(八)名前負け
◆ 名前負け
宿場から次の町へ向かう街道で、四人は灰色の外套を着て歩いていた。
雨は上がっている。
だが、道はまだ少しぬかるんでいる。
荷は重くなった。
銅貨は多くない。
保存食も、すぐに余裕があるとは言えなくなるだろう。
それでも、四人の歩調は少し揃ってきていた。
ロアンはぽつりと言った。
「灰の一団、か」
ミルカが答える。
「呼ばれてしまったものは仕方ない」
エナが聞く。
「嫌ですか?」
ロアンは少し考えた。
「嫌ではないけど、名前負けしそう」
ガルドが言う。
「名前に合わせればいいんじゃないか」
ミルカがすぐに言う。
「雑」
ロアンは笑った。
「でも、悪くないかも」
「悪くないけど、名前に合わせて無茶をするのは禁止」
「はい」
「報酬の話から逃げるのも禁止」
「はい」
エナが外套の裾を見た。
「灰色って、やっぱり落ち着きますね」
ガルドが頷く。
「汚れも目立たない」
ミルカが言う。
「それが始まり」
ロアンは前を見た。
まだ勇者ではない。
正式な傭兵団でもない。
神殿に認められた一行でもない。
ただ、灰色の外套を着た四人組として、街道で少しずつ知られ始めている。
それだけだった。
けれど、その名は彼らより少し先を歩き始めていた。
その名は、彼らが名乗ったものではなかった。
灰色の外套を着ていたから。
泥にまみれても目立たず、雨を受け、破れても直しやすいから。
ただそれだけの理由で、四人は灰色の外套を使っていた。
だが、人は目印を欲しがる。
荷馬車を守った四人。
橋の下の魔物を追い払った四人。
森から子どもを連れ戻した四人。
鉱山道から作業員を逃がした四人。
誰かが灰色外套と呼び、誰かが灰の連中と呼び、誰かが灰の四人と呼んだ。
やがて、それは少し整えられた。
灰の一団。
正式な名ではない。
勇者一行でもない。
神殿の認定もない。
国の騎士団でもない。
だが、街道の人々はそう呼び始めた。
灰色の外套を着た、危険な依頼も受ける若い一団。
ロアン、ミルカ、エナ、ガルド。
彼らはまだ知らない。
その曖昧な呼び名が、後に多くの報告書で揺れ続けることを。
そして、その揺れが、魔王の目から彼らを少しだけ遠ざけることを。
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