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勇者の条件  作者: KEI
第25話 灰の一団

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(六)名前があると依頼もしやすい

◆ 灰の一団


噂は、ロアンたちより少し速く街道を進んだ。


宿場の食堂。


商人の荷馬車。


橋のたもと。


村の井戸端。


地方役人の控え所。


そういう場所で、人は話をする。


「灰色の外套を着た四人組がいる」


「荷馬車を守ったらしい」


「橋の下の魔物を追い払ったって聞いた」


「森から子どもを連れ戻したとも」


「剣士がやたら速いらしい」


「魔法使いは派手じゃないが、橋を壊さず魔物だけ出したそうだ」


「神官の娘もいるとか」


「若い男がまとめ役らしい」


「いや、若い男は荷物係じゃないのか」


「人数は三人じゃなかったか?」


「五人って聞いたぞ」


話は少しずつ変わった。


灰色外套。


灰色の旅人。


灰の連中。


灰の四人。


灰の旅人たち。


呼び名も揺れた。


誰かが言った。


「灰の一団って呼べばいいんじゃないか。全員、灰色の外套なんだろ」


別の者が笑った。


「勇者一行みたいな名前だな」


「勇者じゃないだろ。傭兵まがいだ」


「でも危ない仕事は受ける」


「じゃあ、灰の一団でいい」


名前は、そうやって勝手に整えられた。


その頃、ロアンたちは宿場で食事をしていた。


豆の煮込み。


硬いパン。


干し肉を少し。


ミルカは銅貨を数えている。


エナは豆の煮込みを見て、少し嬉しそうだ。


ガルドは硬いパンを平然と噛んでいる。


ロアンはそれを見て言った。


「硬くないですか?」


「硬いな」


「平然としてますね」


「噛めば減る」


ミルカが小声で言う。


「ガルドの食事説明、たまに剣術みたい」


エナが頷く。


「力強いです」


そこへ店主が料理を置きながら聞いた。


「灰の一団ってのは、あんたらかい?」


ロアンは固まった。


「誰ですか、それ」


店主は笑った。


「灰色の外套の四人組。荷馬車守って、橋の魔物追い出して、森の子どもを助けたって」


ミルカが小さく言う。


「たぶん、私たち」


エナが自分の外套を見る。


「灰色ですしね」


ガルドも外套を見る。


「一団なのか」


ロアンは困った顔をする。


「一団って言われると、なんかちゃんとしてそう」


ミルカは銅貨を見ながら言う。


「実際は、宿代の計算で揉めてるけど」


店主は笑った。


「名前があると、依頼もしやすいんだよ」


ロアンは首をかしげる。


「名乗った覚えはないんですけど」


「名乗らなくても、周りが呼ぶさ」


店主はそう言って、別の客の席へ行った。


ロアンはしばらく黙っていた。


「灰の一団、か」


エナは少し嬉しそうに言う。


「一団って、仲間みたいですね」


ガルドが言う。


「仲間ではあるだろ」


エナは笑った。


「そうですね」


ロアンはまだ困っている。


「でも、勇者一行みたいに聞こえない?」


ミルカが即答した。


「聞こえない」


ガルドも言う。


「勇者は灰色ではないだろ」


エナが言う。


「勇者様は、もっと白とか金色のイメージです」


ロアンは少し安心した。


「ならいいか」


ミルカは銅貨を袋へ戻した。


「ただし、名前が付いたなら、依頼も増える。報酬の決め方を考えないとまずい」


ロアンは豆を口に運びながら言った。


「そこはまた今度で」


ミルカがじっと見る。


「今度じゃなくて、近いうち」


「そんなに?」


「そんなに」


エナが小さく言う。


「でも、困っている人がいたら」


ミルカはエナを見る。


「助ける。けど、旅が続かなくなる助け方はだめ」


ガルドが頷く。


「食料がなくなると歩けないからな」


ロアンは豆を見た。


確かに、豆がなければ歩けない。


少なくとも、今はそう思えた。


「近いうちに話そう」


ミルカは頷いた。


「絶対」


「絶対なんだ」


「絶対」


四人は食事を続けた。


まだ、自分たちの呼び名に慣れてはいない。


けれど、呼ばれてしまったものは、もう街道の上を歩き始めていた。



※第24話「自分の腕を試したい」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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