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勇者の条件  作者: KEI
第25話 灰の一団

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(二)灰色の外套

◆ 灰色の外套


昼を過ぎた頃、雨が降り始めた。


細い雨だった。


空は薄く曇り、街道の土が少しずつ黒くなる。


ミルカは空を見上げて言った。


「外套」


四人はそれぞれ荷から灰色の外套を出した。


最初の一着は、国境洞窟を開いたあと、村から受け取ったものだった。


作業用の外套。


丈夫で、安くて、泥に強い。


旅の途中でそれが便利だと分かり、ミルカが似たような灰色の布を買い足した。


同じ仕立てではない。


よく見ると布も厚みも違う。


けれど、遠目には全員が灰色の外套を羽織った四人組に見えた。


ロアンは外套の前を留めながら言った。


「全員同じ外套だと、なんか揃ってる感じがするな」


ミルカが答える。


「揃えた方が探しやすいから」


「格好いいからじゃなくて?」


「泥が目立たないから」


エナが外套の裾を見た。


「灰色って、汚れても灰色ですね」


ガルドが頷く。


「便利だな」


「便利さで決めたのに、だんだん目印になりそう」


ミルカはそう言いながら、ロアンの外套の留め具を見た。


「そこ、斜め」


ロアンは慌てて直す。


「外套にも戻りがある?」


「あります」


「ありますか」


エナが自分の外套を見た。


「私は大丈夫ですか?」


ミルカは少し直した。


「ここだけ」


「ありがとうございます」


ガルドは自分の外套を見下ろした。


「俺は?」


ミルカは一度見て、すぐに言った。


「雑」


ガルドは首をかしげる。


「着られているぞ」


「着られていればいい、という考えがもう雑」


ロアンは小声で言う。


「分かる」


「ロアンも直して」


「はい」


雨は強くならなかった。


灰色の外套は、水を弾くというほどではないが、細い雨なら十分に防いだ。


泥が跳ねても目立たない。


破れたら縫える。


夜には黒すぎず白すぎず、仲間の位置も分かる。


理由は全部、実用だった。


象徴にするつもりなど、誰にもなかった。


ただ、四人は灰色の外套を羽織り、街道を歩いた。


それだけで、人の目には少し残るようになった。



※第24話「自分の腕を試したい」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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