(四)契約部隊
◆ 契約部隊
会議の後、高官たちは灰の一団について話した。
軍務卿が言う。
「正規兵に組み込めば、辺境作戦の成功率が上がる」
諜報局長が答える。
「密偵ではない。だが、現地情報を拾う能力が高い。しかも戻ってくる」
魔術院長は、ミルカの報告書を見ていた。
「ミルカという娘は、魔術院の形式では測れません。出力ではなく制御が異常です」
別の軍人が言う。
「ガルドという剣士は、前線に置けば突破力になる」
神殿系の役人も口を挟む。
「エナという見習い神官も見逃せません。癒やしの力がある。危険察知のようなものもあるようです」
財務官が言った。
「報酬を支払えば動くのであれば、王国契約にした方がよい」
誰かが低く言った。
「他国に出すべきではない」
別の者がうなずく。
「少なくとも、転送ゲート問題が片づくまでは」
その話を、ロアンたちは聞いていない。
けれど、決まったことは彼らの前に出された。
翌日、灰の一団は再び呼ばれた。
軍務卿が穏やかな声で言う。
「貴殿らの働きは、王国にとって大きい。よって、正式な契約部隊として遇したい」
ロアンは戸惑った。
「契約部隊、ですか」
「そうだ。王国の支援を受け、王国の任務にあたる。報酬、宿舎、補給、装備の補修、通行証、王国内での活動許可を与える」
ガルドが小声で言う。
「砥石は?」
ミルカが小声で返す。
「たぶん含まれる」
「それは助かる」
エナも少し安心した顔をした。
薬草が補充される。
休む場所がある。
怪我人を見ても、自分だけを削らずに済む。
ロアンも一瞬、悪くない話だと思った。
旅を続けるには金がいる。
補給がいる。
身分保証がいる。
王国の支援があれば、動きやすくなる。
軍務卿は続けた。
「部隊名は、アークガルム王国第八傭兵団第三遊撃部隊。通称は、これまで通り灰の一団でよい」
ロアンはその長い名前に、少し目を瞬かせた。
「アークガルム王国、第八、ええと」
ミルカが小声で言う。
「あとで書く」
「助かる」
ガルドは首をかしげる。
「灰の一団でいいなら、最初からそれでいいのでは」
ミルカが言う。
「書類には長い名前が必要なの」
「書類は大変だな」
「本当に」
ミルカは軍務卿を見る。
「契約内容を確認しても?」
軍務卿は少し意外そうな顔をしたが、すぐに笑った。
「もちろんだ」
ミルカは提示された書類を見る。
報酬。
宿舎。
補給。
装備補修。
王国内通行。
任務時の負傷補償。
悪くない。
むしろ、破格に近い。
けれど、ミルカの目が一点で止まった。
「王国外への移動は?」
軍務官が答える。
「任務に応じて許可する」
ロアンはその言葉の意味をすぐには飲み込めなかった。
エナも分かっていない。
ガルドは書類を見ていない。
だが、ミルカは分かった。
自由移動ではない。
許可制だ。
「分かりました」
ミルカはそう言ったが、表情は明るくなかった。
※第27話「出られない国」は全九回です。
続きます。
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