(四)小さな手助け
◆ 小さな手助け
その日の夕方、ロアンは宿場の裏で老婆を見つけた。
薪を抱えている。
量が多い。
足元も危なっかしい。
ロアンは自然に声をかけた。
「持ちます」
老婆は驚いた。
「いいのかい」
「はい。どこまで?」
「裏の小屋まで」
ロアンは薪を運んだ。
報酬はない。
老婆は礼に、小さな焼き菓子を一つくれた。
ロアンは少し迷ってから受け取った。
「ありがとうございます」
別の場所で、エナは転んだ子どもの膝を洗っていた。
泥を落とし、布を巻く。
癒やしは使わない。
子どもは泣き止み、礼を言って走っていった。
ガルドは、宿場の外れで壊れかけた柵を直していた。
通りかかった荷運びに頼まれたらしい。
板を押さえ、縄で結び直す。
「これでしばらくは持つ」
荷運びが礼を言うと、ガルドは頷くだけだった。
ミルカは宿屋の帳面を見ていた。
店主が首をひねっていた計算違いを見つけ、指で示す。
「ここ、足しすぎです」
店主は目を丸くした。
「本当だ。助かった」
ミルカは小さく頷いた。
それらは依頼ではなかった。
灰の一団として受けた仕事でもない。
ただ、それぞれが自分の責任でできる小さな手助けだった。
夜、部屋に戻ると、ミルカはロアンの焼き菓子を見た。
「報酬?」
ロアンは少し身構えた。
「お礼です」
「薪運び?」
「はい」
ミルカは何も言わなかった。
エナが恐る恐る聞く。
「子どもの膝を洗いました」
「知ってる」
「報酬はありません」
「いい」
ガルドも言う。
「柵を直した」
「見た」
「報酬はない」
「いい」
ロアンは驚いた。
「いいの?」
ミルカは帳簿を開きながら答えた。
「そういうのまで止めるつもりはない」
エナの顔が少し明るくなる。
「本当ですか」
「それで旅が続けられなくならない範囲なら」
ガルドが首をかしげる。
「範囲はどう決める?」
ミルカは帳簿を閉じた。
「だから、方針が必要」
※第25話「報酬はもらう」は全六回です。
続きます。
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