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勇者の条件  作者: KEI
第27話 出られない国

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(五)出してもらえない

◆ 出してもらえない


最初の数日は、厚遇された。


宿舎が与えられた。


食事が出た。


装備が修理された。


ロアンの剣も手入れされた。


ガルドの剣には新しい砥石が用意された。


エナには薬草と包帯が支給された。


ミルカには魔術院と魔法学院の見学許可が出た。


ロアンには各地の地図と報告書が渡された。


悪いことばかりではなかった。


むしろ、旅の途中ならありがたいことばかりだった。


「ご飯が出る」


ロアンが食堂で言った。


ミルカが答える。


「出る」


「豆もある」


「ある」


「宿代が減らない」


「減らない」


ガルドがうなずく。


「砥石もある」


エナも言う。


「薬草もあります」


ロアンは少しだけ笑った。


「いいことばっかりに聞こえる」


ミルカは食器を置いた。


「いいことばかりなら、顔が軽くなる」


「今、俺の顔は?」


「軽くなりかけている」


「戻します」


「よし」


けれど、違和感はすぐに現れた。


ロアンたちが次の土地へ行こうとすると、許可が下りない。


理由は毎回違った。


「次任務の調整中」


「転送ゲート調査への協力が必要」


「王都周辺の安全確認が先」


「他国との交渉が未了」


「身分保証書の発行待ち」


「王命による待機」


最初は、そんなものかと思った。


王国の書類は時間がかかるのだろう。


大きな国だから手続きも多いのだろう。


でも、三日が過ぎ、五日が過ぎ、十日近くになっても、同じだった。


ロアンは地図を広げたまま言った。


「これ、出られないってこと?」


ミルカは静かに答える。


「出られないというより、出してもらえない」


エナが不安そうに言う。


「でも、別の土地でも困っている人はいますよね」


ガルドは剣の手入れをしながら言った。


「稽古だけでは腕は鈍らないが、外は見えないな」


ロアンは地図を見る。


王都の外。


国境。


古い街道。


廃砦。


魔王軍の転送ゲート候補地。


どこも、線でつながっている。


でも、自分たちは王都の中にいる。


「許可がないと、国境を越えられない?」


ミルカは答えた。


「今の私たちは、王国契約の傭兵部隊扱い。勝手に出れば契約違反。下手をすれば脱走扱い」


ロアンは頭を抱えた。


「ちゃんとした名前をもらったら、ちゃんと縛られた」


ガルドが長い部隊名を書いた紙を見た。


「名前が長いほど、縄も長いのか」


ミルカが言う。


「縄が長いと、遠くまで行けそうに見える。でも結ばれているなら同じ」


エナはその言葉に、少し目を伏せた。


王都の門は開いている。


道もある。


食料もある。


装備もある。


なのに、出られない。


それは魔物に囲まれるのとは違う怖さだった。



※第27話「出られない国」は全九回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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