(三)王都への呼び出し
◆ 王都への呼び出し
灰の一団は、王都へ呼ばれた。
名目は、褒賞と報告。
西側拠点攻略への協力に対する報酬。
現地で見たものの確認。
押収資料に関する証言。
それらを行うために、四人はアークガルム王国の王都へ向かった。
王都は大きかった。
高い城壁。
まっすぐな大通り。
石造りの建物。
水路。
倉庫。
兵舎。
神殿。
市場。
ロアンは門をくぐった時から、少し落ち着かなかった。
「大きいな」
ミルカは地図を見ながら答えた。
「大きい」
エナは人の多さに目を丸くしている。
「人が、たくさんいます」
ガルドは城壁を見上げた。
「登りにくそうだな」
ミルカがすぐに言う。
「登らないで」
「見ただけだ」
「ガルドの見ただけは信用しすぎない」
王城の一角に通された時、ロアンは自分の灰色の外套を見下ろした。
磨かれた床。
白い壁。
金属の燭台。
重そうな扉。
そこに、旅で泥と雨を受けた灰色の外套は、やはり少し場違いだった。
ロアンが小声で言う。
「外套、洗ってくればよかったかな」
ミルカが答える。
「洗っても灰色だから大丈夫」
「そういう問題かな」
「そういう問題にしておいて」
エナは緊張で外套の端を握っている。
ガルドは天井を見た。
「広いな。斬り合うには柱が邪魔だ」
ミルカが小声で言う。
「斬り合わないで」
「分かってる」
「本当に?」
「たぶん」
ロアンは小さく笑いそうになった。
そのおかげで、少しだけ緊張がほどけた。
会議室には、多くの人がいた。
軍務卿。
魔術院長。
諜報局長。
財務官。
貴族。
軍人。
文官。
神殿系の役人。
全員が、灰色の外套の四人を見る。
ロアンは、以前より少しだけ前に出た。
「灰の一団、ロアンです」
ミルカ、エナ、ガルドもそれぞれ名乗る。
それから報告が始まった。
どうやって拠点周辺の巡回を読んだのか。
なぜ裏道を使えたのか。
現地住民から何を聞いたのか。
魔物の配置をどう判断したのか。
負傷者をどこから逃がしたのか。
拠点内で見た魔法陣はどのようなものだったか。
ロアンは答えた。
「村の人が昔使っていた薪道がありました」
ミルカが補足する。
「ただし、荷馬車は通れません。二人ずつなら通れる幅です。盾を並べるのにも向きません」
エナが言う。
「東側の通路は、入る前から嫌な感じがしました。実際に罠がありました」
高官の一人が眉をひそめた。
「嫌な感じ?」
エナは困ったように頷く。
「はい。言葉にするのは難しいです」
ガルドが言う。
「見張りは強くなかった。ただ、交代がずれていた」
軍人が聞き返す。
「交代がずれていた?」
「はい。外の見張りと内側の見張りで、歩く間隔が違いました。だから、見ていない場所ができていました」
軍人たちは顔を見合わせた。
それぞれの答えは、格式ある軍学の言葉ではなかった。
けれど、実戦で使える。
地図には出ない道。
住民しか知らない薪道。
嫌な感じがする通路。
見張りの歩幅。
そういう小さなものを拾い、使える形にする。
高官たちは気づき始めていた。
灰の一団は、ただの討伐戦力ではない。
危険な場所へ行き、現地の小さな情報を拾い、戻ってくる。
それは、国にとって価値のあるものだった。
※第27話「出られない国」は全九回です。
続きます。
作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。
※ネタバレ範囲にご注意ください。
https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/




