼ばれています。かつては、北の賢者と呼ばれていました」


ミルカの手が止まった。


ロアンが気づく。


「ミルカ?」


ミルカは封書の宛名を見る。


「北の、賢者……」


セリアンが静かに問う。


「心当たりが?」


ミルカは少し言葉に詰まった。


「私の師匠は、北から来た旅の魔術師でした。名前は、ちゃんと聞いていません。でも、基礎ばかり教える人で」


「王都魔法学院の報告を読みました」


セリアンは言った。


「あなたの魔法は、北方系統の古い制御理論に近いそうです」


ミルカは小さく息を吸った。


「ただの基礎じゃ、なかったんですね」


「それは、本人に聞くべきです」


ミルカは封書を見つめた。


王都の魔法学院で感じた違和感。


自分の小さな魔法が、的を貫いたこと。


火を大きくするのではなく、必要な一点を抜くこと。


水を広げるのではなく、押し通すこと。


風を騒がせるのではなく、狙った場所だけを動かすこと。


土を盛るのではなく、必要な角度へ跳ね上げること。


それは、ただの田舎仕込みではなかったのかもしれない。


師匠は、何を教えていたのか。


なぜ名乗らなかったのか。


なぜ三年も村にいたのか。


ミルカは封書を胸元にしまった。


「届けます」


その声は、さっきより少し硬かった。


ロアンはそれを聞いて、何も言わなかった。


聞きたいことがあるなら、会いに行くしかない。


それは、ロアンにも分かることだった。



※第28話「次の土地へ行け」は全十回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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